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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

都会の風よ!ジョン・カサヴェテスの映画#4・・・「こわれゆく女」

2012-12-20 | Weblog

■製作年:1975年

■監督:ジョン・カサヴェテス

■出演:ジーナ・ローランズ、ピーター・フォーク、他

 

これまでジョン・カサヴェテスの作品を続けて見てきているが、彼がこんなヘビーな映画を撮っていたなんて露知らずにいた。この「こわれゆく女」も同様ヘビーな映画である。ある家族の、夫と妻子供が3人の、家族の日常の一断面を描いた映画がここまで重苦しいとは、映画を見はじめるまで誰が予測しえようか?一筋縄でいかない家族関係を描いた映画。かつてアメリカにカサヴェテスというすごい映画作家がいたという事実を知っただけでも充分なくらいなのに、カサヴェテスはそれ以上に見るものの内面に重く入り込んでくるのだ。

 

「こわれゆく女」という邦題にあるように、精神異常をきたしていく妻の一挙手一投足に振り回される家族を描いている。他人が見るとちょっとおかしい、いや、どうみても発言や行動がおかしいという妻が家庭にいたらどうであろうか?それは大変だろう。仮に、発病というケースを考えた場合、一般的にはそうした様子がみられる女性にあえて結婚しようという男性は数少ないと考えられる。何も最初から進んで困難を選ぶ人は少ないと思うからだ。もし、いたとしたら誤解を怖れずに言えば、物好きと一笑され大変だねと人事のようにあしらわれるのが本音の部分ではないだろうか。しかしだ。結婚したときは順風満帆であっても長い人生どんなことが待ち受けているかわからない。結婚後数年して発病ということは十分有り得る話となる。ましてや3人も子供がいては、訪れた危機に対して正面から向き合わざるえないだろう。人間関係、夫婦関係とはそうしたところからスタートラインするような気がする。

 

カサヴェテスはそうした人生の、日常の些細な、でも当人にとってはとても重大事なことを、執拗以上にピックアップして、他の映画監督がおよそ描かないようなシュチエーションをこれでもかと徹底して描く。絶妙な演出で。そこには監督の演出力が問われるし、俳優の力量も試される場となってくるはずだ。今回、こわれゆく女を演じたジーナ・ローランズは予想を超えるようなすごい演技を見せてくれる。この映画が公開された年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたのもじゅうぶん頷ける。そしてピーター・フォークの演技も負けずにすごい。この映画はほとんどこの2人が作り上げたものと言っても過言ではないほどの入魂の演技を見せるのだ。かれらの演技が憑依するにつてそれが見る側にとっては、過剰過ぎるリアリズムとして現れてくるという面白さ。そして画面から眼が離せなくなるものの、カサヴェテスの過剰性はたとえ10分の映像を見たとしても30分くらい見た感覚にさせられ、どっと疲れもする。まったくカサヴェテスはびっくりさせられるような映画を作るものだ。

こわれゆく女 HDリマスター版 [DVD]
ジーナ・ローランズ,ピーター・フォーク,マシュー・カッセル,マシュー・ラボートー,クリスティーナ・グリサンティ
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ジーナ・ローランズ
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