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【cinema】『テンペスト』(試写会)

2011-06-08 01:28:19 | cinema
'11.05.31『テンペスト』(試写会)@スペース汐留FS

tweetにもあるとおり、仕事が終わらず。ダメもとで会場へ向かうと、トークイベント中! 係の方にうかがうと、イベント終了後お入り頂けますとのこと!うれしい♪

ちなみに見逃してしまったトークイベントのゲストは、衣装繋がりで小林幸子。劇中で実際にヘレン・ミレンが着用した衣装を来て登場したらしい。ちょっと見たかった(涙)

*ネタバレありです

「実の弟の陰謀により、その地位を追われたミラノ大公プロスペラ。幼い娘と共に流された島で12年間魔法の術を学んできた。ある日、彼女の座を奪った男達を乗せた船が島の近くを航行し…」という話で、これはウィリアム・シェイクスピアが最後に書いた戯曲。タイトルは知ってたけど、読んだことはなかった。シェイクスピアは多分「十二夜」くらいしか読んだことない気がする… 言い回しや言葉遣いもそうだけど、とっても難解な印象。上手く言えないんだけど、複雑に絡みあった人間関係が、壮大な台詞を理解しようと必死になっていると、意外にアッサリ解決しちゃっているような… だって「十二夜」では、あんなに他の姫にご執心だったオーシーノが、シザーリオが実は女性ヴァイオラだと分かった瞬間、アッサリ求婚しちゃうし(笑)まぁ、1冊しか読んだことないのに、偉大なシェイクスピアを語るなという気もするけれど(笑)

そんなわけで、例によってサッパリ分からないので、毎度のWikipediaで調べてみた。でも、意外に記述は少なかった。 「テンペスト」はウィリアム・シェイクスピア最後の戯曲(共作ではその後も発表あり)で悲喜劇。 初演は1612年頃と言われている。テンペストとは嵐の意味。あらすじを読むかぎり今回の映画はほぼ変更していない。ラストさらなる復讐を思い止まったプロスペローが、観客に向かい「島にとどめるも、ナポリに帰すも観客次第。どうか拍手により自由にして欲しい」と語りかけるシーンがあるらしい。劇中の「我々は夢と同じもので作られており、我々の儚い命は眠りと共に終わる」は名文句。余談だけど、ベートーベンの"ピアノ・ソナタ第17番"の通称はテンペスト。弟子のシントラーに曲の解釈を聞かれ、「テンペスト」を読めと答えたことに由来している。ちなみに今年2011年は「テンペスト」執筆400年に当たるとのこと。

うーん。面白かったのだけど、感想はなかなか難しい。多分だけどシェイクスピアの面白さは、物語るという意味の台詞だけではなくて、台詞そのものにもあるんだと思う。例えば、島に住む怪物キャリバンを"魚"と呼ぶシーンがあるけど、その造形はどう見ても魚じゃない。何故だろうと同行のrose_chocolatさんにお伺いしたところ、おそらく韻を踏んでいるのではないかとのこと。英語の韻を日本語にするのは、なかなか大変なんじゃないかと思う。韻を踏みながら朗々と繰り出される台詞は、そもそも意味重視なのか、韻重視なのか… まぁ、そんなことは戯曲1冊しか読んでない人間の語ることではありませんが(笑) ただ、役者達の台詞は流れるようなのだけど、その意味を拾うのがかなり大変だった。要するに字幕を読んでも日本語を一回自分の中で消化しないといけないというか… 監修の方もついていらしたし、字幕自体がダメだったということではなく… 上手く言えないんだけど…

もちろん全てがそんな調子なわけではないので、話自体は理解できるのだけど、意外に哲学的なことを言っているのではないかと思われるキャリバンの台詞なんかは、長台詞な上に難解なので、半分くらいしか理解できない。まぁ、自分がダメなだけかもしれないけれど(笑) でも、やっぱりこれは英語がかなり分からないと辛いなという気はした。シェイクスピアの母国イギリスを初めとする欧米諸国ではどうなのか分からないけれど、日本ではタイトルぐらいは知ってても「テンペスト」 のあらすじが言える人は少ないのではないでしょうか。個人的にはタイトルしか知らなかったので、自然ストーリーを追うのは台詞ということになるのだけど、先ほどから書いているように、字幕の日本語すら難解なので… もちろん、ストーリー自体が理解できないわけではないので、全然大丈夫なのだけど…

