原題は[ラサへの歩き方 祈りの2400㎞※1]中国映画である。
チベットの村人11人が聖地ラサ※2と
そして最終目的地カイラス山※3まで2400㎞もの距離を
なんと1年かけて五体投地※4で行く巡礼旅を描いた驚くべきロードムービーである。
ドキュメンタリー映画と見紛うがフイクションである。
BGMを一切使わず、場面と場面をショートカットで丹念に結んで
チベットの大自然の音や雄大さが見事に映像化されている。
出演者はすべて村人(演技は上手すぎるが)である。
彼らの演じるのは4000mを超える高地の何時もの自分とその暮らし。
ある時叔父が最後に聖地を巡礼したいと話したところから物語は始まる。
日常の暮らしより、さらに厳しい大自然の中を五体投地しながら聖地に向かう。
一行11人には老いた叔父の他、臨月の近い女もいるが誰にも躊躇いはない。
「巡礼は他人の幸せを願いつつ行う」功徳が得られる信じるからだ
彼らはいつも他人を思い、何も欲しがらず、
食が尽きると働き再び巡礼は続く、祈りを欠かさない。
正しく彼らは天空に暮らす善き人々である。
映画は進行する。女は無事出産をし、老人はカイラス山のふところで
息を引き取った。
遺骸の上空を鷲が舞うラストシーンが暗示的だ。
もう一度観たい心洗われる秀作である。
お わ り
※1 2400㎞ : 宗谷岬→沖縄に相当
※2 海抜3700mにあるチベット仏教の聖都
※3 標高5565mの独立峰四大宗教の聖地といわれる未踏峰
※4 両手・両膝・額を地面に投げ臥して祈る、仏教で最も丁寧な
礼拝の方法