'10.03.09 『ソラニン』(試写会)@九段会館
yaplogで当選。いつもありがとうございます。最近、何となく年齢的に青春モノは当選しにくくなっているのかなと感じている。気のせいかな(笑) というわけで久々当選した青春モノ。宮崎あおい主演だし、期待大。バンドモノお好きだとおっしゃってたrose_chocolatさんをお誘いして行ってきた。またまた、あったか肉まんと、お手製のポテトフライをいただく。寒いので温かいものをというお心づかいがうれしい(涙) いつもありがとうございます!
*ネタバレありです。そして辛口…
「大学の軽音楽サークルで知り合った芽衣子と種田。OLの芽衣子は、バイトをしながらバンドを続ける種田と同棲し、彼の生活を支えていたが、働かない後輩、パワハラ&セクハラ上司に嫌気がさし退職してしまう。そして、2人に少しずつ変化が起こる…」という話で、これは青春モノ。原作が漫画なので、あたりまえといえばあたりまえなんだけど、これは漫画(笑) 浅野いにおの原作は読んでいないので、ホントのところはよく分からないけど、多分かなり忠実に再現してるんじゃないだろうか。何となく、漫画をそのまま実写に移し替えたという印象。っていうか、漫画を読んだという感じ。それは原作ファンにとってはいいかもしれないけれど…
うーん。これは正直おばちゃんには辛かったかもしれない(笑) 彼らと同じ20代前半、もしくは母親世代だったら共感したり、温かく見守ったりできるのかもしれない。そのどちらでもない身としては、前半部分は誰にも共感出来ず、ちょっと辛かった。これを書いてしまうと、全否定になってしまうかもしれないけど、この映画の中でキーとなっている"夢"部分について、どう考えても結論が出てるだろうという気がして、結論が出ているなら、諦めるか、視点を変えて付き合うしかないのではと思うと、何故それを蒸し返すのかと、若干イライラしてしまう。イヤもちろん、そういう部分も含めて青春の名残であったり、大人になる過程であったりするので、そういうことを描きたいのだと思う。でも、最終的に描きたいのは、彼の遺志を継いでステージに立つ芽衣子なんだと思うので、だったらそこに至るまでをそんなに引っ張らなくても良かったのかなと思う。2時間6分もかけて描いたわりには、ストーリーにも主題にも目新しいところは無かったし… と書いてしまうと厳しいかな(笑) 王道ストーリーなのは全然ありだと思うし、原作漫画のまんまのセリフだったとしても、それでも感動する作品もあるんだけど、これは逆にそのまんま感が浮いてしまったように思う。若手俳優たちは頑張っていたし、下手ではなかったんだけど…
うーん。学生時代に知り合った仲間同士が、夢と現実の間でモヤモヤしつつ、少しずつ答えを見つけて行くって感じは散々見てきた。ただ、この作品の場合、主人公の芽衣子は軽音楽サークルに所属してたけど、別に自身は楽器を弾くわけでもなくて、ただ集まって種田たちの練習を見たり、ライブを見たりするだけ。本人は特にコレというものがあったわけではない。だから普通のOLさんになった。自分に何もないことは、認めたくはないけど分かっている。要領ばかりよくて仕事する気のない後輩や、ムカつく上司のいるつまらない会社で、上手くやって行けないのは自分がダメなのかとも思っているけど、多分どこか人のせいにしてる部分はあるんじゃないか。芽衣子は結局、会社を辞めてしまうけど、見せられていたことが彼女のストレス要因なんだとすれば、甘いなと思う。