植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

少しだけ分かったこと 日々匍匐前進

2023年01月19日 | 篆刻
先日このブログに、「調べるほどに深まる謎」のことを書きましたが、どうしても気になって手持ちの文献(と言うほどの事も無いですが)を子細に調べ、ついに「墨スペシャル 石印材の楽しみ」(1995年1月発刊)の中に「太極頭」の印を見つけました。一切の説明が無く写真のみ。「墨」は、美術・書道 に特化して、70年と言う歴史と伝統がある芸術新聞社が今でも発刊している、良書であります。ワタシはこのシリーズが非常に優れていて、書や印の活動や習得に大変参考になっており、数十のバックナンバーを集めております。
下の写真中央

この2枚の写真は無断転載です、すみません。

また本書の中で、寿山系の一つで名石を産出することで有名な「高山の北麓から採石されたが、今は産出しない」との記述がありました。寿山石の一種で、淡い乳白色ないしは黄白色に朱が混じることもある石で、本書には、明らかにもっと透明度が高い石が掲載されていました。高山から出る石の中には、その外見などから、桃花紅・高山紅・晩霞紅など非常に美しく稀な優れた石が含まれ、同じく素晴らしい石を産出する「杜陵坑」と比肩するものであります。

そこで、更に他の本を調べ、寿山石の第一人者である方宗珪氏著 「寿山石印材を極める」を見直すと、「太極頭」を冠した美術品の写真がいくつかありました。この本は、専門の美術・骨董商・あるいは金満の骨董品コレクターなどが参考にして目を肥やすにはいいのかもしれませんが、実際に石を彫って、ついでに奇麗な石を愉しむと言った程度(ワタシレベル)の多くの人たちには、全く縁遠い石の数々なので、参考にも何もなりません。死ぬまで拝めないような数百万数千万円というような美術品の写真を見せられても、手持ちの正体不明、安物の石と比較して分析・分類には役立つはずもありません。

ワタシが入手した「太極頭」の名前がラベルについていた印材は、その透明度で劣っており、真贋は定かではありません。
それでも「太極頭」という印材がいかなる由来で、どんな外観かは把握できたので、一歩前進といたします。

実は、昨夜落札期限がくるヤフオク出品物に、チェックを入れていた1品ものの印があったのです。説明文には「古寿山石・芙蓉石・細密彫・碩果累累紋」とあるでけで詳しい情報は無し。

この石が目を引いたのは、側款に読み取れる作者が「葉舟」であることが一つ。その名は中国西泠印社創設メンバー葉銘先生の「号」であります。また、透明度の高い凍石系の乳黄色の素地に白い薄雲の様な模様が漂っていたからです。これは、印材研究の大先生が使うムラムラとした水紋や斑紋を指すのではと思いました。どこかの写真で見覚えがあったのですが、それが見つかりません(笑)

頭部には橙色に近い紐彫がありとても美しい石なのです。

それが最低入札価格が31,000円でした。第一感は「行ってしまえ!」です。これは銘品に違いないと感じたのです。しかし、背中からワタシを引っ張ったのが①他に誰もウオッチが付かない ②施された側款が、素晴らしい印材にマッチしていない、黒い塗料を埋め一面の全体に大きく彫られた8文字が美的センスにそぐわない ③出品者の評価が92%であった ④2万円~7万円で同じような一見高級そうな田黄等の印材が大量に出品されていた、という事でした。

そして、先ほど、上の説明書き「碩果累累紋」で検索したら広島のある古物商許可を持つある業者さんのHPで、全く同じものを発見しました。業種はPC及び電化製品の販売 、とあります。件の石が販売されていたのですが「31,000円(税込)→ 16,864円(税込)」と値引きされているではありませんか!!。

この手の商法は、他でも見かけます。通常はメルカリや他のオークション・通販など複数の手段で同時に販売することは認められているようです。問題は、高く価値がある、と見せかけるためにわざと高めの最低価格を示し、よそで半額程度で販売して「安物・まがい物」を安いと誤認誘導させて売りつける、あるいはクレジットカードなどでお金を支払っても品物が届かない、カード情報を盗み取られて悪用される、といったリスクがあるのです。こちらの出品者さんがそんな犯罪的な悪意がある、と言っているわけではありません。念のため。

昨夜「えい」とばかりに入札しなくて良かった、という印象であります。皆さんが、ウオッチもつけずスルーしたのは、何かそんなことを察知してしていたのでしょうか。3万円の商品を一気に半額にするのは、もともとそんな価値が無かったとすべきかもしれません。魅力的なものにムラムラして近づくと大金を抜き取られる、というのはよくある手口であります。

少なくともヤフオクで3万円出せば、おそらく現物を入手できます。(ここは住所氏名のみ個人情報が相手に知られるのですが)、それが、たとえ葉舟さんの模造であったとしても、思い描いた満足できるような逸材である可能性もあるのです。案の定、当該出品物は、誰からも入札されず、本日期限で再出品されております。しばらくウオッチを続けることにいたしましょう。(やっぱり欲しいのです(笑))

因みに調べる過程で判明した「碩果累累」は(果物などが)沢山実りを付ける、という中国語でありました。ワタシが日々育てている果樹園の実り・収穫を願って、一つ印を彫りました。


ちょっとずつ匍匐前進し、いくらかでも賢くなれば良し、であります。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 自分の常識は 世間のヒジョ... | トップ | 石も刀も人間も磨く »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

篆刻」カテゴリの最新記事