あなたにもできる!ハーバード留学!!~アラフォーからのボストン留学体験記

アラフォー研究者のボストン留学体験ブログ。
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アラフォーからのハーバード留学英語編051:ちょい気分がいまいちな時にHow are you?っていわれたら?

2014-03-29 12:31:27 | アラフォーからのハーバード留学英語編
How are you?って聞かれた時に何と答えるか?
確かに中学の英語教科書的には、
Fine thank you, and you?
なんでしょうが、さすがにこれもそのまま言っている人はすくない。
イケイケの時は

Good, Good, thank you for asking. How are you?

まあまあの時は

Good, how are you?

Ok, how are you?

ていうことが多いですね。

教科書的なFine, and you?
もどっちかというと、まあまあっぽい感じ。イケイケでいえば別でしょうが、まあそこまでしなくても。

そして問題は、イマイチな時。。(*)
定番は
Not bad!
(悪くはないね)
ですが、
So far so good!
(いまんとこはいいね)てのもあります

うちの研究室では、こんな時
Still alive!
(まだ、生きてるよ!)ていうのが流行っています(**)。
割とジョークっぽくみんな使っていますが。。

ちなみにフランス人が言い出したので、フランス語でどういうのか聞いたら、しばし考えて
Tourjours en vie.って言ってました。文字通りですが、ホンマかいな。。

さらにちょっと考えて、
Je suis pas mal.
くらいかなとも。

まあNot Bad!ってことでしょうか?
ちなみに昔Pas Malって名前の手ごろでおいしいのビストロが近くにありました(残念ながら今は閉店しているようです)。Not Badってレストランの名前としてどうかなとも思うのですが、フランス語だとどちらかというと良い意味のようですね。

あるブログによると
「もう一つフランス語の特徴的な表現として、良い(=Bien)と悪い(=Mal)を使う表現が挙げられます。これは、フランス語を母国並みにしゃべる留学生に教えて貰ったのですが、「良い」と言う場面で「悪くない(Pas mal)」というと途端にフランス語っぽい表現になるのです。たしかに、「これ良いね(C'est bien)」より「これは悪くない(C'est pas mal)」の方がフランス人っぽいのです。ひねくれ者と言うか、全面的に賛成するのを拒んでいるかのようです。もしくは少しは批判的精神をもたないと頭が悪いと思われると思っているのかもしれません。とにかく、NOと言わない日本人と『良い』と言わないフランス人は対極にいるかのようです。」

もしかするとシニカルなフランス人的には、still aliveも超イケイケというくらいの意味だったのかも。。

(*)先日病院に行った時に、乗り合わせたエレベータに警備員さんが入ってきて、患者さんにつ習慣で"How are you doing today?"といってました。さすがに患者さんも"Fine!"とも言えず、押し黙っていました。

(**)ゾンビかいな。。

ものづくりのための研究ノート030:STAP幹細胞の遺伝子解析で理研プロトコール大丈夫?

2014-03-28 11:59:25 | ものづくりのための研究ノート
前のブログ

2)何をもってB6,B6X129由来と判断したのだろうか?B6=Oct4GFP遺伝子、B6X129=(CAGプロモーター)GFP遺伝子の存在であろうか?

という疑問を投げかけた。

本日の日経バイオテクオンラインの宮田満さんのメルマガ(Wmの憂鬱、15年も続いたドラッグ・ラグを医師主導治験が打破する)で、ちらっと述べられていた情報でだいぶ謎が解けた。

なんでもSTAP幹細胞のゲノム解析の前の予備解析として行ったPCRで、GFPの入っている場所を特定し、マウスの系統が違うことがわかったらしい。つまりGFPのプロモーターの部分をターゲットに、ゲノミックDNAをPCRしたということのようだ(*)。

