ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

チャコール(炭)を操る

2007-08-07 18:27:03 | Weblog
 突然雨が降り出したりする今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
山形市は花笠祭りが開催されて今日で3日目、最終日となります。そして、ワタクシを含む当店スタッフは、ブログでも告知したように、商店会の屋台の為、おととい、昨日と目まぐるしい2日間を体験したのでした。
 それは、土曜日の夜から始まりました。土曜のディナー営業が終わったのが深夜1時過ぎ、それから屋台で出す「牛スジ煮込み」を作り始めました。
 一度、湯通ししてアク抜きをし、生姜、ガーゼで包んだ煮干と共に煮ていきます。その量、約30キロ。夜中にこんなに汗をかくとは思いませんでしたよ。
 煮込んでいる間に焼き鳥の串打ち。その量、10キロ分の鶏肉(もも肉)、その串の数150本。朝でしたよ。終わって。
 串打ちの後、厨房の掃除をして、自宅に着いたのが朝の6時過ぎ、町内会の集まる時間が朝の8時。って、寝れないじゃないですか。私は。
30分だけ仮眠してシャワーを浴びて、また厨房に戻り、煮込みの仕上げをしたのですが、途中何回か、(何でこんなに大変なのだ?しかも、他の町内会の人間よりも。)という心の葛藤があり、大変でした。
 しかし、終わってみれば、焼き鳥2日間で230本完売、煮込みほぼ完売、フランフルト10本残って90本売り、という初めてにしては輝かしい成績、疲れたけど楽しかったかな、という思いで相殺されました。
 また来年も頑張れるよう、努力したいと思います。そして、わざわざ屋台まで足を運んでくださった皆様、ありがとうございました。
 自分でブログに書いておいて言うのもなんですが、「焼き鳥100本ください。(中には1000本、という方もいらっしゃいました)」なんていう人いるのか?と思っていたのですが、結構いらっしゃって、言われたこちらが恥ずかしくなってしまいました。
 忙しくてお構いも出来ませんでしたが、大変うれしく感じた次第です。これからもよろしくお願いいたします。

 さて、今書いたように、焼き鳥230本串打ちし、焼いたわけですが、この焼き鳥というもの、なかなか奥が深いもの、と今回実際やってみて思い知らされました。
 まず、串打ちから考えさせられます。焼き台の縦の幅は約9センチ、ということは、鶏肉のひとつのポーションの大きさを3センチにし、3個1串としなければなりません。
 しかし、全部3センチに切り揃えては、先読みの出来ない人間がする事。考えなければならないのは、熱源が炭である以上、どうしても端の方は火が入りにくいのではないか、という事です。つまり、手前(手元)と先の鶏肉を小さめにする必要があります。この方が均一に火が入る、と考えました。
因みに、2キロの鶏肉から30本取れましたので、1串あたりの重量は65グラム前後です。
 そして打ち方。皮を熱の緩衝材として考え、皮で身を包むような感じで打っていきます。この方がジューシーさが残り、パサつきを防げるのではないか、と考えました。
因みに、左右上下も平均に打たないとバランスが悪く、うまく返せません。気をつけて打ちたいものです。
 次に「焼き」。電気式、またはガス式のグリラーであれば簡単にいく火熾し(ひおこし)、これが炭火になると大変です。細かな炭からバーナーで火を熾す作業は、結構イライラします。が、一回火がついてしまうと消したくてもすぐには消えないという、まさしく扱いづらい物。ガス式グリラーなどが普及するのも頷けます。
 しかし、ガス式のグリラーと炭火では過熱の分類が違います。
ガス式のグリラーの場合、放熱がガス火の輻射熱(ふくしゃねつ)だけであり、それ以上のものはありません。これはこれでいいのですが、炭火の場合は赤外線加熱、というものに区分けされ、輻射熱とは一線を画します。一般的に赤外線加熱の方が火が入りやすく、水分を飛ばさないのでパサつきを抑えられる、と考えられております。
 我が厨房でもグリルパン(溝の付いたグリル用のフライパン)でグリルしていたのですが、加熱の理論を追っていったところ、炭火に行き着いてしまいました。
焼き台を購入し、実践はしたものの、先に書いたように扱いづらいため、長い事日の目を見ることはなかったのですが、まさか、焼き鳥で活躍するとは思わなかったでしょう。焼き台自身も。
 話を戻します。今回、炭は備長炭を使用しました。私の経験則から言いますと、他の炭では燃焼時間が短く、何度も炭を足さなければならなく、炭自体は安くても不経済的。備長炭の方が燃焼時間も長く、火力が安定していると感じました。
 後は焼き方ですが、これは、経験を積むしかないでしょう。ですから、今回の事は勉強になりました。一回で10本しか並ばない焼き台で、初日、150本も焼いたのですから、嫌でも焼けるようになりますよ。
 一連の作業をやっていながら思ったのですが、10代後半の頃、ある事情で鰻焼き職人の人に付いて仕事をしたことがありました。
 割き(鰻を捌く事)、打ち(串打ち)、焼き、と一通り教えていただきましたが、割きは別にしても、打ちと焼きの考え方は鰻も焼き鳥も一緒なのか、と妙に納得した次第です。あの頃教えていただいたのを思い出してしまったくらいですから。

 焼き鳥を買っていただいた方にはとても感謝しております。一生懸命やったつもりですが、反省点が無かったわけではありませんし、反省、改善していかなければならない事は沢山あると思います。それは、屋台だけの事ではなく、自分の店の事も含めて考えたいと思います。
 
 来年はもっとスピーディーに出せるよう努力いたしますので、温かく見守っていただければ幸いです。

 余談ですが、今回の焼き鳥はタレ、塩、の他に、カレー味、オマール海老風味の塩味、というトリッキーなものもお出ししたのですが、塩、オマール塩、カレー風味の順で人気があり、タレはあまり人気がありませんでした。
 残念です。あんなに苦労して作ったのに。しかも、美味しかったのですよ。タレ。
 来年まで寝かせようかな。
コメント (7)
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