でもまぁ、人それぞれだし、まだ若いし(笑) 仕事に魅力がなければ、つまらないってだけで辞めたって、それはそれで人生だし。で、多分そんな何もない自分の夢を種田に託したってことなんだと思う。種田にそう言われてたし(笑) それならそれでいいんだけど、それにしても中途半端なんだよね。あんまり全力で支えちゃうと、種田がヒモになっちゃってお互い破滅だと思うし、そうならないっていう意識みたいのは宮崎あおいの演技から伝わってはくるのだけど… 何ていうか、今こう書いている内容ですら、後付けで理解してるって感じで、見ている間はいまひとつ共感できず。

うーん。この作品の登場人物たちは、普通の人。ハッキリと書いてしまえば、凡人。っていうか、世の中の大半は凡人なので、凡人がダメなわけではないし、決してバカにしていない。もちろん自分も凡人だし。凡人だから、どこかで壮大な夢は諦めなきゃならない。それは別に逃げでも負けでもない。身の丈を知るということだし、折り合いをつけるということで、それが大人になるということ。だけどそれは辛い。辛いからすがっちゃう気持ちは分かるんだけど… 種田はバンド仲間や、ライブを見に来た人達の範囲内ではある程度ヒーローだった。自分には何もない芽衣子にとっても。でも、残念ながらそこまで。音楽好きで、ギターを弾くのが大好きだとしても、音楽で食べて行けるのはほんの一握り。種田は自分にはその力がないことは分かっている。でも、それを認めてしまうのは辛い。だから、諦められないんだと思うんだけど… 見ている間はそういう焦燥感みたいなものとか、伝わってこない。急にやる気になってレコーディングして、デモ音源をレコ社などに送ってみる。その作業自体は楽しそうだし、盛り上がりとしてはいい。仲間の一人で芽衣子の親友アイが「大切な人が真剣になったら、黙って見守ってあげよう」と言いながら芽衣子の頭を抱くのも、クサッと思いながらも、ほほえましく見ていたのだけど… 結果は声を掛けてくれたのは1社だけ。かなり大手のレコ社からの呼び出しに舞い上がるも、グラビア・アイドルのバックバンドってことでプライド傷つけられて、お断り。自分が音楽を始めたきっかけになったバンドのメンバーが、魂売ったのかみたいなことを、今ではレコ社社員となった担当者にトイレで言うわけだけど、その態度はなんだとか、本気でプロになりたいならプライドなんか捨てろとか、逆に言うとおりだとか、そんな感想が浮かぶ以前に、このエピソード自体がとってつけたような印象。
この"とってつけたよう"というのが全編通して感じたこと。さっきも書いたけど、若手俳優たちは、サンボマスターの近藤洋一も含めて、頑張っていたし、悪く無かったのだけど、セリフが浮いているというか… 漫画が原作って先入観もあるのかもしれないけと、ふきだしの中のセリフという感じで、生身の人間の言葉って感じがしない。正直に言うと、このストーリー自体特別目新しい部分はないわけで、洋画、邦画問わず何度も見てきた。でも、王道でも感動するものはする。クサイセリフ満載でも泣いちゃうこともある。でもなぁ… なんだろう、いちいちカット割というか、読んだことないけど、漫画のコマ割が見えちゃうというか… クサイセリフも、ビリーと加藤のキャラの感じや、そこから来る笑いみたいのも、漫画で読んでたら面白いんだと思う。
