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ものづくりのための研究ノート049:STAP細胞反証論文その後

2014-10-30 11:51:06 | ものづくりのための研究ノート
ちょっと前に、kahoさんこと遠藤高帆さんのSTAP細胞のNGSデータ解析の論文の話をブログに書いていたら、奇特な方(stwatchさん)からいくつか参考になるご意見や情報をいただいた。ありがとうございます!!。

ありがたいことに、その中の情報をたどっていくと、STAP細胞の由来はkahoさんの論文で示されていた以上に、複雑怪奇な状況になっているらしい。

詳しくは、以下の日経サイエンスのサイトhttp://www.nikkei-science.com/201412_034.htmlに対応表がでている。

(表は上記サイトより引用)

この表によると、STAP細胞関連でディポジットされている、2種のRNA-seq(Truseq, SMARTer), CHIP-seqデーターと、各種マウス、および疑われるコンタミの状況が一目でわかるようになっている。論文に発表された以上の情報がこの表にでており、ブログ上の情報とも違っているので、個人的には何らかの形でどんな解析を行ってそのような結論に至ったか知りたいものだ。

なおこの表からわかることは、

1)細胞ごとに、マウスの系統がそろっておらず、また同じ細胞でも、Truseq, SMARTer CHIP-seqによってマウスの系統が違っている(*)

2)記載しているマウスの種類も間違っているようで、一部はES細胞の混入GFP遺伝子については、論文でいわれていたOct4-GFP、CAG-GFP意外に、CAG-GFPとアクロシンGFP(**)がタンデムで入っているもの、さらにプロモーターが分からないものがある。

ということだろうか?

一方で、kahoの日記論文"Quality control method for RNA-seq using single nucleotide polymorphism allele frequency"、そしてこの表を見てみると次のような疑問点もでてくる。

1)T細胞リセプター(TCR)再構成はどうなったのか?

kahoの日記では、CHIP-seqのinputDNAを利用して、TCRの再構成が、CD45陽性細胞にみとめられるものの、STAP細胞、STAP幹細胞には認められないデーターが示されていた。しかし日経サイエンスの表では、CD45陽性細胞、STAP細胞、STAP幹細胞、FI幹細胞で、TCR再構成はないことになっている。あれっつ?いつの間にこうなったんだ?全部の細胞でなかった場合、ブログに述べた手法で、TCRの再構成がないといえるだろうか?もしかして追加で別のタイプの解析を行ったのか?

2)STAP(CHIP-seq)=ESといっていたけど、トリソミーはなくてよいのか?

そんなものかもしれないが、kahoの日記で、CHIP-seqの―データを用い、STAP細胞=ES細胞といっていたけど、CHIP-seqのSTAP細胞に、ES細胞で見られやすいというトリソミーがなくてよいのか?

3)kahoさんの論文で使われているRNA-seqのデーター一部はSMARterで、一部はTruseqだったのだ。

細かなことですが、STAP細胞関連のRNA-seqには2種類あって、一つはNature論文に使われているTruseqというキットをつかったもの、もう一つはデーター公開のみのSMARTerというキットをつかったものである。トリソミーがみつかったのはSMARTerの方のSTAP細胞で、Truseqの方はないとか。論文発表上ある程度有意な差を出さないといけないという制約があるのだとは思いますが、データーのセレクション方法としては多少unfairな気もします。

いずれにせよ、NGSの素人が手を出せないような感じの複雑な状況であることが、わかってきた。

(*)マウスも種差は結構あるから、系統がそろっていない実験、特に遺伝子発現解析なんかは全く持って意味をなさない。気が付かなかったというのも驚きだし、気が付いてやっていたなら。。

ちなみにRNA-seqでもプロモーターまで、精度よく同定できているのはすごいと思う。個人的にはどうやったのか知りたい。

(**)タンデムになっているとは普通思わないから、若山先生が最初に解析を依頼した放医研の研究者が間違ったのもわからなくはない。この点kahoさんはすごいと思う。

(追記)2016年3月1日追記。
個人的にはもはや興味を失っていたのだけれど、未だにこのブログのSTAP関連の項目を目にされている方が多い様なので、追記しておく。

2015年9月24日同様の趣旨からなる論文をNatureが掲載した。

1報目"Failure to replicate the STAP cell phenomenon"はボストンを中心とした幹細胞分野の大御所たちのチームによるもの
2報目"STAP cells are derived from ES cells"は理研のグループによるもの

の二つで、1はほぼ全てのSTAPのprotocolを検証し、作成できないことを示すとともに、バイオインフォマテッィクスを利用してSTAP細胞とされていたものに、ESが混ざっていることを証明したもの、2もバイオインフォマティックスを用いてESのまざりを証明したものである。

STAPの論文は途中から基本的に無理筋な感じを呈してきたが、これで完全に決着がついた。残念ながら、おそらく誰かがES細胞を混ぜて虚構の細胞を作ったことになる(結局それが誰かわからないのであるが。。)。ただこの一件で日本のサイエンスに大きな傷跡が残り、一人の偉大な科学者を失ったことは悔やまれる。


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