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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

怪異の世界#44・・・演劇公演「四谷怪談」(演出:蜷川幸雄/DVD)

2009-04-01 | ワンダーゾーンの世界
■収録:2002年、文化村シアターコクーン
■作:鶴屋南北
■演出:蜷川幸雄
■音楽:東京スカパラダイスオーケストラ
■出演:竹中直人、藤真利子、広末涼子、高嶋政伸、村上淳、他

蜷川幸雄の演出によるお芝居「四谷怪談」の公演を収録したビデオ映像を観ました。このところのボクのプライベートな時間には、江戸の劇作家・鶴屋南北が作り出した怪談話の「東海道四谷怪談」に関することに時間が取られています。何故かというと、よくもわるくもその作品のカオスのようなパワーに圧倒されたからです。とにかく、同じように収録された歌舞伎の「東海道四谷怪談」を観て衝撃を受けたのがきっかけです。

この蜷川による四谷怪談の上演時間は相当長いのですが、それでも全てを上演しているというわけではありません。原作を完全上演するとぞっとするほど長くなってしまうに違いありません。そしてまた蜷川の「四谷怪談」は、ボクがインパクトを受けた歌舞伎の呪縛を受けているといっていいのか、相当意識しているようであったのです。

まずこのお芝居で目に留まるのは、舞台の構造です。回り舞台というのでしょうか、場面を展開させるのに舞台を回転させるのですが、その動力は人力で行われていて、それもお芝居のひとつとして役者が演じる舞台の下にあからさまに剥き出しにその仕掛けを見せています。観客は、江戸時代の歌舞伎の舞台はこんなふうだったんだろうかと想像させられるわけです。そしてその舞台を動かしているのは、見る限り下層民のようない風体をしていて、そこにいくつもの意味を感じ取ることができるような演出の仕掛けがしてあるように感じました。たとえば、四谷怪談は浪人の貧しい武士の話なんだけれども、さらにその下で彼らを実際に支えていたのは、そうした下層の民達であったというような…、そう見ていくと要所要所で流れる東京スカパラダイスオーケストラの陽気な音楽がまた違って聞こえてくるような気がします。

役者らの台詞は江戸語?(そのような言葉があっのかわかりませんが、勝手に)と現代の言葉が中途半端に混ざっており、逆に聞きづらく思えました。とくにお袖を演じた広末涼子は、感情がこもっているのかいないのか、イマイチ響くものがありませんでした。それと比べてお岩を演じた藤真利子は流石、凄みを感じさせる台詞回しでした。体を張った演技も印象的です。また直助を演じた村上淳は、若さゆえのはちきれんばかりの演技であったのですが、何言っているのかさっぱりわからない…。伊右衛門演じる竹中直人は、最初はどうなんだろうな、違うんじゃないのかなと思いましたがこれが終盤に向かうにつれだんだんとよくなっていきました。力があるところを見せつけられました。

このお芝居を、ビデオですが、観てあらためて感じたことは先にも書いたのですが本家本元である歌舞伎の懐の深さです。世界の蜷川といえどもそれと比較してしまうと、前半はいろいろ試みているものの後半は歌舞伎の演出を模倣しているようになっていきます。それゆえに歌舞伎の周縁に位置しているかのように強く感じてしまったのも事実です。

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