で、さっきからつらつらと詳しくもないのにシェイクスピア作品について書いてきたのは、台詞が多くて分かりにくいので、うっかりすると眠くなってしまう。正直眠くなったし(笑) 物語はプロスペラを軸として、3組に分かれて進むことになる。つまりプロスペラが復讐すべき相手、ナポリ王アロンゾー、その弟セバスチャン、ナポリ王の顧問官ゴンザーロ、そしてプロスペラの実弟で現ミラノ大公アントーニオが1グループ。船員だったステファーノとトリンキュロー、そしてステファーノを崇拝してしまったキャリバンの第2グループ。そして、プロスペラの娘ミランダとナポリ王の息子ファーディナンドが第3グループ。第1Gは陰謀と権力欲が渦巻き、第2Gも欲望に走りつつお笑い担当、第3Gが汚れなき純愛で、その間を自在に行き来し、魔法の力でプロスペラに協力するのが空気の精エアリエル。この役割分担自体は原作にあることだと思うけど、それぞれストーリーに緩急をつける意味合いがあるのだと思う。ただ、やっぱり先の理由で、なかなか緩急とは行かない。ナポリ大公の座争いとか興味ないし。じゃあ、何で見に行ったんだという感じですが(笑)

何故見に行ったかといえば、ヘレン・ミレンがシェイクスピアを演じるってことと、ベン・ウィショーが出てること。あ、アルフレッド・モリーナも(笑) そして何と言っても監督がジュリー・テイモアだから。ミュージカル「ライオンキング」の演出が有名だけど、映画も3本撮っている。1本目はシェイクスピア原作の『タイタス』でこれは未見で原作も未読。2作目のアルフレッド・モリーナが主人公フリーダ・カーロのダンナで画家のディエゴ・リベラを演じた『フリーダ』の方が有名かと思うけれどこちらも未見。前置き長いけど3作目『アクロス・ザ・ユニバース』が大好きだったのが今回見たかった理由! THE BEATLESの楽曲を使用したオリジナル・ミュージカル。ベトナム戦争時のアメリカと、若者独特のもどかしさを描いていて素晴らしい。当blogのその年の2位だった。ちなみに1位は『ダークナイト』 また前置きが長くなってきたけど、要するにジュリー・テイモアがどのように演出したのか期待大だったわけです(笑)

で、やっと辿り着いた結論としては良かったってことなんだけど、それだとあんまりな記事になっちゃうので、もう少し詳しく書くと、ジュリー・テイモアお得意のミュージカル部分を、エアリエルと切ない想いを語るファーディナンドに割り当てたのが良かった。ファーディナンドについては、朗々と愛を語られるよりも、ミュージカル調で大袈裟にしてしまったことでむしろサラリとした印象になっている。一番効果的だったのはエアリエル。これは空気の精で、魔力で囚われの身となっているところを、プロスペラによって救い出された。でも、まだ自由は与えられていない。自由の身となるため、プロスペラのために働いていて、実は冒頭の嵐=テンペストもエアリエルが起こしたもの。このエアリエルはベン・ウィショーが演じているけど、CGなどを使い空気のフワッと感を出し、嵐を起こすシーンなどは、ロック調の歌で描き出している。これがすごく良く出来ている。適度に作り物っぽい。ベン・ウィショーの中性的な感じをよく生かしていると思う。ちょっとグラム・ロック的な(笑) 嵐のシーンは魔物のようでもあり、ファーディナンドを海へと誘う時は、少し胸の膨らみも見えて、両性具有的な感じで良かった。舞台だとどんな感じになるのか分からないけど、これは映画ならではかなと… ほぼCGだと思うけれど、公式サイトによると、嵐のシーンは水レンズ(?)を使って撮影したとのこと。ちなみにベン・ウィショーのスケジュールが合わず、ヘレン・ミレンもベン・ウィショーもそれぞれ1人で撮影したのだそう。役者ってスゴイな。とにかく、エアリエルのシーンが緩急に役立っていたことは間違いないと思う。ちなみに視覚効果は『セブン』『スパイダーマン』シリーズのカイル・クーパー。