理研のSTAP細胞プロトコールによると C57BL/6 carrying Oct4-gfp(29 of 29), 129/Sv carrying Rosa26-gfp (2 of 2),and 129/Sv× C57BL/6 carrying cag-gfp(12 of 16)とある。 これからするとOct4, CAG,Rosa26配列をターゲットにPCRし、どのバンドがでるか見たのでしょうね(*)。Rosa26がでたなら129、Oct4ならB6、CAGならF1マウス由来というわけだ。この実験はすごく簡単なので(2日もあれば十分)、STAP幹細胞の存在が疑われた段階でこの実験はやっていてもおかしくはない。若山先生はあの記者会見をした段階で、すでやっておられたのではないだろうか?(**)

それはさておき 理研プロトコールの上記部分は、実際は

We tested the following three different genetic backgrounds of mice for STAP stem cell establishment from STAP cell clusters, and observed reproducible establishment: C57BL/6 carrying Oct4-gfp(29 of 29), 129/Sv carryingcc Rosa26-gfp(2 of 2), and 129/Sv×C57BL/6 carrying cag-gfp(12 of 16)

(我々は次のような異なる3系統の遺伝的バックグラウンドのマウスを利用しSTAP細胞塊からSTAP幹細胞が樹立できるかどうか検討し、再現性よい樹立が認められた:Oct-4-gfp遺伝子をもったB6(B57BL/6)(29分の29)、Rosa26-gfp遺伝子をもった129(129/Sv)(2分の2)、cag-gfpをもったF1(129/Sv×C57BL/6)(16分の12))

というSTAP幹細胞の樹立にかかわる部分の文章である。ここの129/Sv carryingcc Rosa26-gfp(2 of 2)でできたとされるSTAP幹細胞の2つが、実は今回のニュースでわかったB6とF1由来の細胞ということなのだろうか?もしそうなら、少なくともこのSTAP幹細胞の樹立効率に関する記述は訂正しないといけないんだろうな。。論文だけでなく、理研プロトールもどこまで大丈夫なんだろうか??理研プロトコールは出さない方がよかったというか、きちんとこのあたり検証してから出した方がよかったのではないか?

(*)inverse PCRでSQしたのかもしれないが、もっと簡単にFoward primerがOct4,Rosa26,CAGのC末付近、Reverse primerをGFPのN末付近で設定してPCRした?
この”Rosa-gfpマウス由来”のSTAP幹細胞でキメラマウスは作らなかったのだろうか?できてくるマウスの毛色をみればおかしいことが一目瞭然だと思うけれど。

ちなみに別系統だったということで、さらなる解析は不要と、もはやゲノム解析はされないのだろうか?個人的にはOct4-gfp&cag-gfpのES細胞と一緒にゲノム解析して、この怪しげな2種のSTAP幹細胞がES細胞なのか違うのかをはっきりさせてほしい。

(**)記者会見で若山先生の悲壮な顔が思い出される。それまで強気だったのに、急に主張を変えられたのは、こんな予備実験をされて、何らかの感触をつかんでおられたのではないだろうか?

(追記)2016年3月1日追記。
個人的にはもはや興味を失っていたのだけれど、未だにこのブログのSTAP関連の項目を目にされている方が多い様なので、追記しておく。

2015年9月24日同様の趣旨からなる論文をNatureが掲載した。

1報目"Failure to replicate the STAP cell phenomenon"はボストンを中心とした幹細胞分野の大御所たちのチームによるもの
2報目"STAP cells are derived from ES cells"は理研のグループによるもの

の二つで、1はほぼ全てのSTAPのprotocolを検証し、作成できないことを示すとともに、バイオインフォマテッィクスを利用してSTAP細胞とされていたものに、ESが混ざっていることを証明したもの、2もバイオインフォマティックスを用いてESのまざりを証明したものである。

STAPの論文は途中から基本的に無理筋な感じを呈してきたが、これで完全に決着がついた。残念ながら、おそらく誰かがES細胞を混ぜて虚構の細胞を作ったことになる(結局それが誰かわからないのであるが。。)。ただこの一件で日本のサイエンスに大きな傷跡が残り、一人の偉大な科学者を失ったことは悔やまれる。

ものづくりのための研究ノート029:朝日新聞での3月26日の東海(日本海)報道は問題では?

