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【cinema】『おにいちゃんのハナビ』(試写会)

2010-09-06 23:40:30 | cinema
'10.08.30 『おにいちゃんのハナビ』(試写会)@よみうりホール

yaplogで当選! いつもありがとうございます。実はこの日『ミレニアム2』の試写会にも応募しててたんだけど、こちらは残念ながらハズレ(涙) でも、これも良さそうなので楽しみに行ってきた。

*ネタバレありです!

「白血病での病院生活から半年ぶりに自宅に戻った華。入院中に引きこもりになっていた兄を、何とか外に連れ出そうとする。地元名物の花火大会に、兄の同級生達が花火を奉納すると聞き、参加させようとするが…」という話。かなりベタなシーンが多かったけど泣けた。王道ストーリーで、思ったとおりに展開して、思ったとおりに終わるけど、ボロボロ泣いてしまったのは、王道ゆえ。そして、主役2人がよかった。



これ実話がベースとのこと。2005年に放送された、中越地震の1年後を取材したドキュメンタリーで紹介された、妹の追善供養のために花火を奉納する20歳の兄のエピソードが、監督の心を掴み、今回の映画化となったのだそう。チラシにはそこまでしか書いていないので、実際のお兄ちゃんが引きこもりだったのかは不明で、白血病で妹さんを亡くされたのかも分からない。ただ、映画としては引きこもりから立ち直る話とした方が、2人の絆が際立つし、お兄ちゃんの妹への思いに説得力があったように思う。

見る前は、てっきりお兄ちゃんは花火師なんだと思っていたので、20歳で引きこもりの青年と聞いてビックリ。ビックリすることもないけど(笑)一家は以前東京に住んでいたけど、体の弱い華のため、空気の良い新潟県小千谷市片貝に越してきた。東京にいた頃は友達も多く、明るかったお兄ちゃんの太郎は、転校先で馴染めず、高校を卒業するまで友達はできなかった。すっかり自信を失った太郎は、卒業後、大学にも行かず、就職もしないと言い出し、両親に責められる。自分がこんな状況になっているのは、したくもない転校をしたからだと言う太郎に、華のためには仕方がないだろうと言う父親、では自分のためには何をしてくれたのだとキレる太郎を殴ってしまう父。そして引きこもり…

うーん。太郎が引きこもりになってしまった理由を、甘えだと言ってしまえばそうなんだけど、やっぱり思春期にこの経験は辛いと思う。いじめにあったというセリフはないので、"透明な存在"ということなんだと思う。また、家ではどんな感じだったのかも分からないので、両親が気づいていたのかも不明。いじめはもちろん辛いけれど、それを回避するために"透明な存在"になったからといって辛くないわけじゃない。『カラフル』のレビューにTB頂いたりして、他の方の記事を拝見させて頂くと、休み時間や教室の移動時に1人なのは辛いことだと書かれていた。自分にも少し経験がある。単純に寂しいってことじゃなく、自分は誰からも必要とされない無価値な人間なんだと思ってしまう。それが辛い…

妹の体調のことは十分理解していて、自分の状況を"妹のせい"とは思っていない。でも、体の弱い妹を心配する両親に甘えられなかった側面はある。自身も長女で長子なので、経験があるけど、上の子って今まで独占してきた両親の愛情が、自分から妹もしくは弟に移ってしまったと感じる瞬間がある。子供なのでそんなにハッキリ理解できるわけじゃないから、自分のことが好きじゃなくなったんだと思ってしまう。そして、素直に甘えられなくなる。でも、甘えたい。そもそもアピールしなくても親は見ててくれたから、甘えアピールがヘタ。で、すねたりして「お姉ちゃん(お兄ちゃん)なのに」と言われてしまい、さらに自己嫌悪… この年になってみれば、そういう一つ一つが、きちんと理解できるし、両親の愛情がなくなったわけじゃないことも分かる。でも、どんなことでも、悩んでいる最中は、出口が見えなくて辛い… そして、それを乗り越えても、新たな悩みが来るし(笑)

長々、長子の辛さばかり書いたけど、下の子って実は一人だけ愛情独占した時期ってないのかも知れない。もちろん、赤ちゃんのうちは比重が大きくなるけど、上の子にも注意は向いてるわけだし。だからかもしれないけど、下の子は自己アピールが上手いというか、ポジショニングが上手い気がする。ちゃっかりしてる部分もあるけど、憎めないというか… 6歳と4歳の甥っ子達を見てるとすごく感じる。下の子の成長をかなり見落としている気がするし… もちろん、どっちもかわいいので、愛情の濃い薄いの問題じゃない!

