ブログ記事:安倍首相の芦部憲法を知らない発言で再燃する自民党改憲案の問題 http://esquire.air-nifty.com/blog/2013/04/post-b7b2.html 今日はエイプリルフールだがまじめな話題を記事にしたい。 土曜日からツイッター上で、懐かしい名前が飛び交っている。 それは、憲法の芦部先生の名前である。 土曜日に、「安倍首相『有名な憲法学者』の名にポカン 『芦部信喜知らないって…』支持者もドン引き」という記事(*参照)がネットに流れたのだが、これにより、現行憲法の改憲を積極的に目指している安倍首相と野党民主党の小西議員との国会でのやり取りを知ることになった人が多いのではなかろうか。 このニュースを聞いて以来、私がしたツイートの内容を編集して今日は紹介しようと思う。 まず、この記事を見た私の直感は、「芦部先生を知らないで改憲とは片腹痛い。こんなあんぽんたんが首相なんだから日本に将来はない。」というものである。 既に、法曹関係者やその他多くの法律を勉強したことある人はツイッター上でも指摘しているが、芦部先生を知らないという人は、まともに憲法なんか勉強したことないことを意味する。 なぜならば、芦部先生は、現行憲法における現在の通説的見解を体系的に説明した学者であり、憲法の少しでもまじめに勉強をした人間であれば、芦部先生の名前を聞いたことがないということはまずもってあり得ないからである。 憲法を勉強したことがない人に、別の例を挙げて例えるならば、芦部先生を知らない改憲論者なんて、英語辞典のロングマン社を知らない通訳とか、日経新聞を聞いたことのないビジネスマンというくらいのレベル なのである。 さらに安倍首相は、小西議員の憲法13条の意味を問うた質問に、包括的人権規定であることすら応えられなかったというのであるから、お粗末であること極まりない。 この程度の話は、クイズ形式だとかいうが、クイズと言えるほどの高度な専門的知識でもなんでもない。 これに対しては、まず、安倍首相の学生時代は芦部憲法が存在しなかったなどと主張して、安倍首相が知らないことは問題ないとする声もあるが、これは明らかに失当である。 学生当時知らなかったとしても、安倍首相は、三権のうちの一つ、行政府の長であり、立法府の一員であるのだから、現時点において、現行憲法の通説的見解を知らないことを肯定する余地はない。 この一事をもってしても、現行憲法の通説的見解である芦部先生の名前くらい知っていても良いはずであるが、安倍首相は、このような立場に留まらず、積極的に改憲を主張する人物なのであるから、この程度の基本中の基本である知識は知っていて当然であることは言うまでもない。 にもかかわらず、安倍首相は、これらを回答できなかったというのであるから、経験則上、安倍首相が憲法を真摯に勉強したことがないであろうと推認されることは極めて自然なのであって、その点につき、批判を受けることはやむを得ない。 そもそも、憲法を改正するというのは現行憲法に問題点があると考えるからであろう。 そうであるならば、最低限、憲法の基本中の基本である芦部憲法がまとめる通説的見解、いわば、現行憲法の共通認識と知った上で、どういう問題があるから、どう変えるのかという議論がなされるのが通常である。 しかし、安倍首相の今回の発言は、現行憲法の通説的見解を勉強すらしていないことを示しており、現行憲法の共通認識も知らずに、改憲を主張しているという極めて危険な実態を示すものである。 何度もいうが、憲法をまともにかじれば、芦部先生の名前は当然出てくるのである。 次に、芦部憲法や13条のことを知らなくても、首相は憲法改正という判断ができれば良いから、ブレーンに細かいことは任せれば良いのであって問題ないという主張があったが、これも一見にして失当である。 何度もいうが、憲法13条が包括的人権規定というのは、憲法初学者でも知っていなければおかしい基本的な知識である。 国会議員は、立法府の一員として憲法に適合した法律を作ることがその職責なのであるから、この程度は知っていて当然といっても過言ではない。 にもかかわらず、このような基本的な知識を知らない人間が、憲法改正という重大な判断を的確に成し遂げるとは到底思えないのである。 安倍首相はまず改憲の議論する前に、憲法の通説的な本と言っても良い芦部先生の主張を理解し、その上で、芦部先生の主張に反論できるだけの勉強をした上で改憲を主張すべきであろう。 現行憲法を理解せずして、改憲すべき問題が正しく理解できるなどとは到底思えるはずがない。 今回の安倍発言は、いかに自民党の改憲案が稚拙であり、現行憲法の通説的見解や共通認識を無視したレベルの低いものであるかを再認識させてくれたという点では非常に有益なものであったといえるかもしれない。 