役者達はみんな良かったと思う。プロスペラを裏切った実弟はクリス・クーパー。悪役だけどこれは悲喜劇なので、どこか滑稽さを感じさせたのが良かった。そのさじ加減もいい。ちょと顔が怖いけど、『シービスケット』の頑固な老調教師役良かったので、ああいう役もやって欲しい。お目当ての1人アルフレッド・モリーナは相変わらず良かった。役作りなのか自然なのか不明だけど、かなり太っている。品のない俗物の役だったので、ルックス的には合ってる(笑) そしてやっぱり上手い。相方のトリンキュローのラッセル・ブランドは監督のリクエストに応えてアドリブ連発らしい。2人いいコンビ。憎めない(笑) ナポリ王のデヴィッド・ストラザーン、セバスチャンのアラン・カミングも中世のコスチュームが似合う。

若い恋人達、ミランダのフェリシティ・ジョーンズは全然気づかなかったけど『わたしの可愛い人-シェリ』のシェリの若妻だった。島で母親以外の人間を見ずに育ったため、純真無垢で清らか。すごい美少女という感じではないけれど、お人形のような顔立ちが合っている。ファーディナンドのリーヴ・カーニーはジュリー・テイモア演出のミュージカル「SUPIDER-MAN:TURN OFF THE DARK」でピーター・パーカーを演じているそうで、バンドでリードヴォーカルをしているとのこと。歌良かったと思う。個人的な好みはあるかと思いますが、イケメン枠です(笑) キャリバンもどこかで見たことあると思ったら『アイランド』と『コンスタンティン』のジャイモン・フンスーだった。すごい肉体美! マッチョ系は苦手なのだけど、これは見事! 第1G唯一の良識家ゴンザーロのトム・コンティも控えめながら良かった。彼の存在がプロスペラの救いの1つになっていたと思うので。

ベン・ウィショーが良かった。空気の精なんてどう演じるのが正解か分からないけど、中性的な感じで、時に子供のように、時に恋人のようにプロスペラに寄り添う感じがエロティック(笑) 傷つきやすそうで、そうでもない感じもおもしろい。全員書いたかな?(笑) ヘレン・ミレンはさすがの存在感。復讐に燃えるプロスペラは厳しく恐ろしい存在でもあるけれど、その強さの中に娘を守る母の強さも感じられて良かったと思う。大芝居ではないけれど、流れるような台詞回しで"芝居"パートを見事に演じている。大英帝国勲章を受勲し、デイムの称号を持つ大女優の初シェイクスピアは、「テンペスト」のキャリバンだったのだそう!

実は「テンペスト」の映画化を考えていたジュリー・テイモアに、あるパーティーで同席したヘレン・ミレンが、プロスペローを女性にできると語ったことで、一気に現実化したのだそう。この変更は良かったと思う。ラスト割とあっさりプロスペラは彼等を赦すように見える。もちろんそうではないのは分かるし、彼女が赦したのは復讐にとらわれていた自分の人生を解放することなのだと思うけれど、そこに母親として娘の将来を拓いたという要素が加わったことでより分かりやすくなった気がする。父娘より母娘の方がより説得力がある。

『恋に落ちたシェイクスピア』のサンディ・パウエルの衣裳が良かった。小林幸子も着用したプロスペラの衣裳は胸の真ん中から下腹部まで太いジッパーのある斬新なデザイン。良く見るとコルセットのような部分にはジッパーが幾筋も… 斬新だけど中世っぽくもある。これはおもしろい。ハワイ島で撮影したらしいけど暑かっただろうな(笑) ハワイ島の風景も良かったし、エッシャーの絵みたいなプロスペラの家とかセットも面白かった。

ヘレン・ミレンが「シェイクスピアの素晴らしさは、何をしても作品が壊れることなく、さらに新たな一面が出てくるところよ」と語ったのだそう。なるほど…

合わない人は全然ダメかも… 個人的には面白かった。

『テンペスト』Official site



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