と、何を長々と甥っ子達の事まで書いてきたかと言えば、太郎と華のキャラの違いが、誇張されている部分はあるけど、長子と下の子って感じがするなと思ったから。例えば太郎が引きこもるきっかけになった両親とのシーンで、「俺のために何かしてくれたことあるのか?」というセリフの裏に、ただ華の病気だけではない、さっきからつらつら書いてきたことが根底にあるのかもと思ったから。そして、越してきてから華にはたくさん友達ができるのに、自分にはできないことの劣等感に、ますます追い詰められたところで、少し休みたいと甘えてみたものの、受け入れられず深みにはまって上記のセリフ、そして父親から殴られて引きこもり。正直、甘い部分もあるけど、透明な存在であることや、両親に愛されていないんじゃないかという思いや、妹に対する劣等感、社会に対する不安などで、押し潰れそうになる気持ちは分かる気がする。

華は2番目の子なので、生まれた時から自分1人だけが注目されていたことはあまりない。だから、自分の居場所を作るのが上手い。家族の中で、自分の居場所をポジショニングしてきたから、場を読むのも上手いし、他人の中でも上手くポジショニングできるんだと思う。華に友達が多いのは、もちろん彼女の性格がいいからだし、努力もしていると思うけれど、太郎が考えているほど、華にとっては難しいことじゃないのかも。そして、華は自分の体が弱いため、家族に迷惑をかけているという思いがある。お兄ちゃんが辛い思いをしているのも自分のせいだと思っている。だからこそ、あえて明るく振舞っている部分もあるのかもしれない。太郎が引きこもってしまったと知り、あの手この手で部屋から出そうとする。引きこもりの人に対して、どう対処するのが正解なのか分からないけれど、このズカズカ入ってくる感じはいいのかも知れない。谷村美月ちゃんは『おと な り』でも、やっぱり他人の家にズカズカ入り込んでくる役をやっていた。この役はどうにも好きになれなかったけど、今回は良かったと思う。それは、あちらが完全に自分のためだったのに対して、こちらはお兄ちゃんのためだし、やっぱり家族だから。例え、嫌がる兄を友達3人と一緒に街へ連れ出すという、太郎の最も苦手な体験をさせているとしても、少々やり過ぎながら嫌ではないのは、その辺りのことがきちんと伝わったからだと思う。

亡くなった妹さんのために花火を上げるという話なので、華は病気が再発して亡くなってしまう。だから、前半は2人の仲のいい姿がたっぷり描かれる。太郎が始めた新聞配達のアルバイトに、毎朝自転車の荷台に乗って一緒に回るのは、太郎に続けさせるためだけじゃなくて、自分も楽しいのだと思う。兄と妹というより、恋人っぽい(笑) ちょっと大袈裟な気がしないでもないけれど、後に華の存在がいかに太郎の支えであったかということで、彼が華のために花火を上げることに説得力を持たせている。20歳と高校生の兄妹にしては、ちょっと子供っぽいくらい無邪気だけど、後の伏線だからOK。華が亡くなってしまうと知っているからかもしれないけれど、どのシーンもキラキラと輝いている。特に2人が自転車に乗って、曲がりくねった道を、「気持ちいい」「気持ち良いな」と言いながら走るシーンが好き。



華の病気は白血病。華によると、白血病は自覚症状がほとんどないのだそう。ただ、ぶつけた覚えもないのにアザが出来ていたら、その兆候だそうで、華もアザが出ていたのに、4人そろってご飯を食べるという夢が叶うまで、アザのことは黙ったままで、雨の中太郎の帰りを待ち続けたために体調を崩して再発という図式は、ちょっと注意が足りない気がするし、それで命を落としたら、また兄に傷を負わせることになりはしないかと思ったり… 時々、感動させようとするあまり、あざといとは言わないけれど、ちょっと興ざめしてしまうシーンがあったのが残念。両親土下座シーンとか(笑)

