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【cinema / DVD】『リバティーン』

2007-03-01 23:57:17 | cinema / DVD
これも見るつもりだったのに行けなかったのでDVD鑑賞。大好きなジョニー・デップが最初の3行を読んで出演を決めたという映画。映画のイメージとしてはこんな色・・・。

「17世紀イギリス。国王の寵愛を受ける天才詩人ロチェスター卿の破天荒な人生と愛を描く」というもの。冒頭、真っ暗な中白いブラウス姿のロチェスターが語りかけてくる。「どうか私を好きにならないでくれ」これが全てを物語っている。ロチェスター卿は実在した人物らしい。放蕩詩人とか吟遊詩人という職業(?)は良く知らない。王の前で卑猥な詩を吟じたことで謹慎中のロチェスター卿をロンドンへ呼び戻すところから始まる。このことからも分かるようにロチェスターは良い男ではない。女たらしで酒におぼれ芝居に興じ、王すら見下した態度で放蕩の限りをつくす。彼の才能を利用して、まだヨーロッパ内で力の弱かったイギリスの、というか自身の地位を守ろうとする王にも迎合しない。俗物である王に媚びへつらわないヒーローに描こうと思えば放蕩してても魅力的になるはず。でもそうではない。魅力的だけどどこか居心地が悪い・・・。楽しそうではないし、楽そうでもない。

悪い男というのはある意味魅力的。誰でも権力に反発したい気持ちはあるし、自由奔放に振舞いたいと思うと思う。でも、なかなかできない。だから誰かがやってくれたら愉快だったりするかも・・・。でも、そういう映画でもない。ヒーロー映画ではないから。大好きなジョニー・デップが演じているにもかかわらずロチェスターを好きにはなれなかった。でも、それこそ冒頭で彼自身が望んでいたこと。だとしたら悪の魅力を放ちつつも、好かれないように演じたジョニー・デップは素晴らしい。

ある日ロチェスターは1人の女優の才能に目を留める。彼女に芝居の稽古をつけ一流の女優にすることに情熱を傾ける。この女優リジーとの出会いと愛、そして別れが彼を破滅へと追い込むことになる。この女優を演じたサマンサ・モートンは好きな女優。自分の才能を信じる野心家で、最後には自分を貫く女性を好演していた。その潔さは見事で、よくあるこのタイプの男が真実の愛に目覚めた時、あっさり捨てる身勝手女にはなっていない。だから陳腐な映画にならなかったのだと思う。その潔さが堕ちて行く男との対比を浮かび上がらせている。

梅毒にかかり美しかった顔も膿みただれ、体も醜くゆがんだロチェスターを、それでも愛し献身的に尽くす妻エリザベスのロザムンド・パイクも美しく可憐。18歳でロチェスターに誘拐されて妻になった少女が、嫉妬や怒りや悲しみを知り、すべてを呑み込んで母のように彼を包み込む女性になった。彼女達がそれぞれ方向は違うけど、1人の女性として成熟し自立したのだとしたら、その資質をどんな形にせよ引き出したロチェスターはやはりただ者ではないのでしょう。その資質を見出したことがすでに彼の”美意識”を現しているということか・・・。なるほど(笑)

決して見ていて気持ちのいい映画ではない。自由奔放に振舞っている姿もどこか痛々しく、王や政府を強烈に皮肉る卑猥な芝居もやりすぎで、彼はあふれる才能を持て余し、自分の感情や性格を扱いかねているように思う。芝居に激怒した王に向かって「こうしか生きられない」と言い放ったのが本心か・・・。病をおして醜い姿を晒し大演説をする姿は圧巻だけど、死に向かう滅びの姿が実は一番美しく愛おしかった。

国王役のジョン・マルコビッチも相変わらず上手い。実は舞台でロチェスターを演じた彼が希望したことにより映画化されたのだそう。ロンドンの下町の薄汚さや、ロチェスターの田舎の邸宅の感じなんかは映画ならではの映像だけど、なんだかとっても演劇を見てる感じがしたのは元が舞台演劇だったからなのか・・・。

マルコビッチのロチェスターもいいかもしれないけど、滅びの美しさはジョニー・デップの方が絶対いいと思う!


『リバティーン』Offical site

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