そもそも、既に、弁護士の落合先生などが指摘しているとおり(参考として、togetter.com/li/421489、 http://togetter.com/li/420466 )、自民党の改憲案は、憲法が何たるものであるかを全く理解していない。 まず、憲法とは何かと問われれば、一言で答えると、憲法は国家を制約する原理である。 にもかかわらず、自民党改憲案の第12条は、「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」などと国民の権利及び自由を不必要に制約する表現をあえて使っているのである。 なぜ、現行憲法の公共の福祉という現在の人権衝突の調整規定を公益と公の秩序に置き換えなければならないのであろうか。 この規定は一つを見ても、自民党が現行憲法の共通認識を全く無視し、憲法が国家を制約する原理であるという基本中の基本が看過されていることは明らかなのであるが、その党の総裁の今回の発言は、さらにそれを強く印象づけるものであって、いかに自民党案が稚拙であるか明らかにするものと言えよう。 自民党の改憲案の稚拙さは指摘しだすときりがないので、今回はここまでで留めるが、芦部憲法に代表される現行憲法の共通認識を知らないし、無視しているから、このような恥さらしともいうべき稚拙な憲法案を掲げて、憲法改正などといえるのだろうと感じたのは、私だけではないだろう。 中にはツイッター上で、「人間が空気を意識する必要が無いように、憲法も問題が無い限り意識する必要は無いのでは。」などという主張をしてきた人がいたが、これが明らかに失当であることは一見して明白である。 現行憲法第12条が、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」と説くように、我々国民は憲法が保障する権利と自由について、常に意識しなければならない。 なぜなら、空気が汚染されて有害になってからでは遅いのである。 前述のように、公益と公の秩序で国民の権利を不当に制限することを容易にし、憲法97条を全部削除する自民党の改憲案は、我が国の貴重な空気を汚す中国のPM2.5と同じぐらい有害なのであって、国民はこの貴重な憲法の貴重な規定を国家権力がむやみに弄ることがないよう十分に警戒しなければならない。(これより、芦部信喜氏の著作本の紹介にて省略)
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*記事:安倍首相「有名な憲法学者」の名にポカン 「芦部信喜知らないって…」支持者もドン引き 2013/3/30 JCAST 「安倍総理、芦部信喜さんという憲法学者ご存じですか」 「私は存じ上げておりません」 2013年3月29日の参院予算委員会、民主・小西洋之参院議員の質問に、安倍晋三首相はこう答えた。さらに他の学者の名前を挙げて質問する小西議員に、安倍首相は「つまらないことを聞く」とばかりの笑みさえ浮かべていた。 「私は憲法学の権威でもございませんし、学生だったこともございませんので、存じ上げておりません」 憲法学ぶ上では必ず名前の出る学者 「芦部信喜」知らなかった安倍晋三首相 ところが安倍首相が「知らない」と断言した芦部信喜氏(1923~1999)は、近年の日本の憲法学者では最も高名な人物だ。日本の憲法学の第一人者だった宮沢俊義氏の弟子で、63年に東大教授になり、84年まで教えた。のち学習院大に移り、86年から92年まで日本公法学会理事長を務めた。92年に刊行した『憲法』(岩波書店)は、大学の憲法学の教科書として知られ、現在も版を重ねている。93年には文化功労者にも選ばれた。 以前には自民・片山さつき参院議員がツイッター上での憲法論議の際、「私は芦部教授の直弟子ですよ」と自慢してみせたことさえあるほどだ。片山氏は今も自身のブログに「芦部教授は、私が東大法学部を在学中の法学部長で、私が3年で外交官試験の2次にうかったときに、『3年で中退外交官にならずに、4年で国公を受けて、大蔵省に行きなさい!』と薦めてくださった恩義のあるかたです」と記している。 ちなみに安倍首相も法学部卒(政治学科)。憲法改正を唱える首相が、憲法学の「大御所」の名前を知らなかったことに、ネットでは失笑と落胆の声が相次いだ。 「法学部卒で憲法を論じるのに芦部信喜知らないって、ON知らずに日本のプロ野球語るようなもんだぞ」 「つか芦部を知らない程度に憲法に興味がないのにどうして改正だけはしたがるのかよく分からない 興味があったらまずは基本書読んだりして勉強するだろ」 「ちなみに、経済学をやった人がケインズを知らないってドヤ顔でいうレベルのこと」 「憲法知ってることの根拠として芦部を使った片山さつきに、お宅のトップ貴方の師匠である芦部知らないのに憲法改正唱えてるんだけどどう思う?って聞きたい(´・∀・`)」 安倍支持者からも、「残念」との声が上がる。 「安倍ちゃんは好きだし、自民を支持してるけど、芦部・高橋和之・佐藤を知らないっていうのは正直驚いた(中略)これくらいは教養で知って欲しかったな。まあ、今回のことで安倍ちゃんが不適だとは思わないけど、最低限フォローアップはこれからしてもらいたい」 もっとも小西議員の質問は、「芦部」以外の部分でも細かく憲法の条文を質すなど、まるで「クイズ」のような形で安倍首相の憲法理解を問おうとしたとして、産経新聞が批判的に報じたのを始め、不快感を持った人も少なくない。安倍首相自身も、「子供っぽいことやめましょう」「このやりとりに何の意味があるのか」「大学の講義ではない」などと不満を表した。小西議員のブログにも大量の批判コメントが寄せられ、半ば炎上状態だ。
