植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

湯平温泉は日本の縮図です

2023年05月15日 | 旅行
自分のふるさとである大分、そしてワタシの人生の出発点が、このひなびた温泉場でありました。

小学校の教員をやっていた両親と移り住んだのが、湯平温泉の石畳が一番下まで降りて左に小さな渡川橋があります。そこからまた少し下った突き当りにあったせんべい屋さんの二階がワタシたち一家4人の住まいでありました。お向かいに「橋本温泉」という共同浴場があり、湯治客と地元の区民共有で使っていました。ワタシの住む2階の部屋からお向かいの湯気や風呂に入っている人の声や物音が聞こえてきました。ワタシの母が幼い私を負ぶって湯平の石畳を歩いていると2階の窓際にいた泊り客から「あらー可愛い赤ちゃん」という声が聞こえた母は、用もないのにもと来た道をもう一度引き返した、と笑って話してくれました。

そんな自分のふるさとで、断片的ながらもたくさんの思い出が残っている湯平温泉がとんでもないことになっていたのでした。河川はいたるところで改修工事中、急流が流れているはずの花合野川は、工事のためほとんどが砂利道と化しておりました。山に囲まれ谷合いに流れる川に沿って60以上の温泉宿が立ち並んでいたのに、今や旅館を続けているのが17軒だそうです。お土産物屋さんは3軒とも閉まっていて人影もなし、石畳を挟んで旅館があったはずのたくさんの土地が更地となり雑草が生い茂っていたのです。


この川魚の料理店だけは残っていました。ウナギのお茶漬けがとてもとても美味しいのです。


寂れた理由は沢山あるのです。列挙しますが直接的に響いたのが「コロナ」でありました。3年間極端に客足が遠のいたのです。また度重なる河川氾濫・土砂災害と山崩れで、営業がままならなくなり温泉場として安心して行けなくなったのです。

しかし、それは、もう少し分析すると日本が抱える問題そのものによることがわかってきます。

1.地球温暖化を主因とした異常気象→線状降水帯の発生で、大変な降雨が短時間に現れ、鍋底のようなこの温泉場の中心を激流濁流が走り落ちるようになった。また、極端な乾燥・雨量不測の時期が続き豊富だった温泉の湯量が減少してきた。

2.高齢化が進み、農林業従事者の跡取りがいなくなったために、植林し山を守るべき林業が廃れた結果、山崩れ・がけ崩れが随所に起こるようになり家を流し川をせき止めることにつながった。

3.少子高齢化によって温泉宿や店舗の跡を継ぐ若い人がいないので店をたたむ結果となった。川の下流にあった母が務めていた小学校は2016年に廃校になりました。学校もない僻地に好んで住もうという若い人がいなくなる当たり前でしょう

4.長引く経済低迷と個人所得の減少、人口減・・・これらがこのひなびた温泉の運営にももろに影響が出ているのです。お金も余裕もないから旅行に行こうとする人が減ります。観光客が減りお金を落とさなければ、当然どこのお店もやっていけないのです。

昼過ぎに温泉場に着き、翌日10時に帰路に就くまで、旅館内の従業員と泊り客4名、工事関係以外の人を見かけたのは、閉店仕舞い中の金子商店のご夫婦、新聞配達人、泊り客らしきおじさんお一人だけで、子供に至っては一人も見えませんでした。ほとんど「ゴーストタウン」状態でありました。

共同浴場は5か所ありますが源泉の熱湯が出るお湯汲み場もこの有様でした。
60年前はここに酸味が混じった熱湯が滾々と湧き出て、毎朝ワタシら子供たちがヤカンをもってお湯を汲んだものです。
共同浴場はこのそばに「金の湯」があり石畳を下ると、「銀の湯、中の湯、砂湯、橋本温泉」と5か所でありましたが、2019年より銀の湯以外はすべて休業中のようです。この共同温泉を「はしご」するのが楽しみの一つであったのです。唯一「銀の湯」だけが、時間限定・区民限定で利用できているそうです。

聞けば、背後にある川がたびたび氾濫したため建物の基礎を支える土台がえぐれているので「補強工事中」であることと「源泉の枯渇・湯量減」であるようです。

旅館が減り、村人が消え、お店が店じまいしています。学校が無くなり廃屋や空き地ばかりになっていくのでしょう。ワタシの頭では、ここが昔の活況を取り戻せるとは到底思えません。立ち直り村おこしするにはあまりにも「根本的」問題が大きく深すぎるのです。

それは日本が現在抱える諸問題そのものであります。この温泉場が個人の努力工夫や地元民たちの協力ではどうにもならないのと同じく、日本も奇跡でも起こらない限り、数百年先には滅びゆく国家・消えゆく民族になって行くのではないかとさえ思うのです。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (uncle-ken2055)
2023-05-15 22:50:30
けんすけ

今晩は。
なんか切実な問題ですね
最後には滅びゆく日本を想像してしまいます
。昔には戻れないのでしようが、生きて来た年代毎に当時が消滅して又新しい当時を懐かしむを繰り返して行くのでしようか?
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返信遅れてすみません (槐松亭主人)
2023-05-17 09:35:22
ふるさとを懐かしむだけでいいのか、知っている町や人々が消えていくのをただ見ているのが切ないです。
政治や行政のせいもあるでしょうし、世界的には環境破壊を続けている人類への警鐘であるともいえます。

根源には人間の欲得が、結局自分たちを滅ぼしていくのだというところに戻るのだろうと思います。
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