goo blog サービス終了のお知らせ 

・*・ etoile ・*・

🎬映画 🎨美術展 ⛸フィギュアスケート 🎵ミュージカル 🐈猫

【cinema / DVD】『フランシスコの2人の息子』

2008-02-03 22:15:01 | cinema / DVD
公開時気になっていたのでDVDにて鑑賞。

「教育熱心な小作人フランシスコは、子供達のうち年長の2人ミロズマルとエミヴァルを歌手にしようと考える。誰もが彼の夢を不可能だと思ったが・・・」という話で、これは実話。実話をもとに映画化するからには成功物語なわけで、結果も展開もある程度読めてしまう。人の人生をこんな風に言うのはどうかと思うけど、ストーリーとして目新しいところは特にない。貧しい生い立ちから夢を実現させた人の話は今までたくさん見てきた。それでも何本も作られ、たくさん見られているというのは、やっぱりそこに見る人に感動や勇気を与え、惹きつける魅力があるからだろう。

この映画の良いところは、その描き方が少々コミカルで押し付けがましくないこと。泣かせよう感動させようと力が入っていない。いや入っているのかもしれないけど(笑) 一家の生活は貧しく、悲しい出来事も起きる。でも常に明るく前向きなのはラテンの血ゆえ? 悲壮感が漂うこともほとんどない。もちろん悲しくて涙が出たりもするのだけれど・・・。

フランシスコがいい。一家がより悲惨な状況に追い込まれていくのは彼の無謀ともいえる夢のせいでもあるけど、子供達の一生を小作人のままで終わらせたくないと学校を作るなど奔走したり、とにかく一生懸命なのだ。そしてその夢は”自分のため”や”家族の生活のため”だけではないのが伝わる。学がなくお金もない自分がしてあげられることを必死でやる。その姿は父親として正しいと思う。そんなフランシスコを時に苦言を呈しながらも、温かく見守り家庭を支える母もいい。この映画の前半部分は’70~80年代。たぶん、家族や家庭というものの理想的な形だと思われていた「父が導き、母が支える」という形がまだ残っていた時代なのかもしれない。もちろん今だってそのような家庭は多いだろうし、その理想だけが正しいわけでもない。でも、少し憧れたりもする。その感じが押し付けがましくなくていい。

少年時代のミロズマルとエミヴァルを演じた少年達が良かった。繊細な感じと年長であるがゆえ、家族のために街頭で歌う決心をするその責任感とか・・・。そして歌が上手くて声が美しい。よく分からないけど、おそらくブラジルの民謡とかそんな感じの曲を歌っているんだと思うけど、これが詩も曲も少し切なくて美しい。それを美しい声で健気に歌う姿がいじらしい。2人は悪徳プロモーターにだまされ酷使されてしまうが、2人の才能に気付き改心したプロモーターと再び旅興行に出る。その3人の姿がいい。でも、この旅で悲劇が起きてしまう。傷心のミロズマルは音楽をやめてしまうが、再びアコーディオンを手にする。このシーンは後のミロズマルが「自分が音楽しか道がないのは父親のせい」的な発言をするけど、そことリンクして切ない。切ないながらも「自分にはこれしかない」という人生が少しうらやましくもある。

ここから青年時代になってしまう。青年時代役の俳優も悪くはなかったけど、急にトーンが変わってしまった感があった。正直、彼らの歌っている曲も歌もいいと思えなかった。なんとなくミロズマルに感情移入しきれなくなる。でも、彼が提供した曲は他のデュオが歌って大ヒット。問題は彼の歌唱力なのか? そんな時意外な人物が現れる。ミロズマルが苦闘の末に作った曲を何とか世に出そうと奮闘するフランシスコがいい。「いい曲なんだ」と力説する曲をあまりいいと思えなかったのが残念ではあるけど、それは好みの問題なので・・・。

とにかく描き方や掘り下げがやや浅い感じがしたり、少年時代のミロズマルがずいぶん褐色の肌だったのに、青年時代はそんなじゃなかったりとツッコミどころもありますが。フランシスコの滑稽なまでの父性愛と、心配しながらも見守る母の母性愛がいい。母は見守るだけだけど、稼ぎのない夫に代わって働き支えるミロズマルの妻との対比もいい。形は違っても支える強さは女性の強さ。現代の女性は外に出て行ける。それは現代の女性の強さでもあり、時代の変化でもある。フランシスコは妻が働きに出るのをよしとはしなかっただろうし・・・。

何より少年2人の歌声と澄んだ瞳! 彼らの歌声を聞くだけでも見る価値あり。


『フランシスコの2人の息子』Official Site

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする