星

心がささくれ立ったときは

夜空を見上げてごらん

君の心が暗く沈んでいるほど

星は美しく輝くだろう


誰かが言っていた

貧しい国や不幸な国の

星空はいつも美しいと

もし君が恵まれすぎているなら

星の美しさを楽しむことはむずかしい


昔の人々にとって

星を見ることは人生の一部だった

星の動きから物語がうまれ

星の位置から運命をおしはかり

哲学を発展させた


長い年月が過ぎて

いま星を見ているのは

一部の天文学者だけ

ぼくらはあまりにも忙しくて

星を見る余裕をなくしたのかもしれない

空

空はなぜ

青いのだろう

それはもともと

青いから


人はなぜ

生きるのだろう

それはもともと

生きているから


あたりまえの人生の

あたりまえの一日が

また過ぎていく

皆あたりまえに生きて

あたりまえに死んでいく

そう思い歩きながら

見上げた空は

あたりまえに青く

まぶしかった

歴史

かつてお国のために死んでいった人々がいた

いま会社のために死んでいく人々がいる


かつて警察の拷問で死んでいった人々がいた

いま学校のいじめを苦に死んでいく人々がいる


かつて化学物質による公害で病気になった人々がいた

いま原発の出す放射線で病気になる人々がいる


かつてハンセン氏病にかかっているというだけで差別された人々がいた

いま生活保護を受けているというだけで差別される人々がいる


かつて生まれながらに孤独だった人々がいた

いま年老いてから孤独になる人々がいる


人が人を犠牲にするやり方は

年月を経てもそれほど変わらないらしい

そんな社会に生きる僕らは

本当に何か学んでいるのだろうか

雪

雪は美しいとあなたは言った

ぼくも少しだけ

そう思いました


雪国生まれのぼくには

雪などうっとうしいだけでしたが

あなたが言うと

なんとなくだけどきれいに見えたんです


それにぼくは

雪に感謝しました

そのときのあなたは

確かにぼくだけの

あなただったから


そしていつしか冬が過ぎ去って

雪が消えていくこの季節

ぼくはあなたのことを

思い出すのです

惑星と太陽

あなたは太陽

ぼくは惑星


ぼくはあなたに惹かれながら

長い長い年月をかけて

巡りつづける

ときおりあなたに近づいて

身を焼くほどの夏を知り

ときおりあなたから遠ざかり

炎すら凍るほどの冬がおとずれる


あなたは太陽

ぼくは惑星


寸分くるわず重なるほどに

おなじ光を持ちながら

けっして出会うことはない

冷たい闇にはばまれて

ぼくは今日も巡りつづける

でも広い広い宇宙では

手をのばせば届く距離