漫画を読んだ感じというのは、その辺りのこともあるけど、さっきも書いたとってつけた感もある。盛り上げや、主人公たちに共感できる要素であるはずのシーンが、とってつけた感なのは、なんかコマ割が見えちゃうから。不謹慎かもしれないけど、種田の死ですらとってつけたように感じてしまう。多分、一人で部屋で漫画で読んでいたら、入り込めるんだと思うんだけど… それは後ろの席の若い女の子達がずっと喋ったり、ガサガサ何かを食べたりしていたせいで、集中できなかったこともあるかもしれないけれど(怒)
うーん。何て言うか… 事前に種田が亡くなってしまうことは知ってたので、彼の夢が途中で終わってしまうことは分かってる。種田はバンドをやってはいるけど、積極的に売り込んだりしてるわけでもなく、留年中の加藤と実家の薬局を継いだビリーとスタジオで演奏してるだけ。だけど、唐突に「ギター弾きてぇ」と叫んで、レコーディング、そして惨敗。で、バンドは解散状態になってしまい、田舎に帰ろうかと言い出す種田。そんな彼に「もう一度バンドやろうよ」と言う芽衣子。でも… 厳しい言い方をしてしまうと、終わらせる以前に始めてなかったと思うし、普通の人の"夢"なら仕事しながらバンド続けるでいいんじゃないのかな。何で"有り"か"無し"なのか? ここが一番入り込めない理由だったかな。まぁ、多分そこの折り合いを上手くつけられないっていう部分を描いているんだろうし、凡人OLちゃんではあっても、年齢的にそういうところを越えたから、そう思ってしまうのかもしれないけれど。
多分、一番見せたかったのは、種田が突然の事故で亡くなってしまった後。いかに芽衣子が立ち直るかということで、彼女が種田が残した「ソラニン」を歌うこと。しかもギターも弾く。コードを覚えるところから始まって、サークル活動の一環という感じはあるけれど、一応ステージに立つ。この辺りからは宮崎あおいの好演もあって、良かったと思う。ベースがサンボマスター近藤洋一なので、リズムはしっかりしているから、ギターが下手でもなんとか聞けるし(笑) 上手いという設定ではないのでOK。ライブ・シーンの音は違うかもしれないけど、宮崎あおいはコードを覚えて一応ちゃんと弾いているっぽい。この映画のために覚えたのかな。種田を失った喪失感や、自分を責めてしまう感じは、死別じゃなくても辛い別れを経験した人なら分かるはず。その辺りは理解できたし、その苦しみから立ち直るのには、一度、底まで落ちないと浮上できないという感じも分かる。そして、唐突ではあるけれど、ギターを弾き始めることも共感できる。そして、それが芽衣子の"普通の人の夢"になっていけばいいんじゃないかと思ったりする。今「音楽で世界を変える」などという壮大な夢を抱いている人の中には、もちろんその夢を叶えられる人もいると思う。事実変えた人もいるわけだし。THE BEATLESとか。でも、ほとんどの人は、その夢は叶わない。まだ10代とかの若者にそう言ってしまうのは酷かもしれないけれど、残念ながらそれは事実。でも、それは夢が壮大過ぎて身の丈に合っていなかっただけ。『THEE MOVIE』を見てしまえば、あの人達のやっていることこそが"音楽"だと思ってしまうけれど、普通の人が仲間とスタジオを借りて出す音だって"音楽"だし、バンド活動だと思う。って、あまり映画と関係ない部分で熱くなってしまったけれど(笑)

