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【cinema】『パフューム ある人殺しの物語』

2007-03-18 23:54:00 | cinema
'07.03.17 『パフューム ある人殺しの物語』@TOHOシネマズ錦糸町(olinas)

これ見たかった。「パリの魚市場で魚のはらわたの上に産み落とされたジャン・バティスト・グルヌイユは、人並み外れた嗅覚の持ち主だった。調香師になった彼は究極の香りを求めるあまり・・・」という話で、要するに変態の殺人者の話。全編ジョン・ハートのナレーションが入る。なのでペローやグリムのお伽話のような語り口になっている。そして多分それが狙い。「青髭」だって連続殺人鬼の話で、ホントのお伽話は結構怖かったりする。

そしてこれは欲望についての話。人間の3大欲「食欲」「睡眠欲」そして「性欲」。CMで流れて物議をかもした大勢の男女が絡み合うシーン。CGではなく750名の老若男女が実際に演じているらしいけど、要するに見せたかったのはこのシーンからラストまでなんだと思う。ネタバレになってしまうので詳しく書けないけど、極端に言えばこれは性欲の話で、歪んだ恋愛の話なんだと思う。

パリの街で出会った赤毛の少女の香りに魅せられて、究極の香りを作り出し保存することのみに執着する人生。だけど結局香りに魅了されたということは彼女に欲情したということ。3大欲は動物にだってあるわけで、人間だけが芸術や香りなど美的なものに感動して心を満たすことができる。それも「欲」。グルヌイユはある日、自分に全く体臭がないことに気付き(このシーン滑稽でもあり切なくもある(涙))自分の存在証明を残したいと思う。それも「欲」。欲がなければ生きていけないし、生きていてる意味がないので、必要なものではあるんだけど・・・。

グルヌイユは人並みはずれた嗅覚と美しい香りを作り出す才能を与えられたのに、使い方を知らなかった。生い立ちに原因があるとは思う。でも、ある部分だけが突出していて、他のすべてが全く欠けているというのは結局、言い方は悪いけど異常者なのでしょう。そんな異常者で天才調香師の作り出す究極の香り・・・。 倫理的に考えればグルヌイユの行為を許すことは出来ないし、共感なんてもちろん出来ない。特に可憐で美しいローラが狙われているのを知れば憎さ倍増のはずなんだけど、お伽話的な語り口と映像のおかげで現実味がないせいか、何故かグルヌイユの野望の達成を見届たい気になってくる。究極の香りをかいでみたい気がしてくる。もちろん実際にあんな製法で作られてたらかぎたくなんてないけど!

グルヌイユ役のベン・ウィショーは良かった。異常な男の異常な人生を少し滑稽で、何故か少しかわいらしく感じるほどに好(?)演。でもグルヌイユに愛情は感じない。その辺りも絶妙。何故なら誰からも愛されなかった男の話だから。グルヌイユに調香技術を教えるパリの調香師役のダスティン・ホフマンが大仰な芝居でいい。白塗りで老いて才能の枯渇した感じを滑稽に演じていた。彼の最期もブラックでいい。ヒロインのローラ役レイチェル・ハード=ウッドが可憐で美しい。品もあって危うい感じなのも合っている。アラン・リックマンも良かった。太ったけど・・・。パリで出会った赤毛の少女も印象的。グルヌイユは幼い頃から香りや匂いに執着していたけど、青年になった彼が彼女の香りに魅せられたのは、彼女に欲情したのであり、歪んではいたけど恋だったわけだから、それが全ての発端なわけで彼女が魅力的であることはとても重要。

そして自分が本当に執着していたのが何だったのかに気づいた時、彼はある決意をする。その気づきのシーンが例のあのシーン。なので映画の中で見ればいやらしくはない。このラストも衝撃的だけどお伽的で良かった。監督は香りを映像で表現したと言っていたけど、香りにうっとりするような感じはよく伝わった。バラの花にしてもパリのバラとグラースのバラでは香りが違う感じもする。パリの魚市場の、香水店のむせ返るような、フランスの田舎の草木の匂い、そして2人の赤毛の少女のかぐわしい香り。映像も美しい。時にCGをアニメの様に使ったりして面白い。ローラとパリの少女の青いドレスと白い肌に赤毛が本当に美しい。

そしてサー・サイモン・ラトル&ベルリンフィルの演奏が切なく美しい。

好きか嫌いかと言われると微妙ではあるけど、お伽的というか作り物としての「映画」としては面白いと思う。もう一度見たいかというのも微妙。でも一輪のバラを手に青いガウン姿で窓辺に立つローラの映像をまた見たいと思ったりもする。フェルメールの「真珠の耳飾の少女」とか、そういう絵画のような美しさだった。上手く言えないけどそういう映画。


『パフューム』official site

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