記事:共通番号法案は廃案にして練り直しを サイバーゼネコンの食物にされては…
共通番号法案(マイナンバー法案)が、22日の衆議院本会議で審議入りした。共通番号制度は、所得や納税、年金などの受給情報を1つの個人番号で管理するものだ。
この法案は野田佳彦内閣が国会に提出していたが、昨年暮れの衆院解散で廃案になり、自民、公明、民主の3党で修正、改めて提出し直した。
安倍晋三首相は「国民の利便性向上や行政の効率化のため、早期導入する必要がある」と訴えている。政府は2016年1月からの運用を目指している。
私は共通番号制度の導入に異論はないが、今回の法案はとんでもないシロモノだと思っている。安倍さんの言う「国民の利便性」などは、ほとんど考えられていない。ただただ行政側が管理しやすくなるという“上から目線”の論理ばかりが先行している。
国民にしてみれば、共通番号導入により、多くのパブリックサービスを受けられるようになり、役所のムダな業務が減って行政コストが削減されるのでなくては意味がない。
番号制度で最も進んでいるスウェーデンと韓国は、税務、社会保障、住民登録、選挙、教育、兵役のすべてを共通番号で管理している。
私も20年近く前から「税金や社会保障だけでなく、運転免許証やパスポート、印鑑登録、さらには医療情報まで、1枚のICカードで管理するコモンデータベース法を構築すべき」と提唱している。
国民はこのICカードで、すべての行政サービスが受けられることになる。さらに、この共通番号を活用すれば、選挙の電子化も一気に進められる。政府もそのくらい発想を広げて将来的な拡張を多くの国民が参加して構想を練り直すべきだ。
今回の共通番号法案は「住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)をベースに活用する」ということになっているが、将来的な拡張を考えると、最悪の選択である。
そもそも住基ネットは、各自治体がいわゆるサイバーゼネコン(大手IT会社)の食い物にされてバラバラにシステムをつくった。ほとんど使われていないのはそのためだ。今回もサイバーゼネコンがまた暗躍して、カネだけかかってほとんど役に立たないモノを作るのだろうか。
共通番号のシステムは、「行政コストを下げて、国民の利便性を上げる」という目的を明確にして、その線に沿って全世界の英知を集めて作るべきだ。そのためにも、廃案となった法律を復活するのではなく、もう少し時間をかけてきめ細かく制定する必要がある。
というわけで、私は「この法案は絶対に通してはいけない」と、自民党にも資料を送って働きかけている。だが現在、自民党の国会議員らには、この問題を考える余裕がないようだ。
しかし、生活の利便性とコストに直接影響がある、という点においては憲法議論よりも大切な問題だという認識を彼らも持つべきだ。
急ぐ必要はない。この議論はもっともっと幅広くやらなくてはいけない。(大前研一のニュース時評)
追加記事:
共通番号法案 衆院で審議入り
年金の受け取りや納税などの手続きを簡略化するため、国民1人1人に番号を割りふる、「共通番号制度」の導入に必要な法案は、衆議院内閣委員会で実質的な審議に入り、甘利社会保障と税の一体改革担当大臣は、早期成立に協力を求めました。
「共通番号法案」、いわゆる「マイナンバー法案」は、年金や失業保険の受け取り、確定申告などの際に、国民1人1人に割りふられた番号を利用することで書類の添付を不要とするなど、手続きを簡略化するためのもので、政府は、平成28年からの制度の運用開始を目指しています。
「共通番号法案」は、27日の衆議院内閣委員会で、甘利社会保障と税の一体改革担当大臣らが趣旨説明を行ったあと、質疑が行われ、実質的な審議に入りました。
この中で甘利大臣は、「共通番号制度は、より公平な社会保障制度や税制の基盤となるものであり、情報化社会のインフラとして、国民の利便性の向上や行政の効率化に資するものだ」と述べ、早期成立に協力を求めました。
また西村内閣府副大臣は、制度の導入に伴って、個人情報が流出するのではないかという懸念について、「情報の利用範囲は法律で限定しているほか、独立性のある第三者機関で監視、監督を行う。不当行為に対する罰則も盛り込んでいる」と述べました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます