飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

映画「ヒストリー・オブ・バイオレンス」(監督:デイヴィッド・クローネンバーグ)

2013-05-03 | Weblog

■製作年:2005年
■監督:デイヴィッド・クローネンバーグ
■主演:ヴィゴ・モーテンセン、マリア・ベロ、エド・ハリス、他

デイヴィッド・クローネンバーグ監督の「イースタン・プロミス」を見て、久々にクローネンバーグの面白さの世界に浸った気がして、さらにとばかり同じ監督の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」を見ることにした。最初はタイトルが「ヒストリー・オブ・バイオレンス」なんてものがついているので、クローネンバーグ監督でしょ?タイトルに暴力?残酷なんじゃないの?と、つい気がひいてしまうところがあったが、言葉の意味として暴力の歴史=前科のような意味合いがあるらしく、オドロオドロしさはなく、暴力とは何かというようなことも考えさせられる割と深い作品になっていたのでした。

 

アメリカの片田舎でコーヒー・ショップを営みながら平和に暮らしている家族。ある日そのコーヒー・ショップに強盗が押し入る。強盗は平気で人を殺すような狂った野郎だ。このコーヒー・ショップの前にもモーテルで殺人を犯している。銃を突き付けられた女性従業員。危機が迫るなか、店主は素人とは思えないさばきで強盗らを逆に殺してしまう。男は一夜にしてヒーローとなりテレビ局の取材を受けるようになる。正当防衛、人命救助とはいえ暴力により死んだ人間の酷さもその事件ではしっかりと映像として見せている。正当防衛だろうが、なかろうが肉体が破壊された死体は惨いものなのだ。

 

そしてその男のもとに黒い影が忍び寄る。あきらかに堅気ではないマフィアが別の名前で英雄となった男を呼ぶのだ。やがて、男は凄腕のマフィアであったことがわかってくる。だから殺しのさばきも見事なのであった。足を洗い別の人物となって平穏な生活を営む男、これは日本のやくざ映画か西部劇に出てくるような展開となってきた。犯してきた罪の償いはそうは簡単に償えないものだということ。暴力は連鎖する。虐められていた男の息子は、事件後、虐めてきた少年を逆に殴り倒してしまう。これも父親の事件がなかったら起こりえたことかどうか?

 

やがて男は降りかかってくる火の粉を振り払うため、暴力には暴力の力を奮わざる得なくなる。たとえそれが血を分けた兄弟であっても…。暴力によってこの主人公の男がどうなっていくのかは見てのお楽しみといったところだが、暴力前と暴力後の世界というようなものがこの映画には描かれていて、それが重くのしかかるし、そこから愛の世界が新たに築かれていくのか?というところまで示唆的に描かれていて味わい深い側面もあるといえるのでした。

 

 

ヒストリー・オブ・バイオレンス [DVD]
ジョシュ・オルソン
日活

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「イースタン・プロミス... | トップ | ハネケの映画は哲学する#6…... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事