気 楽 荘

趣味の事やら、日々の事、
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リリーのすべて

2016年03月27日 | 「 えいが 」
観始めた時に感じたのは、彼が自分の性に
違和感を感じたのは後天的なのかなということ。
でも、話が進むにつれ、そうではなく、
ずっと、心の奥に押し込めていたのだと・・・。

妻のゲルダの絵のモデルの代役として、
女性用ストッキングと靴を身につけ、
脚のポーズをとったアイナーの心に
ザワザワとした波風が立つ。
本来のモデルが到着し、その姿に「リリーね」と
名前を与えてしまうと、その日から
アイナーの中でリリーという押し込めていた性が
彼の中で大きくなり始めるのだった。
自分の中で大きくなるその存在に
病気かもしれないと治療を受けるが
「レントゲンは万能の治療法なんです」と
今考えると、とんでもない治療に
何の効果もない。

そうこうする内、二人の間にも変化が、
それまで夫婦としての育んできた愛情が
姉妹か母娘の間のような形へ。

助けたいと思う気持ちと、支えて欲しいという気持ちが
二人に大きな決断をさせる。(ちょっとニュアンスが違う。
リリーは自立した生活を目指していたようなので)

今なら、彼(彼女)のような症例は「あること」と
受け止められるようにはなっているが、
当時にしたら「とんでもなく異端な」事だったんだろうなぁと・・・。
医者が、彼の話を聞きながら
カルテの最後に「精神分裂症」と書くとか
映画ではほんの少し描かれただけだが、
見知らぬ男達に因縁をつけられて殴られるなど
その苦労は想像に難くない。

それにしても、リリーを演じた
レッドメインに脱帽、賞賛の拍手を贈りたい。
映画を観ながら、そこに、自分の性の不一致に悩む
女性が存在しているかのように感じた。
他の役者だと、ここまでの存在感を
持った女性を描き出せたかどうか・・・。