植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

有機農法は楽じゃない (農業の衰微その1) 

2020年06月03日 | 植物
 相変わらずボカシ肥料に励んでおります。今年に入ってから6回目を仕込みました。コーヒー滓、油粕、たい肥、米ぬかに発酵促進剤を投入、よく混ぜておしまい。すでに出来上がっている肥料の一部は、ブドウ他果樹の追肥にいたしました。

 有機材料の内、油粕はかなりの値段いたします(10キロ2000円前後)が、それ以外、米ぬかは袋代50円のみ、コーヒー滓はタダ、たい肥はせいぜい10キロ500円程度なので安上がりなのです。ワタシの計算では、自家製ボカシ肥料、10キロ当たりの材料費はおよそ500円ほどであります。
 
 有機肥料を買うと、最低でも10キロで2千円はいたします。骨粉などを配合して発酵させたものは、その倍以上するものもあります。つまり、有機肥料の頂点に立つボカシ肥料は、材料費の割に価格が高いのであります。

 ボカシ肥料は、ほぼ100%が有機材で出来ており、通常の有機肥料と違って発酵させてある分だけ即効性に優れ吸収効率もいいのです。材料のバランスに気をつけていくらかの化成肥料や骨粉・苦土石灰などで調整すれば、ほとんどどんな植物にも使えるスーパー肥料です。おそらく、農業生産性・品質向上に資する最上の材料であろうと思います。

 好気性でせっせと作るボカシ肥料は、毎日かき混ぜて10日~2週間で出来上がります。数十坪しかない自分の菜園や果樹園には十分すぎるほど作れるのです。それで、懇意にしている花屋さんに持ち込んで売ろう、と目論んでおりました。

 だがしかし、衝撃的な事実を知ることになりました。「有機肥料・たい肥」は勝手に売れないのです。「肥料取締法」という法律があり、これに反して、ワタシが販売すると手が後ろに回るのです。(笑)

 肥料取締法はS25年に制定されており大筋では現在まで変わっていません。そもそも、それまでは、農家さんが汲み取りの肥し(人糞)や家畜の糞を主体に使っていて、不衛生であり、寄生虫の発生も多かったのです。もっとさかのぼると江戸時代、江戸などの市中で出された糞尿を運搬する「おわい舟」が江戸川や荒川・神田川などの河川を遡上して農村部に運搬していたのですね。

 虫が湧いたり、悪臭が出て近隣の迷惑にもなりました。これを問題として、農業に使う肥料の材料や供給を限定し衛生的・安定的な肥料に置き換えていったのです。肥料の成分見た目では判別できずその効能ですら不明瞭なものなので、肥料効果のないもの、粗悪品も出回ったと聞きます。

 農家さんで大量に排出される家畜の糞、野菜など農業屑・雑草・落ち葉などの有機材をたい肥にして自分で使用するまでは認容されますが、これを販売したり他所への流用をするのは禁じられました。自家製肥料の流通が不可能になったわけです。

 すると、肥料の供給元がきちんとした生産管理が出来る企業に限定され、当然に価格も高くなりました。廃棄物や家畜の糞などで自由に作れないのですから、肥料が安く入ってこないのです。農業は年々高コスト化になります。更に、化学肥料の混和を禁じたために、化学肥料と有機肥料を別々に買い、別々に施肥することにもなっております。

 結果として、長期的には「割に合わない」として農業全体が衰微する一因となっています。水田に投入する有機肥料が30年間で1/4までに減ったという報告もあります。有機栽培による需要は高くても高コストになるので、少数の富裕層しか買えないほど価格が高いものになります。
 兼業農家を含む農業人口は190万人と言われ、過去30年で1/3までに減っております。その平均年齢は67歳!

 農作物は、口に入るものでありますから、当然食の安全性は確保されなければなりません。しかし、杓子定規の時代遅れの法律で農家は、どんどん衰退・廃業への道を辿っております。そして、中国などからの得体のしれない食材が入ってきます。肉まんに段ボールを混ぜる国です。餃子に殺虫剤混ぜたり、拾ったペットボトルにそこらの水を入れてミネラルウォーターで販売する国です。河川は農薬やら工場廃水でとんでもない汚染が進んでいると聞きます。

 カロリーベースの自給率では37%ほどにまで下がりました。カロリーベースでは低カロリーの野菜が占めるウエートが少なくなるので、あくまで目安で有ります。直接的には国内生産が少ない小麦や牛肉の輸入が大半を占めるので、農業生産性や農家の制度的な問題とは次元が違うという専門家がいます。一方で主食のコメは100%近い自給率なので差し引くとやはり農業が衰退しているのです。

 肥料取締法は、今年改正されるようです。その骨子は「有機・化成・化学肥料の混合を緩和」「原料管理や表示の強化」「悪質な業者の罰則制定」などのようであります。成分の弾力化柔軟化を除けば、大した効果はありません。むしろ「肥料製造・流通」自由化に取り組むべきなのです。廃棄されている利用可能な有機物を肥料に転用できるようにし、農家で作れる肥料は、同じ地域だけでも相互に生産・流通・融通できるようにすればいいのです。

 食の安全が聞いて呆れる。農薬だらけの中国野菜を食べる方がよほど危険です。
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 肩こりとコロナ | トップ | ワタシを野球に連れてって »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

植物」カテゴリの最新記事