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【art】「王朝の恋 - 描かれた伊勢物語展」鑑賞@出光美術館

2008-02-11 00:51:06 | art
「王朝の恋 - 描かれた伊勢物語展」鑑賞@出光美術館

これは見たかった! 「伊勢物語」については在原業平をモデルにした話だということしか知らない。在原業平とは六歌仙として有名な平安貴族。平城天皇の孫にあたる人物で美男としても有名。

俵屋宗達の筆と伝えられている色紙が一挙25点。やや痛んでいる部分もあるけれど、これが素晴らしい。色紙なので大きくない。でも、そこに一つ一つの物語のメインとなる場面がしっかりとした筆致で描かれている。細かく描かれた着物の柄や小物にも何か意味があるのかも知れない。そういう見方が分かるともっと面白いのだろうけど・・・。絵には賛と呼ばれる書が書かれている。賛とはその絵に対する賛辞を書き込んだもののことを言うけど、ここで描かれているのはその場面で読まれた和歌。この賛は烏丸光廣によるものだそう。正直全く読めない でも流麗な文字とその配置が素晴らしい。この烏丸光廣がこの絵に賛を書いていることが分かったため、俵屋宗達の筆である可能性が高くなったのだそう。そいうのもおもしろい。

次の部屋に進むと酒井抱一の「八ツ橋図屏風」がある。よく分からないけど、この物語の主人公ある男が京を出て東国に下る途中に通る名場面らしい。中央に曲がりくねった橋を配し、無数の杜若(かきつばた)が描かれた大作。先日みた「美の壺」によると、屏風というのは正面から見るだけではなく、左右から眺めると景色が全く違うのだそう。お昼時であまり人もいなかったので、ゆっくりと左、右、正面と眺めてみる。確かに違う。正面から見ているよりぐっと奥行きが出る。

左右の見え方の違いが良く分かったのは、俵屋宗雪の「不二山図屏風」と俵屋宗達の「月に秋草図屏風」 2枚とも作者については伝ということになっているが、その美しさは素晴らしい。「不二山図屏風」は東下りの一場面。中央に富士山を大きく描き、右に馬上から富士を仰ぐ業平と従者が描かれてる。右から見ると富士の大きさと、仰ぎ見る業平の優雅な、でも寂しげな姿が際立つ。左から見ると業平の姿はなく富士と従者が1人。ほのぼのした風景に見える。その対比がいい。「月に秋草図屏風」は次の部屋にある。これはススキと萩の花を描いたもの。月を暗く描き、萩の色を目立たせている。その萩のはなが細かく、遠くから見ているとボゥっと浮かび上がっているようで本当に美しい。右から眺めると萩の花が際立ち、左から見るとススキばかりになる。正面から見ているだけでは絶対に分からない仕掛け。昔の人はこんな楽しみ方をしていたのかと感慨深い。ちゃんとした見方が分かるとこんなに面白いものが見れるなんて、今まで無知だったばかりに損してた!

少し戻ってしまうけどⅢ-東下りのパートではあの野々村仁清の茶碗を見ることができる。「銹絵富士山文茶碗」がそれ。銹はサビと読むそうで、確かにサビたような渋い色合いの見事な茶碗。仁清の焼き物というと装飾的に凝ったものというイメージがあったけど、これは無駄なものを廃してシンプルな中に美を表現している。この感性は正に日本人の技であり、美意識と言えるのかもしれない。自分が無条件にこういう景色に惹かれるのも日本人ゆえかも。

Ⅳ-恋白露のパートに移動。先ほどの「月に秋草図屏風」はここにある。ここでは「嵯峨本」を見ることができる。「嵯峨本」とは江戸時代に出版された「伊勢物語」の事。49枚の挿絵入りの本で、大ベストセラーとなった。挿絵自体は版画だと思われるので、彩色もなく手で描かれた線よりはやわらかさに欠けるものの、それぞれの場面を的確に表現した絵と構図の美しさが素晴らしく、挿絵として見事。この本がベストセラーとなったことで、江戸では「伊勢物語」ブームとなり、宗達の色紙絵や、Ⅴで見られる数多くの屏風が生み出されることとなった。宗達の色紙絵の構図と比べてみると「嵯峨本」の影響がハッキリと分かる。こんな本なら是非欲しいと思う。

Ⅴ-伊勢物語を描くのパートでは「伊勢物語」の各場面を盛り込んだ屏風が展示されている。1隻の屏風に多いもので10以上の場面を配している。一見しただけで見つけるのはムリだけど、説明の図があるので良く分かる。題材として多く用いられているのは「筒井筒」の場面。筒井筒(つついづつ)とは百人一首で在原業平が読んだ和歌に由来したもので、幼馴染のこと。井戸のふちに手をかけ親しげに話すお童髪の幼い男女がかわいらしい。「伊勢物語屏風」に描かれた女性の美しさも忘れがたい。

出光美術館は初めて行ったけど、広すぎず落ち着いていて見やすかった。目の前に皇居が広がる大きな窓の前のソファーでは無料のお茶を飲みながら一休みできる。併設されている焼き物の展示もきちんと整理されていてよかった。いい展示を見るにはこうしたハコの充実も必要かも。そういう部分も含めていい展示会だった。


王朝の恋(出光美術館)HP

コメント
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