若手俳優達は頑張っていたし、良かったんじゃないかと思う。ただ、そもそもキャラ設定やセリフがとってもマンガ的なので、こんなこと言わねーよと思う言動が多かったりする。特に脇のビリーと加藤は盛り上げ役なので、コミカル要素が高い。ビリーの桐谷健太はTBSドラマ「JIN」でも好演していたけれど、このちょっと熱い男を上手く演じていたと思う。コミカル部分も良かった。ただ、演出がマンガ的なので、個人的にはとってつけたように感じてしまった部分もあったけれど。ドラムを叩けるとは知らなかったのでビックリ。ドラム重要だからね。加藤役のサンボマスター近藤洋一は、意外に演技できてビックリ。キャラが上手くハマッていたので、多少棒読みでも、モッサリ感やトボけた感じとして生きたのも、逆に良かったのかも。アイ役の伊藤歩が、仲間では少し大人な感じを上手く出していたと思うし、あんまり好みではなかったクールな顔立ちも役に合ってたと思う。種田の少し頼りない、でも熱い感じは、高良健吾に合っていたと思う。少し滑舌が悪いのが気になったし、演技も正直そんなに上手いとは思わなかったけど、文系メガネ男子って感じは良かった。
宮崎あおいは若手演技派女優と言われているけど、CMなどで見る大げさ感とか、いまどきのナチュラル感みたいのが、なんとなく食わず嫌いだった。前半はキャラ自体もそういう感じなので、苦手意識を払拭できず。でも、種田を失ってからの演技は良かったと思う。特に落ちているところ。ああいう、少し大げさにすると一見上手く見えるようなシーンを、やり過ぎず上手く演じていたと思うし、やり場のない気持ちをぶつけて、暴れている時ですら共感させるのはさすがだなと思った。前半の大切なことを素直に表現できない感じとか、逆にストレートに言い過ぎちゃって、わざとらしいナチュラルみたいな感じになってる部分も、後半のどん底から立ち直っていく感じに説得力があるから、大人になったんだと思わせる部分として生きてくる。ラストの表情も良かった。
多分、狙っているんだと思うけど、あえてマンガ的な演出。だからコマ割を感じてしまう。個人的にはそれがちょっと合わなかった。でも、画はキレイだったと思う。まぁ、ライブ・シーンの迫力は『THEE MOVIE』を見てしまった後では、見劣りしてしまうのは仕方がないとしても、これは素人さんのライブってことだからOK。例えば、回想シーンで大学生だった頃の芽衣子と種田が、土手で手をつなぐシーンは、春の暖かさとか、あの頃にしかできないキュンとするような恋愛の感じが伝わってくる。そういうシーンが結構あった。ビリーのチャリに2人乗りするシーンとか。そういえば『ソラニン』というのは、種田の説明によるとジャガイモの芽の部分のことだそうで、芽を出すってことが彼らの現状を表しているんだと思う。だからこそ"種"田なんだし"芽"衣子なのかと思うとニヤリ。冒頭にジャガイモが出てたのも、見ている間はなんとなくわざとらしくてイライラしてたけど、そういうことかと思えばおもしろい。
うーん。結構辛口になってしまったけど、一応僭越ながら人生の先輩としては、歯がゆく感じたりもするけれど、同世代の人には彼らの"夢と現実"は等身大のこととして感じられるんじゃないかと思う。あえて書くけどこれは凡人の"夢と現実"でも、スーパースターにだって"夢と現実"はある。そして多分、凡人と同じかむしろ何倍も辛いハズ。
同世代の人にはいいと思う。でも、ちょっと長いかな(笑)
『ソラニン』Official site
yaplogで当選。いつもありがとうございます。最近、何となく年齢的に青春モノは当選しにくくなっているのかなと感じている。気のせいかな(笑) というわけで久々当選した青春モノ。宮崎あおい主演だし、期待大。バンドモノお好きだとおっしゃってたrose_chocolatさんをお誘いして行ってきた。またまた、あったか肉まんと、お手製のポテトフライをいただく。寒いので温かいものをというお心づかいがうれしい(涙) いつもありがとうございます!