2014-03-27 14:02:18 | ものづくりのための研究ノート
昨日北朝鮮が再度、日本海に向けてミサイルを発射した。これ自体もこまったことなのだけど、その内容を報道した際の日本海の呼び方に再度ギョッとしてしまった。

韓国側の報道をそのまま伝えた形をとっているという理由のかもしれないが、朝日新聞やロイターなど一部の報道機関は東海(日本海)と報道していた(*)。さすがにNHKは日本海と報道している。韓国側に配慮して日本海(東海)というならばまだしも、東海(日本海)はかなりまずいのではないかと思ってしまう。

海外にいると、同じアジア出身ということもあり、価値観が近いせいもあって、日本人、韓国人、中国人などとは共感できることも多く、気持ちの良い人たちも多い。本音で付き合っている個人レベルでは、こういった問題を取り上げることは不可能である。だからこそ、国とか国を代表する報道機関が、立場上きちんと言っておかないといけない主張というのがあるのではないだろうか?(**)

あまりナショナリステッィクな風潮をあおったり、国の間の摩擦を大きくするのは問題であるが、歴史的に見ても、また日本政府の見解を踏襲するという意味からも、日本の報道機関が東海(日本海)と報道することはいささか理解に苦しむ。朝日新聞のサイトでの報道はURLがhttp://www.asahi.com/international/reuters/CRWTYEA2O08K.htmlとあり、ロイターの記事をそのまま訳しただけの不注意な事象なのかもしれないが、それはそれで残念な気がする。意図的ならば、(最近はやりの)一線を越えたこと(***)なのではないだろうか?。


(*)例えば朝日新聞は以下のように報道(朝日新聞デジタルより引用)

北朝鮮が「ノドン」2発を日本海に発射、日米韓に反発か
2014年3月26日15時25分
[ソウル/ハーグ 26日 ロイター] - 日本と韓国の当局によると、北朝鮮は26日未明、東海(日本海)に向けて「ノドン」とみられる中距離弾道ミサイル2発を発射した。北朝鮮がノドンを発射したのは約4年ぶり。

 1発目は同日午前2時35分に発射された。韓国軍司令部の当局者は、ミサイルは約650キロメートル飛行し、東海に落下したと明らかにした。ノドンの最大射程は約1300キロメートルで、日本に到達可能な能力を持つ。

 ノドンの発射は、オランダ・ハーグでの日米韓首脳会議や米韓合同軍事演習のさなかに実施された。また発射された26日は、4年前に韓国哨戒艦沈没事件が起きた日でもある。北朝鮮は過去2カ月、短距離ミサイルを複数回にわたって発射していた。

 韓国国防省の報道官はミサイル発射について、ソウルで記者団に対し「国連安保理決議への明らかな違反であり、韓国と国際社会に対する深刻な挑発だ」と非難。一方、日本の岸田文雄外相は衆院外務委員会で、北京の大使館ルートを通じて北朝鮮に厳重に抗議したことを明らかにした。

 ただ、菅義偉官房長官は今月30日、31日に予定されている日朝局長級協議に関しては、中止は考えていないとし、日朝政府間協議は拉致問題という人道上重要な問題を扱う場であるとともに、ミサイルや核といった安全保障上の懸念もとりあげることのできる機会だと指摘、「わが国の立場をしっかり主張する機会にしたい」と述べた。

同じニュースをNHKはさすがに日本海と報道している。

NHKのサイトより引用)
北朝鮮 日本海に向けノドン発射か
北朝鮮は、26日未明、日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射し、韓国国防省は、中距離弾道ミサイル「ノドン」の一種と推定しており、発射の狙いなどについて分析を進めています。

