今日は昼食を済ませてから散歩に出た。
昼下がりは風も強く吹かないし日差しが暖かいから気持ちがいい。
人の往来の少ないのもいい。
刈り取りが終わった田んぼの間道を落とし物を探しているかのように、
酸素ボンベを曳いて歩く自分の姿を想像するのもまた滑稽だ。
遠くに此方に向かってくる耕運機を見た。
私は道端に寄り何気なく運転席を見て驚いた。
なんと自称「奴隷のやっさん」が座っている。
顔をマスクで隠すようにしてキっと正面を見据えて私に気付かない素振りで通りすぎた。
噂ではやっさんは重病を患い、臥せっていると聞いていたので意外である。
耕運機は彼のビニールハウスの横で停まった。
降りてきたのはやはりやっさんだった。
太陽を時計代わりに働く鉄人を知る私には
目の前で痩せて杖を支えに歩く老人を見るのは衝撃的だった。
余計なお世話と言われそうだが大病を患いつつなお、田んぼや畑に手入れが
欠かせない農業とは過酷な家業である。
私が歩き疲れてぼんやり立ち止まっていると、
突然ハウスからやっさんが顔を出して私を見て「二ツと」意味ありげに笑い、再び首を引っ込めた。
私は見てはいけない物を見たように慌ててそこを離れた。
お わ り
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