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共通番号法案(マイナンバー法案)が、22日の衆議院本会議で審議入りした。共通番号制度は、所得や納税、年金などの受給情報を1つの個人番号で管理するものだ。
この法案は野田佳彦内閣が国会に提出していたが、昨年暮れの衆院解散で廃案になり、自民、公明、民主の3党で修正、改めて提出し直した。
安倍晋三首相は「国民の利便性向上や行政の効率化のため、早期導入する必要がある」と訴えている。政府は2016年1月からの運用を目指している。
私は共通番号制度の導入に異論はないが、今回の法案はとんでもないシロモノだと思っている。安倍さんの言う「国民の利便性」などは、ほとんど考えられていない。ただただ行政側が管理しやすくなるという“上から目線”の論理ばかりが先行している。
国民にしてみれば、共通番号導入により、多くのパブリックサービスを受けられるようになり、役所のムダな業務が減って行政コストが削減されるのでなくては意味がない。
番号制度で最も進んでいるスウェーデンと韓国は、税務、社会保障、住民登録、選挙、教育、兵役のすべてを共通番号で管理している。
私も20年近く前から「税金や社会保障だけでなく、運転免許証やパスポート、印鑑登録、さらには医療情報まで、1枚のICカードで管理するコモンデータベース法を構築すべき」と提唱している。
国民はこのICカードで、すべての行政サービスが受けられることになる。さらに、この共通番号を活用すれば、選挙の電子化も一気に進められる。政府もそのくらい発想を広げて将来的な拡張を多くの国民が参加して構想を練り直すべきだ。
今回の共通番号法案は「住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)をベースに活用する」ということになっているが、将来的な拡張を考えると、最悪の選択である。
そもそも住基ネットは、各自治体がいわゆるサイバーゼネコン(大手IT会社)の食い物にされてバラバラにシステムをつくった。ほとんど使われていないのはそのためだ。今回もサイバーゼネコンがまた暗躍して、カネだけかかってほとんど役に立たないモノを作るのだろうか。
共通番号のシステムは、「行政コストを下げて、国民の利便性を上げる」という目的を明確にして、その線に沿って全世界の英知を集めて作るべきだ。そのためにも、廃案となった法律を復活するのではなく、もう少し時間をかけてきめ細かく制定する必要がある。
というわけで、私は「この法案は絶対に通してはいけない」と、自民党にも資料を送って働きかけている。だが現在、自民党の国会議員らには、この問題を考える余裕がないようだ。
しかし、生活の利便性とコストに直接影響がある、という点においては憲法議論よりも大切な問題だという認識を彼らも持つべきだ。
急ぐ必要はない。この議論はもっともっと幅広くやらなくてはいけない。(大前研一のニュース時評)
追加記事:
共通番号法案 衆院で審議入り
年金の受け取りや納税などの手続きを簡略化するため、国民1人1人に番号を割りふる、「共通番号制度」の導入に必要な法案は、衆議院内閣委員会で実質的な審議に入り、甘利社会保障と税の一体改革担当大臣は、早期成立に協力を求めました。
「共通番号法案」、いわゆる「マイナンバー法案」は、年金や失業保険の受け取り、確定申告などの際に、国民1人1人に割りふられた番号を利用することで書類の添付を不要とするなど、手続きを簡略化するためのもので、政府は、平成28年からの制度の運用開始を目指しています。
「共通番号法案」は、27日の衆議院内閣委員会で、甘利社会保障と税の一体改革担当大臣らが趣旨説明を行ったあと、質疑が行われ、実質的な審議に入りました。
この中で甘利大臣は、「共通番号制度は、より公平な社会保障制度や税制の基盤となるものであり、情報化社会のインフラとして、国民の利便性の向上や行政の効率化に資するものだ」と述べ、早期成立に協力を求めました。
また西村内閣府副大臣は、制度の導入に伴って、個人情報が流出するのではないかという懸念について、「情報の利用範囲は法律で限定しているほか、独立性のある第三者機関で監視、監督を行う。不当行為に対する罰則も盛り込んでいる」と述べました。