韓国国防省の当局者は、北朝鮮が、26日午前2時35分と42分の2回にわたり、ピョンヤンの北方から、日本海に向けて弾道ミサイルを発射したことを確認したと明らかにしました。
ミサイルはおよそ650キロ飛行して日本海に落下したということで、中距離弾道ミサイル「ノドン」の一種と推定されるとしています。
韓国政府は、現在、発射された弾道ミサイルの詳しい種類や、発射のねらいについて、分析を進めています。

(**)アメリカに来て一年。この国は自分の主張や立場はきちんと表現していかないと、わかってもらえないということを実感する。逆にそれを行わないと、主張になにかやましい点があると理解されたり、そもそも存在が無視される。アメリカのスタンダードで、国際社会の多くが動いている以上、やましいところがないのであればきちんと主張してほしい。このことは、長い目で見ると日本が国としてどうみられるかにかかわってくる。それは、私たちのように、国の外で働いている人の生活に如実に影響してくることは想像に難くない。

(***)またSTAPネタになっているのかも。。

(2014年10月16日)最近特に朝日新聞変だなと思っていたが、根っこは深いところにあったらしい。いろいろな問題が最近出てきた。功罪あるといったところだろう。これを機に、膿を出し切ってほしい。

ものづくりのための研究ノート028:STAP細胞とSTAP幹細胞とES細胞をもう一度整理したくなる事態に

2014-03-26 11:23:34 | ものづくりのための研究ノート
本日メディアが一斉に、若山先生のところにあったSTAP細胞(実際はSTAP幹細胞)の遺伝子解析の結果を報じた(以下参照*)。129由来のマウスから作成したはずのSTAP幹細胞が、実際はB6由来もしくはB6X129のF1マウス由来である。このことはSTAP細胞もしくはSTAP幹細胞の存在をダイレクトに否定するものではないが、限りなくSTAP幹細胞というものがES細胞なのではないかという疑念を抱かされる結果である(**)

疑問点としては次のようなものがあげられる。

1)若山先生のところにある129由来の「STAP幹細胞」(実際は違ったが)を作製した時に、B6もしくはB6X129由来のES細胞を彼らは持っていたのだろうか?

2)何をもってB6,B6X129由来と判断したのだろうか?B6=Oct4GFP遺伝子、B6X129=(CAGプロモーター)GFP遺伝子の存在であろうか?

3)実際にこれらのSTAP幹細胞=ES細胞であることをいうためには、コンタミしている可能性のあるES細胞の遺伝子解析(ポジコン)および全く関係のない細胞の解析(ネガコン)も同時に行って、二つが一致することを示さないといけない気がする。そこまでの解析はされているのだろうか?もしされていなければ、歩留まりに終わるかもしれない。(***)

4)昨日のブログでも述べたように、STAP幹細胞=ES細胞であることは、STAP細胞=ES細胞であるということ意味しない。Chip-seqのデーターからすると、B6X129由来のSTAP幹細胞はES細胞に近いが、STAP細胞はまた違った細胞の様である。これは彼らがNatureのレター論文で述べていることとも一致する。するとこのSTAP細胞はいったいなんだったのだろうか?CD45+細胞とES細胞が絶妙な配合比で混ざっているのということなのだろうか?

5)若山先生は以前「私はSTAPからSTAP-SCを複数回樹立しました。混入がその度に起こるなんてことは考えづらいです。さらに、私はSTAP-SCを129B6GFPマウスから樹立しました。その当時、我々はその系統のES細胞を持っていませんでした。」というコメントをされていた。これからすると若山先生は、B6X129由来のSTAP幹細胞も持っておられて、それが一番信頼性の高いサンプルではないかなと思う(その当時ES細胞がなかったので)。なぜそのB6X129由来のSTAP幹細胞を解析に出さず、129由来のよくわからないSTAP幹細胞を解析に出したのだろうか?