*ネタバレありです。そして辛口…


うーん。これは正直おばちゃんには辛かったかもしれない(笑) 彼らと同じ20代前半、もしくは母親世代だったら共感したり、温かく見守ったりできるのかもしれない。そのどちらでもない身としては、前半部分は誰にも共感出来ず、ちょっと辛かった。これを書いてしまうと、全否定になってしまうかもしれないけど、この映画の中でキーとなっている"夢"部分について、どう考えても結論が出てるだろうという気がして、結論が出ているなら、諦めるか、視点を変えて付き合うしかないのではと思うと、何故それを蒸し返すのかと、若干イライラしてしまう。イヤもちろん、そういう部分も含めて青春の名残であったり、大人になる過程であったりするので、そういうことを描きたいのだと思う。でも、最終的に描きたいのは、彼の遺志を継いでステージに立つ芽衣子なんだと思うので、だったらそこに至るまでをそんなに引っ張らなくても良かったのかなと思う。2時間6分もかけて描いたわりには、ストーリーにも主題にも目新しいところは無かったし… と書いてしまうと厳しいかな(笑) 王道ストーリーなのは全然ありだと思うし、原作漫画のまんまのセリフだったとしても、それでも感動する作品もあるんだけど、これは逆にそのまんま感が浮いてしまったように思う。若手俳優たちは頑張っていたし、下手ではなかったんだけど…
うーん。学生時代に知り合った仲間同士が、夢と現実の間でモヤモヤしつつ、少しずつ答えを見つけて行くって感じは散々見てきた。ただ、この作品の場合、主人公の芽衣子は軽音楽サークルに所属してたけど、別に自身は楽器を弾くわけでもなくて、ただ集まって種田たちの練習を見たり、ライブを見たりするだけ。本人は特にコレというものがあったわけではない。だから普通のOLさんになった。自分に何もないことは、認めたくはないけど分かっている。要領ばかりよくて仕事する気のない後輩や、ムカつく上司のいるつまらない会社で、上手くやって行けないのは自分がダメなのかとも思っているけど、多分どこか人のせいにしてる部分はあるんじゃないか。芽衣子は結局、会社を辞めてしまうけど、見せられていたことが彼女のストレス要因なんだとすれば、甘いなと思う。でもまぁ、人それぞれだし、まだ若いし(笑) 仕事に魅力がなければ、つまらないってだけで辞めたって、それはそれで人生だし。で、多分そんな何もない自分の夢を種田に託したってことなんだと思う。種田にそう言われてたし(笑) それならそれでいいんだけど、それにしても中途半端なんだよね。あんまり全力で支えちゃうと、種田がヒモになっちゃってお互い破滅だと思うし、そうならないっていう意識みたいのは宮崎あおいの演技から伝わってはくるのだけど… 何ていうか、今こう書いている内容ですら、後付けで理解してるって感じで、見ている間はいまひとつ共感できず。

うーん。この作品の登場人物たちは、普通の人。ハッキリと書いてしまえば、凡人。っていうか、世の中の大半は凡人なので、凡人がダメなわけではないし、決してバカにしていない。もちろん自分も凡人だし。凡人だから、どこかで壮大な夢は諦めなきゃならない。それは別に逃げでも負けでもない。身の丈を知るということだし、折り合いをつけるということで、それが大人になるということ。だけどそれは辛い。辛いからすがっちゃう気持ちは分かるんだけど… 種田はバンド仲間や、ライブを見に来た人達の範囲内ではある程度ヒーローだった。自分には何もない芽衣子にとっても。でも、残念ながらそこまで。音楽好きで、ギターを弾くのが大好きだとしても、音楽で食べて行けるのはほんの一握り。種田は自分にはその力がないことは分かっている。でも、それを認めてしまうのは辛い。だから、諦められないんだと思うんだけど… 見ている間はそういう焦燥感みたいなものとか、伝わってこない。急にやる気になってレコーディングして、デモ音源をレコ社などに送ってみる。その作業自体は楽しそうだし、盛り上がりとしてはいい。仲間の一人で芽衣子の親友アイが「大切な人が真剣になったら、黙って見守ってあげよう」と言いながら芽衣子の頭を抱くのも、クサッと思いながらも、ほほえましく見ていたのだけど… 結果は声を掛けてくれたのは1社だけ。かなり大手のレコ社からの呼び出しに舞い上がるも、グラビア・アイドルのバックバンドってことでプライド傷つけられて、お断り。自分が音楽を始めたきっかけになったバンドのメンバーが、魂売ったのかみたいなことを、今ではレコ社社員となった担当者にトイレで言うわけだけど、その態度はなんだとか、本気でプロになりたいならプライドなんか捨てろとか、逆に言うとおりだとか、そんな感想が浮かぶ以前に、このエピソード自体がとってつけたような印象。
