田島一郎先生には、大学時代3年間お世話になった。(大学2年から4年まで)数学科教育法、解析学入門などで、様々なことを学んだ。当時、田島先生は文部省(現文部科学省)の主査を担当されており、高校、中学数学の学習指導要領を長らく作成されていた。先生から学んだことは、現在の教科指導に多大の影響を及ぼしている。平面幾何の内容がどんどん削られてゆく現状に、危機感をもっておられ、折に触れて、話をしてくださった。講義が終わると、教卓のところにいつしか人垣が出来、色々な質問にたいして、丁寧にお答えくださり、時に30分を超えることも度々だった。いやな顔一つせず、こちらが分かるまで熱心に手を変え品を変えて説明した下さった。また解析入門はご自身で執筆された「解析入門」(好学舎)を使用した講義で、初学者の躓きやすいところを丁寧に解説してくださった。現在同署は岩波全書の「解析入門」として入手可能です。当時、高木貞治先生の「解析概論」を読み終えていたので、概念の復習としてとても参考になった。イプシロン・デルタの説明は具体的であり、誤差論とのからみで話される内容は、まさにコンピュータ時代にふさわしい内容であった。
春、秋の慶早戦では1勝1敗のタイ記録で月曜日を迎えると、当日の講義は自動的に休講となる慣わしであった。多少しわがれたお声は、魅力的だった。
大学に入学するまで、毎朝5時に起床して聞いた旺文社のラジオ講座。田島先生は長らく講師を担当されており、お書きになった参考書(良く分かるシリーズ)ともどもたいへんお世話になりました。田島先生のほかには、早稲田大学の寺田文行先生の鉄則シリーズも参考になりました。(チャート式とは一味も二味も異なる、味のある参考書でした。)
直接、田島先生のご指導を得られる光栄に、毎日がとても充実していたように思います。
田島先生は、教科書も執筆されており、その編集会議の模様も何度かお伺いすることが出来ました。膨大な量の原稿内容を削ることが仕事であり、かなりシンドイ作業であると話されていました。教科書作りの第一歩は値段決め。その次に用紙の材質が決まり、総ページが決まる。そして、内容は最後に決まる、とのことだった。
ある時、月刊誌「大学への数学」の黒木社長が雑誌創刊時のことを記事にされました。雑誌の創刊号を5,000部作成して、いきなり本屋さんに持ち込み、売って欲しいと頼んだところ、どこも置いてくれる所はなく、神田の本屋街を5,000冊の創刊号を積んだ、リヤカーを一人トボトボと引いていたとき、田島先生にであった。事情を話すと、「俺に任せせろ。」の一言を残して、対応して下さった。あのときほど助かったことはなかった。まさに地獄にほとけであった。そんな記事が目に留まった。早速、その話を田島先生にすると、「そういえば、そんなこともあったかもしれないが、古いことなのでもう忘れたな。黒木君がそんなことかいてくれているのか。」と破顔一笑。ダンディーな田島先生が益々ダンディーに見えました。
いろんな場面場面で、貴重なお話をしていただいて、現在の自分があるのだと、感謝の気持ちでいっぱいです。
ある時、「おい、君。正五角形の作図は出来るか?正五角形には色々な幾何の面白さが詰まっているぞ。」「おい、君。二項定理の証明は大丈夫か?」等、数学教育のキーポイントをたくさん学ばせていただきました。
多少なりとも私の授業が分かりやすいのは、田島先生のご指導の賜物と思っています。
春、秋の慶早戦では1勝1敗のタイ記録で月曜日を迎えると、当日の講義は自動的に休講となる慣わしであった。多少しわがれたお声は、魅力的だった。
大学に入学するまで、毎朝5時に起床して聞いた旺文社のラジオ講座。田島先生は長らく講師を担当されており、お書きになった参考書(良く分かるシリーズ)ともどもたいへんお世話になりました。田島先生のほかには、早稲田大学の寺田文行先生の鉄則シリーズも参考になりました。(チャート式とは一味も二味も異なる、味のある参考書でした。)
直接、田島先生のご指導を得られる光栄に、毎日がとても充実していたように思います。
田島先生は、教科書も執筆されており、その編集会議の模様も何度かお伺いすることが出来ました。膨大な量の原稿内容を削ることが仕事であり、かなりシンドイ作業であると話されていました。教科書作りの第一歩は値段決め。その次に用紙の材質が決まり、総ページが決まる。そして、内容は最後に決まる、とのことだった。
ある時、月刊誌「大学への数学」の黒木社長が雑誌創刊時のことを記事にされました。雑誌の創刊号を5,000部作成して、いきなり本屋さんに持ち込み、売って欲しいと頼んだところ、どこも置いてくれる所はなく、神田の本屋街を5,000冊の創刊号を積んだ、リヤカーを一人トボトボと引いていたとき、田島先生にであった。事情を話すと、「俺に任せせろ。」の一言を残して、対応して下さった。あのときほど助かったことはなかった。まさに地獄にほとけであった。そんな記事が目に留まった。早速、その話を田島先生にすると、「そういえば、そんなこともあったかもしれないが、古いことなのでもう忘れたな。黒木君がそんなことかいてくれているのか。」と破顔一笑。ダンディーな田島先生が益々ダンディーに見えました。
いろんな場面場面で、貴重なお話をしていただいて、現在の自分があるのだと、感謝の気持ちでいっぱいです。
ある時、「おい、君。正五角形の作図は出来るか?正五角形には色々な幾何の面白さが詰まっているぞ。」「おい、君。二項定理の証明は大丈夫か?」等、数学教育のキーポイントをたくさん学ばせていただきました。
多少なりとも私の授業が分かりやすいのは、田島先生のご指導の賜物と思っています。