系統の違うマウスの実験が論文の中に、さりげなくちりばめられていて、怪しいということは指摘できても、完全に否定することはかなり難しい状況になっている。

今となっては限りなくSTAP細胞が実施にあるという可能性は低いと思うが、STAP細胞およびSTAP幹細胞という現象があるのか?ないのか?というところは、きちんと科学的に黒白つけてほしい(***)。ただ真実はなかなか見えてこない。

ちなみにB6X129のhybrid ES細胞ってあまりみないなとおもっていたけれども、MITのサイトによると、If you do not care about strain background for your mice, I strongly recommend using the 129/B6 F1 hybrid line called V6.5.とのべられているので、有用なES細胞株なんですね。tetraploid complimentationもこの系統でないとできないようです。不勉強でした。なんで、若山先生はB6X129の系統のES細胞を持っていなかったんだろうか?

(*)単純な間違いで、B6もしくはB6X129由来のSTAP幹細胞を渡していましたという逃げもできなくはないが、129系統のSTAP幹細胞はできなくて、B6もしくはB6X129由来のES細胞をつい渡してしまったのではないかと疑いたくなってしまう。ただ遺伝子解析だけでこの二つのどちらかの状況下いうのはかなり難しい気もする。

(**)大手メディアはどこも以下のような感じである。
もともと混乱する命名だったのだが、STAP細胞は長期培養できないので、解析に出したのは培養できるSTAP幹細胞である。このことは前からわかっているはずなのに、大手メディアは混同して伝えている。ちょっとわかっていたのはなぜかスポーツニッポンと毎日新聞。。
以下産経新聞と毎日新聞のサイトより引用。

保存細胞にも疑念 実験と別種のマウスと判明
2014.3.25 21:16 [先端技術](産経新聞より)

 理化学研究所は25日、小保方晴子・研究ユニットリーダーがマウスから作製したとしていた新型万能細胞「STAP細胞」のうち、2株の遺伝子を共同研究者が調べたところ、実験に使用しなかったはずの別の種類のマウスの細胞だったことが分かったと明らかにした。実験途中に何らかの理由で細胞がすり替わった可能性も浮上してきた。

 マウスにはさまざまな種類や系統がある。理研によると、共同研究者の1人の若山照彦山梨大教授は、小保方氏に129系統という種類のマウスを渡してSTAP細胞の作製を依頼。小保方氏はこのマウスの細胞を弱酸性溶液で刺激し、STAP細胞の塊を2株作製できたとして若山教授に渡したという。

 若山教授はこの細胞塊を凍結保存していたが、論文の画像不正疑惑などの問題を受け、改めて遺伝子を調べたところ、129系統ではなく、実験には使わなかったはずのB6とF1という別種のマウスの細胞だったことが判明。理研は若山教授から連絡を受け調べている。B6、F1、129系統のマウスはいずれも万能細胞の一種である胚性幹細胞(ES細
胞)の作製に広く使用されている。


STAP幹細胞:別マウスの遺伝子検出 山梨大の保存分

毎日新聞 2014年03月25日 21時58分(最終更新 03月26日 00時30分)より

 STAP細胞論文の共著者の一人が保管するSTAP細胞から作った細胞を簡易的に解析した結果、STAP細胞を作るため使ったはずのマウスの遺伝子のタイプが確認されず、別の系統のマウスしか検出されなかったことが、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の関係者への取材で明らかになった。この細胞は、英科学誌ネイチャーで発表した論文には使われていないが、CDBはSTAP細胞の真偽を確認するため、論文に使った細胞を独自に解析する検討を始めた。

 解析したのは、STAP細胞から変化させて作った「STAP幹細胞」。iPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)のように増殖する性質があるとされる。一方、STAP細胞の再現実験が研究チーム以外で成功していないことなどからES細胞の混入も疑われている。
 解析した細胞は、当時CDBに所属していた若山照彦・山梨大教授が、小保方晴子・理研研究ユニットリーダーに「129」という系統のマウスでSTAP細胞を作製することを依頼し、小保方リーダーが作製した細胞を基に作った。若山教授が山梨大へ移籍後も冷凍保管していた。