この"とってつけたよう"というのが全編通して感じたこと。さっきも書いたけど、若手俳優たちは、サンボマスターの近藤洋一も含めて、頑張っていたし、悪く無かったのだけど、セリフが浮いているというか… 漫画が原作って先入観もあるのかもしれないけと、ふきだしの中のセリフという感じで、生身の人間の言葉って感じがしない。正直に言うと、このストーリー自体特別目新しい部分はないわけで、洋画、邦画問わず何度も見てきた。でも、王道でも感動するものはする。クサイセリフ満載でも泣いちゃうこともある。でもなぁ… なんだろう、いちいちカット割というか、読んだことないけど、漫画のコマ割が見えちゃうというか… クサイセリフも、ビリーと加藤のキャラの感じや、そこから来る笑いみたいのも、漫画で読んでたら面白いんだと思う。
漫画を読んだ感じというのは、その辺りのこともあるけど、さっきも書いたとってつけた感もある。盛り上げや、主人公たちに共感できる要素であるはずのシーンが、とってつけた感なのは、なんかコマ割が見えちゃうから。不謹慎かもしれないけど、種田の死ですらとってつけたように感じてしまう。多分、一人で部屋で漫画で読んでいたら、入り込めるんだと思うんだけど… それは後ろの席の若い女の子達がずっと喋ったり、ガサガサ何かを食べたりしていたせいで、集中できなかったこともあるかもしれないけれど(怒)
うーん。何て言うか… 事前に種田が亡くなってしまうことは知ってたので、彼の夢が途中で終わってしまうことは分かってる。種田はバンドをやってはいるけど、積極的に売り込んだりしてるわけでもなく、留年中の加藤と実家の薬局を継いだビリーとスタジオで演奏してるだけ。だけど、唐突に「ギター弾きてぇ」と叫んで、レコーディング、そして惨敗。で、バンドは解散状態になってしまい、田舎に帰ろうかと言い出す種田。そんな彼に「もう一度バンドやろうよ」と言う芽衣子。でも… 厳しい言い方をしてしまうと、終わらせる以前に始めてなかったと思うし、普通の人の"夢"なら仕事しながらバンド続けるでいいんじゃないのかな。何で"有り"か"無し"なのか? ここが一番入り込めない理由だったかな。まぁ、多分そこの折り合いを上手くつけられないっていう部分を描いているんだろうし、凡人OLちゃんではあっても、年齢的にそういうところを越えたから、そう思ってしまうのかもしれないけれど。
多分、一番見せたかったのは、種田が突然の事故で亡くなってしまった後。いかに芽衣子が立ち直るかということで、彼女が種田が残した「ソラニン」を歌うこと。しかもギターも弾く。コードを覚えるところから始まって、サークル活動の一環という感じはあるけれど、一応ステージに立つ。この辺りからは宮崎あおいの好演もあって、良かったと思う。ベースがサンボマスター近藤洋一なので、リズムはしっかりしているから、ギターが下手でもなんとか聞けるし(笑) 上手いという設定ではないのでOK。ライブ・シーンの音は違うかもしれないけど、宮崎あおいはコードを覚えて一応ちゃんと弾いているっぽい。この映画のために覚えたのかな。種田を失った喪失感や、自分を責めてしまう感じは、死別じゃなくても辛い別れを経験した人なら分かるはず。その辺りは理解できたし、その苦しみから立ち直るのには、一度、底まで落ちないと浮上できないという感じも分かる。そして、唐突ではあるけれど、ギターを弾き始めることも共感できる。そして、それが芽衣子の"普通の人の夢"になっていけばいいんじゃないかと思ったりする。