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【cinema】『ミーアキャット』(試写会)

2008-12-17 01:56:44 | cinema
'08.12.15 『ミーアキャット』(試写会)@九段会館

『ディープ・ブルー』『アース』のBBCが撮ったドキュメンタリー。カラハリ砂漠に生きるミーアキャットの話。これは見たかった。

ミーアキャットとはマングース科の哺乳類で、サソリなどの昆虫を主食とし、砂漠に巣穴を掘って群れで暮らす。群れは主に家族で構成される。雌は生涯70匹の子供を生むけれど、その過酷な環境から3分の1は大人になる前に、他の動物に捕食されたり、飢餓で命を落としてしまうのだそう。体長は大人になっても30cm程度、それぞれの子供に教育担当がつき、生きるすべを教える。ミーアキャットについては後ろ足で立つことくらいしか知らなかったけれど、この辺りの事はポール・ニューマンもしくは三谷幸喜が説明してくれるので心配なし!

生まれたばかりの男の子コロを主人公とし、彼の教育担当となった兄とともに成長する姿を描いた物語。怖いもの知らずで好奇心旺盛なコロはその性格ゆえ危険な目にも遭う。時には兄すら危険にさらしてしまう。でも、そんな無邪気なコロが困難を乗り越えて立派な大人に成長する姿は感動。しかし、どこまで演出されたものなんだろう。野生の彼らに演技をつけたハズはないし、ストーリー自体あらかじめ用意したものでもないとは思うけれど、彼らの巣穴はまだしも、群れからはぐれたコロが一夜を明かす穴ぐらにもカメラが入っていたし・・・。エンドロールに「この作品を作るにあたり・・・」みたいな英語のコメントが表記されていたけれど、席を立つお客さんの頭で見えず(涙) まぁ見えてもどこまで理解できたか謎だけど(笑) 撮影についての知識がないので、どんな風に撮られた映像なのか不明だけれど、巣穴で丸くなって折り重なって眠る姿はかわいらしい。そして1人はぐれてしまったコロの不安な1夜の姿も。その映像だけで表情にはない感情が伝わってくる。その辺りは映像の力だと思う。ペットを飼っている身としてはコロの姿がかわいそうで仕方がない。

ミーアキャットへの密着ぶりがスゴイ。彼らの周りには外敵だらけ。ライオンや鷲、猛毒のコブラや、時には同じミーアキャット同士で縄張り争いをすることもある。そんな彼らに密着するには撮影スタッフにとっても危険だったと思う。子供達が巣穴の奥までコブラに追われるシーンの迫力はスゴイ! 翼を広げると2mを越えるという鷲に空から襲われるシーンも。ここでは悲劇が起きてしまう。その圧倒的な弱肉強食というか"生きる"という事のサガをきちんと見せるのは良かった。捕食者と被捕食者の立場という視点を変えれば、鷲も生きていかなくてはならないということだし、守るべき存在があるということ。それにミーアキャットだって昆虫を食べているわけだし。1方向からの視点しかないのは中途半端だし、見たいものしか見ないのはエゴになってしまう。その辺りの事は押し付けがましくなく、きちんと語られていてよかったと思う。生きる事は誰にとっても辛い。ミーアキャットだって鷲だって辛い。そう考えれば、おそらく生態系の頂点にいるであろう人間が辛くないはずがない。そういうことが自然に落ちてくる。

単なる子育てでなはく「教育」をする哺乳類は、今のところ人間以外はミーアキャットしか確認されていないそうだけれど、この教育が感動的。それぞれの子供に教育担当がつく。コロには一つ年上の兄がつき、昆虫の捕り方など、身を守るすべ全てを教える。そして大人は子供を全力で守る。その姿には涙が出た。少しでも危険を感じると、大人たちは子供を後ろから抱きかかえるようにして守る。子供達がコブラに襲われたとなれば全員で威嚇し撃退する。その自らの危険をかえりみず、助けを呼ぶ子供達のもとへ全力で駆けつける姿には、ただただ感動(涙) もちろん私達人間だって親になれば全力で子供を守っているハズ。もしかすると「愛するものを守る」というよりも「種を守る」ということがプログラミングされていて、考える間もなく本能で行動しているのかもしれない。それは人類も含めて。だからこそ"守るべき存在"を持つ者は強いのかも。それでもやっぱり、コロの危機に全力で駆けつける兄の姿には、その後に起こることも含めて涙が止まらない。そして頭が下がる。

