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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

鮮血の美学NO.12⇒漫画「笑う吸血鬼」(丸尾末広)を読む

2010-04-22 | 吸血鬼
昨日書いた丸尾末広による「乱歩パノラマ」、丸尾と江戸川乱歩の取り合わせであったが、丸尾と吸血鬼の取り合わせも中々のもんでなのである。ゴシック、退廃、耽美、幻想、恐怖、……とその系列の言葉をズラズラと並べることができる。ということで、漫画「笑う吸血鬼」を読んだことについて。

漫画では吸血鬼にされてしまう美少年が、その血の渇きに苦しむところがある。己の生存欲求により本能的に相手の血を求めてしまう。しかし、動機はそれだけではなさそうで、この吸血美少年、女の生き血を吸いながら射精もしているのだ。つまり同時に性的な快楽も味わっているということになる。少女からジャニーズ系と称される吸血美少年はクールでその立ち姿はカッコイイ。ドラキュラもそうだが吸血鬼はクールでカッコよくないとさまにならない。丸尾はその感覚を実に的確に描いていると思う。そして吸血行為は美しくエロティックでなければならない。線路の脇に自然に咲くの花畑があり、その花に埋もれながら女の血を吸っている吸血行為の絵があった。それが実に幻想的に感じた。女性や甘美、性器などを連想させる<花>に、人生の行方を暗示するような<線路>…など、そこにはまた象徴的な記号によって耽美で退廃的なイメージを増幅させてくれるのだ。



ところで、この漫画の最後の解説にあの荒俣宏が書いていて、丸尾を評してグラン・ギニョールの漫画家と言っている。グラン・ギニョールとは19世紀末のパリに現れた演劇、「残酷恐怖の劇場」を差していうという。しかしそれは単なる血みどろ劇ではなく、社会底辺に生きる人達の、被虐者達の逆襲という社会告発的な側面もあったのだそうだ。その意味で日本においてもっともグラン・ギニョールな作家は江戸川乱歩であると荒俣は書いている。とくに「芋虫」などは、その際たるもので当時は社会主義者から絶賛されたという。奇しくも丸尾末広がその乱歩の「芋虫」を漫画で書いているのは、底流に流れている感性は同じなのだ。荒俣は、さらに未来には、丸尾の漫画はプロレタリア文学の復興を促す人物と目されるかもしれないとまで書いている。ならば丸尾末広は「蟹工船」を書いた小林多喜二となるのである。

さて、未来の丸尾の評価は如何に?

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