植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

微妙な石たち 水晶凍が欲しい

2023年01月21日 | 篆刻
水晶は、宝石類の中では最も安い仲間に入るものです。場末の盛り場などで、狭いブースの中の占いで水晶玉をのぞき込む、あれだけの大きさの品がそんなに高価なわけはありません。霊感商法の常連に扱われる代物で、実はガラス玉が多く、本物でもせいぜい数千円で売られているのを、何十万や何百万円で売りつけるのです。例の統一教会で売ってたかどうかは存じませんが。

さて篆刻や石印材の世界で、水晶は基本的には含まれません。印章店(はんこ屋さん)では水晶印を作ってくれますが、これは原則として、パソコンなどで取り込んだ印影を高速回転の専門のドリルが自動的機械彫りしているのです。

水晶は大変硬い(モース硬度7)もので、普通の印刀は寄せ付けません。ワタシ達が使うヨウロウ石の硬度が大体1.5から2度くらい、硬いことで知られる鶏血が5~7位でしょうか(主成分の石英が7、これに泥が加わっているのです)。それらの中間の硬い石もたくさんあるのです。

で、同じ水晶でも、「水晶凍」と言うレアな石印材となるとこれが全くポジションが変わります。それは「かたさ」(硬さ)ではなく「たかさ」(価格の高さ)であります。印材の中でその研究をされている人たちあるいは愛玩しコレクションをする人たちにとっては、水晶凍は垂涎の的になります。その美品・最高級品になると、石の向こうが透けるほどの透明感があります。石印材を蒐集して専門的な図鑑を著しているものを見ると、その多くの記述や写真が「透明度が高い凍石」の種類に割かれています。

例えば、幻の石として名高い「燈光凍」は、青田石の最高位にあって、やや赤みを帯びて透明度が高く、光を当てると燦然と燈火が輝いて見えるといいます。篆刻の祖と言われた「文彭」さんが、初めて持ち込まれた石を彫ったのがこれだと言われています。

ワタシも御他聞にもれず、水晶凍が欲しくて、ヤフオクで探しておりますが、ほとんど出品されたものにお目にかかりません。石印材の王様「田黄石」や鶏血石などは、本物ニセモノ取り混ぜてゴロゴロ見つかるのですが、水晶凍
だけは検索しても引っかからないのです。無いものねだり、簡単に入手出来ないので猶更欲しくなるのです。

水晶凍として写真に出ているのはこんな感じです。
特徴は半透明で、白や黄土色を基調として雑味が加わらない単色であります。多くが控えめでぼんやりとした紐彫があるのも共通点です。決め手はやはり透明度が高くて、向こうに光が透けるくらいのようです。目下ワタシの手持ち印で、それに近いと思われる品がこれであります。

いずれも、やや濁りや透過度の低さが気になって、水晶凍と断じるに足るものかの確証はありません。一番右端がそれに相応しいと思ってはおりますが。

そして、「ひょっとすると水晶凍?」と思った石が含まれていたまとめて5個の出品を見つけて落札いたしました。これは1万円で、一つ当たり2千円なので、ワタシの落札許容範囲内の投資でありました。
うーむ、微妙な石達ですね。左上の仙人らしき人物彫りの石は、高級石とは言えない透明度の低い石で、表裏の石質や色合いが対照的で、裏側は白色と茶・朱が混じるものでした。寿山系の石でしょうが、どちらかと言えば駄石に近いものであります。さらに残念なことに、途中まで丁寧に彫刻していた様子ですが、裏側は途中で放り出したが如く、粗く削り跡が残っています。本来ならば、底面を含めて細かなペーパーで滑らかに仕上げ、磨きをかけるべきものでしょう。完成したら1万円位の工芸品として売れるかもしれないのですが、気に入らなくてやめたか、彫り師が体調を悪くしたの(笑)かもしれません。

以前から印面を彫るだけに飽き足らず、紐彫や薄意をやってみたい、と思っていました。その意味では手を入れるに十分な大きさがあり、万一彫を崩しても惜しげが無いので、参考書を見ながら、少しずつ刀を当てていこうと思います。

その他の石も一応箱に入っていたり、紐が彫られたりしていますが、流通品レベルと見ました。あちこちにアタリとかスレという白い傷がついているのが安物で雑に扱われていた証拠です。恐らく一つ500円から千円といったところか。
そして、一番注目して期待した石がコレであります。

今までの経験から、希少性の高い銘品は、包みを解いてパッと見た瞬間、背筋がゾクッとするような凄み・本物感がありました。
この灰色に近い凍石は、そんな感触はありませんでした。きちんと磨かれて一定の光沢があり均質で混じりけがないものの、イマイチ透明度が低いのです。せいぜい微透明と半透明の中間位。紐自体も一級の細工とは見えません。なんとも微妙な石でありました。後ほど少し洗って磨いてみようと思いますが、水晶凍とは違って、出所がはっきりしない凍石、でそこそこの佳石としか言えません。

全部で1万円の落札額に見合った価値かどうかもよくわかりません。しかし、まぁ良しとしましょう。最初からダメでもともと、ひょっとすると、という位にしか考えてなかったのです。

そのうち、これこそ水晶凍というものに出くわすでしょう。


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