映像は相変わらず美しい。前作『アース』でも多用していた空からのなめるような映像は今回も多用。それがやや余分な気がしないでもない。でも、真夏の太陽が照りつけ、数ヶ月雨の降らない乾ききった大地の温度は70度にも達する。その熱や乾きを感じる映像はスゴイ。あまりの暑さに気を失って倒れる姿はかわいらしいけれど、過酷。日々衰弱していく彼らにもたらされる恵の雨。雨や雷をこんなに美しいと思ったことはない。そして、ありがたいと思ったことも今までなかった。蛇口をひねればいつでも水が出てくる環境、雨をウザイものと思える事は幸せな事なのだと実感。このスコールの映像は神々しい。

ラスト近く、コロは相変わらずの無鉄砲さから思わぬ大冒険をするはめになる。この辺りにやや演出的なものを感じたりもする。HPなどの資料を何も見ていないので、本当のところは分からないけれど、素材自体をつなぎ合わせて編集している以上、作り手の意図や意思が反映されているのはどんな作品でも同じことかも。でも、この冒険を乗り越えて成長した姿には終始微笑みっぱなし。子供はいないけれど、自分の子供の成長を見守っている気分。もしかすると、この経験がなくても本能でコロは大人としての務めを果たせたのかもしれない。でも、映画としては"この大冒険を乗り越えて大人になった"という形にした方が説得力があるのは確か。仮にそういう演出がされていたとしても悪いこととは思わない。

ポール・ニューマンの抑えたナレーションが素晴らしい。映像やミーアキャットの世界の全くじゃまになっていない。そして的確に伝わってくる。そして、そのナレーションでは声高に自然保護も叫んではいない。ただミーアキャットが日々カラハリ砂漠で生き延びることの奇跡を静かなトーンで語る。それは多分、人間が生きることも同じですよというメッセージでもあると思う。いかに自分が親に守られてきたかが分かるし、今自分がある程度の知識を持って人並みの生活が出来ていることは、両親や周りの人達が導き教えてくれたからなんだと思える。そして生きることは辛くて当たり前なんだと思ったりする。自分は何もしていないくせに、誰も何もしてくれないと思っているなんて甘いということも・・・。そんな事をカラハリ砂漠で懸命に生きるミーアキャットに教えられたりする。そして、彼らだけではなく人類も含めた全ての生物が今日も生きている環境を守りたいと思う。そう思うことも奢りなのかもしれないけれど・・・。

とにかくミーアキャットがかわいい。体を温めるための日光浴をしているそうだけれど、後ろ足で立ち上がる姿が愛らしい。その姿を見るだけでも楽しめると思う。


『ミーアキャット』Official site

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2 コメント

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Unknown ()
2008-12-28 17:42:45
こんにちは。

これはフィクションの部分が多かった感じがしました。
ぼくなんて「コロは何匹いるんだろう?」と考えながら観ていました。
コロの兄が空高く連れ去られるシーンも、
最初の頃、撮影隊が偶然見かけたシーンをカメラに収め、
あとでドラマの中に入れ込んだようです。
でも、フィクション交じりと分かって観るのも
こういう映画の楽しみ方の一つかも…。
返信する
Unknown (maru♪)
2009-01-02 01:08:24
>えい サマ

やっぱり脚本ありきで撮られた映画なんですね。
そうですよねぇ・・・{涙}
コロも兄も厳密には存在しないのだとしても、
楽しめたのでよしとします(笑)

ミーアキャットのかわい過ぎないかわいさも良かったですね。
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