今「音楽で世界を変える」などという壮大な夢を抱いている人の中には、もちろんその夢を叶えられる人もいると思う。事実変えた人もいるわけだし。THE BEATLESとか。でも、ほとんどの人は、その夢は叶わない。まだ10代とかの若者にそう言ってしまうのは酷かもしれないけれど、残念ながらそれは事実。でも、それは夢が壮大過ぎて身の丈に合っていなかっただけ。『THEE MOVIE』を見てしまえば、あの人達のやっていることこそが"音楽"だと思ってしまうけれど、普通の人が仲間とスタジオを借りて出す音だって"音楽"だし、バンド活動だと思う。って、あまり映画と関係ない部分で熱くなってしまったけれど(笑)

若手俳優達は頑張っていたし、良かったんじゃないかと思う。ただ、そもそもキャラ設定やセリフがとってもマンガ的なので、こんなこと言わねーよと思う言動が多かったりする。特に脇のビリーと加藤は盛り上げ役なので、コミカル要素が高い。ビリーの桐谷健太はTBSドラマ「JIN」でも好演していたけれど、このちょっと熱い男を上手く演じていたと思う。コミカル部分も良かった。ただ、演出がマンガ的なので、個人的にはとってつけたように感じてしまった部分もあったけれど。ドラムを叩けるとは知らなかったのでビックリ。ドラム重要だからね。加藤役のサンボマスター近藤洋一は、意外に演技できてビックリ。キャラが上手くハマッていたので、多少棒読みでも、モッサリ感やトボけた感じとして生きたのも、逆に良かったのかも。アイ役の伊藤歩が、仲間では少し大人な感じを上手く出していたと思うし、あんまり好みではなかったクールな顔立ちも役に合ってたと思う。種田の少し頼りない、でも熱い感じは、高良健吾に合っていたと思う。少し滑舌が悪いのが気になったし、演技も正直そんなに上手いとは思わなかったけど、文系メガネ男子って感じは良かった。
宮崎あおいは若手演技派女優と言われているけど、CMなどで見る大げさ感とか、いまどきのナチュラル感みたいのが、なんとなく食わず嫌いだった。前半はキャラ自体もそういう感じなので、苦手意識を払拭できず。でも、種田を失ってからの演技は良かったと思う。特に落ちているところ。ああいう、少し大げさにすると一見上手く見えるようなシーンを、やり過ぎず上手く演じていたと思うし、やり場のない気持ちをぶつけて、暴れている時ですら共感させるのはさすがだなと思った。前半の大切なことを素直に表現できない感じとか、逆にストレートに言い過ぎちゃって、わざとらしいナチュラルみたいな感じになってる部分も、後半のどん底から立ち直っていく感じに説得力があるから、大人になったんだと思わせる部分として生きてくる。ラストの表情も良かった。
多分、狙っているんだと思うけど、あえてマンガ的な演出。だからコマ割を感じてしまう。個人的にはそれがちょっと合わなかった。でも、画はキレイだったと思う。まぁ、ライブ・シーンの迫力は『THEE MOVIE』を見てしまった後では、見劣りしてしまうのは仕方がないとしても、これは素人さんのライブってことだからOK。例えば、回想シーンで大学生だった頃の芽衣子と種田が、土手で手をつなぐシーンは、春の暖かさとか、あの頃にしかできないキュンとするような恋愛の感じが伝わってくる。そういうシーンが結構あった。ビリーのチャリに2人乗りするシーンとか。そういえば『ソラニン』というのは、種田の説明によるとジャガイモの芽の部分のことだそうで、芽を出すってことが彼らの現状を表しているんだと思う。だからこそ"種"田なんだし"芽"衣子なのかと思うとニヤリ。冒頭にジャガイモが出てたのも、見ている間はなんとなくわざとらしくてイライラしてたけど、そういうことかと思えばおもしろい。
うーん。結構辛口になってしまったけど、一応僭越ながら人生の先輩としては、歯がゆく感じたりもするけれど、同世代の人には彼らの"夢と現実"は等身大のこととして感じられるんじゃないかと思う。あえて書くけどこれは凡人の"夢と現実"でも、スーパースターにだって"夢と現実"はある。そして多分、凡人と同じかむしろ何倍も辛いハズ。
同世代の人にはいいと思う。でも、ちょっと長いかな(笑)
