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飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

ハネケの映画は哲学する#9…「ベニーズ・ビデオ」

2013-05-11 | Weblog

■製作年:1992年
■監督:ミヒャエル・ハネケ
■出演:アルノ・フリッシュ、アルノ・フリッシュ、アンゲラ・ヴィンクラ、ウルリッヒ・ミューエ、他

 

性懲りもなくミヒャエル・ハネケ監督は見るものにどんよりとした重いものをポンと渡してしまうような映画を作っています。この「ベニーズ・ビデオ」もやはりいやがおうでも見る側に哲学させてくれる答のない何かモヤッとしたものを感じずにはいられない作品でした。まずは、何と言っても冒頭の豚ののシーンからそれは始まるのでした。家庭用のビデオカメラで取られた生々しい豚の映像。見ている方は冒頭から衝撃的なものを見せられるのですが、実は私たちが当たり前のように食している豚肉もこうしたを抜きには届けられないことを印象づけられ、映画のストリーと関係なく、普段気づかないふりをしている見えないことに気づかされるのです。

 

この映像を見ているのはベニーという少年。彼はビデオ・オタクなようで部屋中にビデオ・テープがあり、カメラを設置してあり、部屋の内と外を映しています。映像に溢れている生活です。ベニーはレンタル・ビデオ店で知り合った少女を自宅に招き、冒頭の豚の映像を少女に見せます。そしてその映像で使われた豚を殺した銃?を持っており、それで少女を殺してしまいます。殺すという場面での、さすがのハネケはその場面をダイレクトには見せません。部屋の中を撮影しているベニーのカメラを通して映し出されるモニターがその断片を見せるのです。だから実際の殺人の場面はよくは見えないものの、少女の叫び声がリアルに響くという残酷さ、刹那さ。その演出効果のすごいこと、こちらはめちゃくちゃ嫌な気分になりました。鬱状態です。無造作に理由なき殺人を犯したベニーという少年。なんと彼は「ファニー・ゲーム」で無差別で理由なき殺人を犯すあの憎々しい役を演じた俳優ではありませんか!こんな非道な役柄を2回も演じたら、一般人からすればそうした冷血なイメージが着いてしまいその後の役者人生や実人生への影響はないのだろうか?と心配してしまいました。それほどにベニーという少年の役柄は、ある種、血が通っていないのです。

 

その後、ベニーの殺人を知った親は息子をかばい、母親は息子を連れてエジプトへ。その間、父親は少女の死体を処分することに。どう処分したかは描かれておりませんが、前の日の夫婦の会話では細かく切断してトイレに流せばわからないなどという言葉をかわしているので、そこでもずしりとくる恐怖、狂気のようなものを感じさせる演出の巧妙さ。もうこの親達は気持ちが動転しどうになかっているようです。息子可愛さなのか、責任の重さに耐えかねるのか、とにかく、息子のしでかしたことはなかったことにしようとしているのでした。しかし、この息子は親の気持ちなどどこ吹く風で、エジプトでは母親がトイレに入っておしっこをしている様子をビデオを撮ろうとするし、決定的なのは前の日の少女の死体をどうしようかという夫婦の会話をこっそりと撮影までしているというノーテンキなのかビデオに囚われているのか、ただただおぞましいのか、もはや少年という姿をしていながら怪物化しています。ベニーよ、君は一体何が望みなんだいとその行動を疑いたくなるのです。最後はベニーに裏切られる親という救いのない図式で映画は終わり、まったく親の立つ瀬がない。ベニーはただただ怪物として存在しているのでした。

 

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ビデオメーカー
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