 STAP幹細胞ではSTAP細胞から変化後も、元のマウスと同じ遺伝子のタイプが確認されるはずだが、CDB関係者によると、山梨大が保管していたSTAP幹細胞2株を解析した結果、「129」ではなく「B6」など別の2系統のマウスが検出された。この2系統のマウスはES細胞の作製によく使われるという。

 若山教授は、この細胞などを第三者機関に送り、詳細な解析を依頼している。【須田桃子、八田浩輔、斎藤広子】

(***)本当に最初からだますつもりだったならば、こんなに安易な作為を最初からするだろうか?一部本当のことを話すというのが有名な詐欺師の手口の一つであるが、どこかに本当な部分があるのではないだろうか?この問題にずっととらわれている所以である。

(追記)2016年3月1日追記。
個人的にはもはや興味を失っていたのだけれど、未だにこのブログのSTAP関連の項目を目にされている方が多い様なので、追記しておく。

2015年9月24日同様の趣旨からなる論文をNatureが掲載した。

1報目"Failure to replicate the STAP cell phenomenon"はボストンを中心とした幹細胞分野の大御所たちのチームによるもの
2報目"STAP cells are derived from ES cells"は理研のグループによるもの

の二つで、1はほぼ全てのSTAPのprotocolを検証し、作成できないことを示すとともに、バイオインフォマテッィクスを利用してSTAP細胞とされていたものに、ESが混ざっていることを証明したもの、2もバイオインフォマティックスを用いてESのまざりを証明したものである。

STAPの論文は途中から基本的に無理筋な感じを呈してきたが、これで完全に決着がついた。残念ながら、おそらく誰かがES細胞を混ぜて虚構の細胞を作ったことになる(結局それが誰かわからないのであるが。。)。ただこの一件で日本のサイエンスに大きな傷跡が残り、一人の偉大な科学者を失ったことは悔やまれる。

ものづくりのための研究ノート027:「kahoの日記:STAP細胞の非実在性」はどこまで信じてよいのか?

2014-03-25 11:59:16 | ものづくりのための研究ノート
今さらな話題で、今まで結構持ち上げておいてこの題名なの?となるところですが、ちょっと前にイスラエルハイテクベンチャーCEOの方が「アンチ・小保方STAP細胞の匿名ブログ『kahoの日記:STAP細胞の非実在について』のエセ科学性」というショッキングな題名でブログを書かれて話題になっていました。内容的にはいささか残念なところもあったので(*)、それに対抗するわけではありませんが、自分がハイテクベンチャーCEOだったら書いていただろう、kahoさんの日記への疑問点をいくつか述べてみようかなと思います。

本題に入る前に、Kahoさんの分析の一番の功績は前にもちょっと書いたように、Chip-seqのデーターにつかわれている細胞の由来が遺伝的バックグラウンドのことなるマウス由来であることを指摘されている点だと思います(**)。

ただこのことはデーターをdepositしてあるNCBIのサイトの情報をみれば以下のように、すぐわかることでした。

CD45+細胞:Oct3/4::gfp C57BL/6
ES細胞:C57BL/6 x 129/sv
STAP細胞:C57BL/6 x 129/sv
STAP幹細胞:C57BL/6 x 129/sv

ただふつう論文をさっと読むと、前提としてマウスの遺伝的バックグラウンドはそろっているものとして読むので、気が付きにくい点です。この部分をあえて分析して、多くの人にその事実を気づかせたということが一番大きいと思います。
こういう一部だけソースの違う細胞がつかってあるとか、Figごとに異なる細胞が使われてい場合、データーの出し方としてはunfairだなという感じがします。論文をまとめるうえで致し方ない状況があったのかもしれませんが、実験やっている人だとこういう形式の論文を見ると再現するのに苦労する結果(***)なのではないかなとうすうす感じます。なのでこの事実がわかった時点でもともとあった信頼性が半分以下になった感じですね。