映画の舞台となっている新潟県小千谷市片貝では、毎年"片貝まつり"と呼ばれる花火大会が開催される。この花火大会は、県民が花火を奉納する形で行われる。結婚や出産など人生の節目に家族や個人で奉納する他にも、片貝中学校を卒業すると同時に会を作り、20歳、33歳、42歳、還暦に奉納されている。来年成人するというのに友人のいない太郎を、華は会に入れようとする。始めは断られるが、再発した華に花火を見せるため、自ら頭を下げて入れてもらう太郎。でも、なかなか溶け込めない。この辺りのおずおずした感じを高良くんが好演。消極的ながらも、次第に仲間に溶け込んでいく感じにも説得力があって良かった。でも、華のための花火を上げるため、時間とお金を全て注ぎ込みたいと考えた太郎は、会を辞めてしまう。花火当日、玉送りで花火玉を打ち上げ会場に運ぶ会の仲間達の前に立ちはだかる両親が、太郎を仲間に加えてやって欲しいと土下座。これはやり過ぎな気が… 太郎は引きこもっていたけど、今は前向きに頑張っているのだし、会を抜けたのは彼の意志。太郎に寂しい思いをさせたという負い目や、彼が頑張っているからこその行動だとは思うけど、成人する息子に対してこれは過保護だし、彼の決意に対して失礼な気がした。どうせベタなら、会のメンバーが迎えに来る設定の方がよかったかも。

とはいえ、再び会のメンバーとなり、始めはおずおずと花火玉を引いていた太郎が、会場入りする頃には楽しそうにはしゃいでいる姿には、思わず微笑んでしまうのだけど(笑) 片貝まつりのシーンは大迫力で、花火の映像がホントに美しい。花火って上空で破裂した後、火の玉みたいになって広がっているんだね。その形と色の美しさには感動。それぞれの思いが込められた花火は美しく、それを見守る人々の表情を見ていると、微笑ましいと同時にうらやましくなる。太郎の配達する新聞を毎朝待っていてくれるおばあちゃんのために、家族が奉納する花火に感動。でも、やっぱり感動的なのは華のための花火。どんな花火かは書かずにおくけど、見たら絶対感動するはず! ホントに美しくてカワイイ花火だった。タイトルの『おにいちゃんのハナビ』はダブルミーニングになっているので、お楽しみに。

キャストは主役2人が良かった。正直、セリフ廻しなどは拙い部分はあるけれど、一生懸命さが心を打つ。谷村美月ちゃんは、体が弱いがゆえに前向きに、毎日大切に生きている感じを上手く演じていたと思う。ちょっといい子過ぎかなという気がしないでもないキャラを、嫌味にならず演じていて良かったと思う。ただ、これは彼女だけのせいではないけど、太郎を連れ出しての買物シーンや、ファーストフード店でのはしゃぎっぷりは、ちょっとやり過ぎな気が… 楽しそうな場面で微笑ましいけど、同じ店内にいたら迷惑かも(笑)

高良健吾くん良かった。ちょっとセリフが聞き取りにくい部分もあったりするけど、引きこもって人と関わりを持つことに臆病になっている太郎には合っていると思う。上手いなと思ったのは、無理矢理連れ出された先での立ち方。右肩が上がってて、左半身が少し引けてる感じが、オタクっぽいというか、他人と関わるのが苦手な感じが伝わった。華に連れていかれた会での居心地の悪そうな感じとか、断られてしまうと、別に入りたいわけじゃないと言っちゃう感じとかも良かった(笑) 華に引っ張られて少しずつ変わって行くのは、自分もそうしたいからだし、お見舞いに毎日行くのは、華のためだけじゃない。不器用ながら少しずつ進んで行く感じは良かった。資金を稼ぐためバイトも増やし、自分で花火玉を作る。だんだん日に焼けて逞しくなっていくのも良かった。ベタな言い方だけど、どんどんいい顔になっていった。