Kahoさんのそれ以外の分析、TCRの再構成や細胞の由来の問題については、半分になった信頼がさらにどこまでおちるかというところにかかわっているだけで、個人的にはそれほど意義ある問題ではないと思っています。

そういったことを前提として、kahoさんのデーターをちょっといじってkahoさんの主張1)TCRの再構成、2)STAP細胞=ES細胞に対する疑問点を述べてみたいと思います。

1)TCRの再構成は本当にないいってよいのか?
これは前のブログのものづくりのための研究ノート026:STAP細胞にBCR再構成もないのか?のところでも同様の疑問が浮かんだのですが、

例えばSTAP細胞にTCRの再構成がないことを示すデーターの一つであるTCRbeta鎖の情報をみてみましょう。
TCR-beta
http://genome.ucsc.edu/cgi-bin/hgTracks?hgS_doOtherUser=submit&hgS_otherUserName=stopstap&hgS_otherUserSessionName=TCR%20beta%20rearrangement%20test
をみると次のような図1が出てきます。



この図はTCRベータ鎖遺伝子の部位のChip-seq input DNAのリードを、ポジコンのDPT細胞対FetalLiver(FL)細胞(1番目)、CD45対ES細胞(2番目)、STAP細胞(Low pH treated CD45+細胞)対ES細胞(3番目)、STAP幹細胞対ES細胞(4番目)で比較した図になります。この図からはこの部位のCD45+細胞のリード数がES細胞と比べて極端に少ないこと、またポジコンであるT細胞(DPT細胞)は血液幹細胞(FL)細胞と比べてリード数が同様に少なくなっていること、STAP細胞やSTAP幹細胞に関してはES細胞と比較してそのまでのリード数の差がないことが読み取れます。
このことから、STAP細胞やSTAP幹細胞ではTCR遺伝子の再構成がないと考えられるというのが、kahoさんの主張です。

ただこのCD45+/ES細胞で見られたリード数の差は本当にTCR遺伝子の再構成だけの影響なのかということは、きちんと検証しなければいけません。そうです恐ろしいことにこの二つの細胞は由来するマウスが違うためです。
このTCRベータ―鎖がある6番染色体全体をみてみましょう(上のUCSCサイトでZoom outしてみましょう)
すると次のような図2が現れます。



これをみるとCD45+/ES細胞の間のリード数が極端に異なる部位が、いくつもあることがわかるでしょう。つまりTCRと関係のない部位でもリード数が同程度異なる部分がいくつもあるのです。おそらくこれは、マウスの由来の違いでしょう。もしかするとTCRベータ鎖のところで認められたリード数の差もTCR遺伝子の再構成によるものでなく、マウスの由来の違いによるものかもしれません。またSTAP細胞とSTAP幹細胞はこの6番染色体のリード数のパターンをみるとちょっと違う細胞なので、もしかするとfairなコントロールをとると、STAP細胞にはTCR遺伝子の再構成が認められるという結果が得られるかもしれません。

2)STAP細胞=ES細胞なのか?
もう一つのKahoさんの分析の面白い点は、CNV(コピーナンバーバリエーション)という指標を用いて、CD45+細胞、STAP細胞、STAP幹細胞、ES細胞、TS細胞、FI幹細胞という細胞間の距離を導き出し、以下のように距離が一桁という少ない数字のため、ES細胞=STAP細胞=STAP幹細胞という結論をだされていることです。


      ESC  STAP-SC  STAP FI-SC TSC
CD45+  245   270    277  182   669
TSC    420   459    360  371
FI-SC   17    6     17
STAP   0     2
STAP-SC 6
ESC


ただこれも不思議なのは、図2のような染色体全体のリード数のパターンをみていると、CD45+細胞とES細胞は極端に違うこと(2番目)、またES細胞とSTAP幹細胞(4番目)は同様のパターンであることはわかるのですが、STAP細胞(3番目)に関してはCD45+細胞とES細胞もしくはSTAP幹細胞細胞の真ん中(というか足して2で割った)のような特徴があります。図2でも目で見てわかる程度にパターンが違います。またこの傾向はほかの染色体でも同様です。ここまで違うのに、CNVだと差がなくてよいのか?

見にくいのでここにも図2入れときます


つまりChip-seq input DNAのオーバーオールのリード数のSTAP細胞=ES細胞というCNVの結果と相関がなく、どちらが信頼性のある議論なのかという疑問がわきます。
(たしかに図2で見られるようなリード数だけの議論はDepthが少ない場合危険なのかもしれないけれど。。素人なんでこれ以上の議論は無理ですね)

もちろんここでの議論はUCSCにkahoさんがあげられたデーターをもとにしており、その分析やUCSCサイトで利用できるデーターが不十分でないことによるのかもしれません。またChip-seqのinputDNAのデータからいろいろなことがわかる可能性について指摘された功績も大きいと思います。ただ以上に挙げた理由から、上記2点についてはいささか言い過ぎのところもあるのではないかなと個人的には思っています(****)。

どこまで信じれるのか?については、答えになっていませんが、kahoさんのサイトのある人のコメントにもありましたが、「ここから先はやはり各々で解析して確かめるのが美しいスタンスでしょうね。」

私もちょっと勉強がてらいくつかのデータを分析しております。マシンのパワーがいまいちなので、なかなかタイムリーにはいきませんが、何か面白いことがわかればレポートしてみたいですね。こうご期待。

(*)ベンチャーのプロモーションのためなのかなと思いきや、重箱の隅系なcriticismでちょっと残念でした。せっかくハイテクベンチャーなのだから、kahoの日記への単なるcriticismだけでなくご自身の独自の分析をブログでだされるとビジネスにつながったのではないかな。ただ知名度を上げるには寄与したと思うので、50点かな。辛口かもしれませんが。。

(**)よく考えるとデーターをダウンロードするときに、kahoさんはマウスの由来が違うことに気付いたと思うのだけれど、確信犯で解析したのかしら?確かに、単にデータベースの記載から遺伝的バックグラウンドの違うマウスを解析しているというよりは、解析してもったいぶって情報を出した方が注目は集まると思うし、現に注目が集まった。

(***)あくまでも一般論ですが、チャンピオンデーターなどのケースが多い気がします。こういうデーターを見たら、よっぽどの理由(レビューワーからやってみろと言われたなど)がない限り、触らないのが無難なのですが、STAPはインパクトがありすぎたせいか触り続けています。吉村先生もなかなかやめられなかったからな。そろそろやめにしないと(笑)。
最近ものづくりのための研究ノートがこればかり。。本来はコアな技術論とかを書いてみたいのだけれど。。

(****)ここでの議論もkahoさんがUCSCに挙げられたデーターをもとに行いました。あしからず。

(追記)2016年3月1日追記。
個人的にはもはや興味を失っていたのだけれど、未だにこのブログのSTAP関連の項目を目にされている方が多い様なので、追記しておく。

2015年9月24日同様の趣旨からなる論文をNatureが掲載した。

1報目"Failure to replicate the STAP cell phenomenon"はボストンを中心とした幹細胞分野の大御所たちのチームによるもの
2報目"STAP cells are derived from ES cells"は理研のグループによるもの

の二つで、1はほぼ全てのSTAPのprotocolを検証し、作成できないことを示すとともに、バイオインフォマテッィクスを利用してSTAP細胞とされていたものに、ESが混ざっていることを証明したもの、2もバイオインフォマティックスを用いてESのまざりを証明したものである。

STAPの論文は途中から基本的に無理筋な感じを呈してきたが、これで完全に決着がついた。残念ながら、おそらく誰かがES細胞を混ぜて虚構の細胞を作ったことになる(結局それが誰かわからないのであるが。。)。ただこの一件で日本のサイエンスに大きな傷跡が残り、一人の偉大な科学者を失ったことは悔やまれる。