主役2人が良かっただけに、両親の演技が大袈裟だったのがちょっと残念だったかも… 母親の宮崎美子も、父親の大杉漣も良かったのだけど、前述の土下座シーンといい、ラスト太郎と抱き合うシーンといい、ちょっと大芝居… まぁ、脚本や演出もあるので、2人のせいだけではないのだけど… 若い役者さん達の拙いながらも一生懸命な演技が、見る側の心を打つような作品の場合、ベテラン俳優達の芝居がやけに大袈裟に感じてしまうのは何故だろう。あと、ベタなシーン多過ぎ。ベタなのも嫌いではないのだけど(笑) 塩見三省さんが出てたのがうれしかった。あと「時効警察」の真加出くんが出てたのもビックリ!

と、何だかけなしてるみたいだけど、土下座以外のベタなシーンでは泣かされてしまった。前にも書いたけど、兄妹がチャリに乗って坂を下るシーンと、花火のシーンはホントにキレイ。これは映画館の大画面で見る価値あり! 主役2人もいいので、爽やかな感動ものが見たい方にはオススメ!

気づけば長文(笑) でも、なんとか締め切りに間に合った!


『おにいちゃんのハナビ』Official site


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6 コメント

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Unknown (rose_chocolat)
2010-09-09 17:57:37
いろいろお世話様でした~。
華にはやっぱり泣かせられちゃいましたね {涙}

あの赤い浴衣と、赤い花火と、
そしておにいちゃんの想い。
ベタでしたけどツボに来てしまいました。
Unknown (maru♪)
2010-09-12 16:49:54
>rose_chocolat サマ

こちらこそ、お寿司ごちそうさまでした!
おいしかったです{ラブラブ}

主役2人がよかったですよね!
彼らのまだ拙い演技ゆえのベタさは、逆に心を打たれました。
(もちろんヘタという意味ではないです!)
それだけに、他のベタな部分が残念でしたが・・・

それでも、2人の演技には泣かされてしまいました(涙)
花火の映像も迫力があって、美しかったです。
それぞれの"思い"が込められた花火は感動的でした。
Unknown (通りすがり)
2010-09-15 14:42:35
すみません。検索サイトから飛んできました。

私は先日、映画を見たばかりなんですが、以前ドキュメンタリー番組を見ていたので、実際のご本人の話とダブらせながら映画を見ていました。
そのドキュメンタリーは、動画サイトのニコニコ動画にアップされています。一度見てみてはいかがでしょうか。(サイト内のタグ検索で、おにいちゃんのハナビと入れればヒットすると思います)
ちなみに、ご本人は昨年まで毎年妹の為の花火を上げていました。いいお兄ちゃんですよね!
今年は「花火ばかり上げてないで、少しは自分の将来の事も考えて!」と妹が言っている気がしたそうで、花火は打ち上げませんでしたが、今年は、映画化というのが、妹さんにむけての最高の打ち上げ花火ですね!
Unknown (maru♪)
2010-09-20 23:41:30
>通りすがり サマ

コメントありがとうございました♪
情報ありがとうございました。
今度見てみますね!

本当のご兄妹もきっと仲のよいお2人だったのでしょうね。
何年も妹さんのために花火を上げ続けたのですね。
きっと、素敵な妹さんだったのでしょう。

だからきっと、この映画に心打たれたのだと思います。
妹さんもきっと喜ばれていると思います!
Unknown (まてぃ)
2010-09-21 22:55:02
こんにちは。
王道ストーリーが丁寧に作られていると、
やっぱり心を揺さぶられますね。
主演の二人のベタな演技も、役柄にあっていて
良かったと思います。
大杉連と宮崎美子の土下座シーンはやりすぎだけど。

公開が花火の時期にあっていれば、もっとよかったのに、
と少し思いました。
Unknown (maru♪)
2010-09-25 03:18:03
>まてぃ サマ

コメントありがとうございました♪

おっしゃる通り、きちんと作られた王道作品って感動するんですよね。
2人の一生懸命な演技が心を打ちました。
それだけに、土下座はやり過ぎな気がしますね・・・{涙}

確かに! せっかくの作品なので花火の時期の公開したら、
相乗効果があった気がします。

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