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南海2200系電車「天空」~大改造を経て高野線山岳区間に戻ってきた角ズーム

2010-01-12 | 鉄道[近畿・スルッとKANSAI加盟社局]

  
  

MAKIKYUが先月末に関西へ出向いた際には、先日取り上げた「たま電車」などが走る和歌山電鐵貴志川線に乗車した後、橋本へ向かい高野山を目指したものでした。

橋本~高野山方面へ向かう際には、公共交通機関を利用する場合、南海高野線に乗車して極楽橋駅を目指し、そこからケーブルカーに乗車して高野山駅へ向かい、更にバス専用道路を経由する南海りんかんバスに乗車する道程に限られます。

その内南海高野線の橋本~極楽橋間は、日本の鉄道では屈指の山岳線区で、最大50‰の急勾配や半径の小さな曲線が相次ぐ区間ですので、同区間に充当可能な車両は1両の車体長が17m程度の小柄な車両に限られ、更に山岳線区向けに特別装備を施した車両を限定充当している状況です。

その上沿線人口も限られた険しい山中を走りますので、近年は観光向けに走る特急「こうや」号を除くと、専ら同区間内のみを走る列車が大半を占めており、この運用には主に2300系と呼ばれる新型車両が充当されていますが、比較的近年まで大阪のなんばから極楽橋まで直通運転を行う急行系列車(通称大運転)がほぼ毎時設定されていました。
(今日でもなんば~極楽橋間を直通運転する快速急行が設定されていますが、運転本数は僅少です)

この大運転がほぼ毎時設定されていた時期でも、末期は専らステンレス製VVVFインバーター制御車の2000系(大運転の大幅削減以後は持て余し気味で、一時は休車車両が多数発生する有様でしたが、今日では一部が南海線普通車用に転用されています)が用いられていましたが、同系の増備が進んで数が揃うまでは他形式も充当されており、その一つが通称「角ズーム」と呼ばれる22000系と呼ばれる車両でした。

22000系は1970年前後に大運転用に導入され、他形式との併結も含めた多彩な編成を構成出来る様に、各編成が2両という短い編成となっており、専ら複数の編成を繋いで運用されていました。

しかし2000系の増備が進み、大運転の運用から外れた後は、一部が廃車になった他、形式を改めて支線用に転用される車両が相次ぎ、その一部は今でも支線区で活躍する姿が見られます。

また熊本電気鉄道に譲渡された車両や、貴志川線用に転用された後、和歌山電鐵移管と共に譲渡された車両の中には、大運転で用いられていた時とは大きく様変わりした車両が存在するなど、多彩な活躍ぶりが見られるのも大きな特徴で、これらの他社移籍組に比べると、南海に残存している車両は地味な印象が否めませんでした。

しかしながら2200系に形式を改め、支線区で活躍している車両の一編成は昨年、観光列車「天空」に改造され、2300系が導入されて2000系ですら影の薄い存在になっていた高野線山岳区間に、奇跡とも言える返り咲きを果たしており、2000系などと併結して山岳区間を走る姿は、大きな注目を浴びる存在となっています。

「天空」に改造された車両は、塗装を緑と赤の派手な装いに改めるだけでなく、観光列車向けに窓割を変えるなど、車体形状も大きく変化しているのが特徴で、同じ和歌山県内を走る「角ズーム」の中でも、塗装や内装を大きく変えながらも、車体形状は余り変化していない和歌山電鐵の各種改造車(南海時代の貴志川線転用改造で、車体形状はかなり変化していますが…)とは対照的です。

また天空は2両共に乗降用の扉が極楽橋方のみに限定されており、極楽橋方の車両はなんば方のドアを埋めているのですが、これによって元々2ドア車として製造された「角ズーム」は、熊本向けに改造されて3ドア車となった車両と合わせ、1・2・3ドア車の各種が勢揃いした事になります。

なんば方の車両はドアこそ2ドアのままながらも、なんば方は展望デッキとして、通常はドアを開けたまま運行(荒天時などに締切可能)しており、車両端ではなくドアを利用した展望デッキは、他に類を見ないユニークなものです。

車内に足を踏み入れると、こちらも観光列車だけあって大幅に改装されており、木目などを多用した内装に加え、段差を設けて展望性に考慮した座席や、極楽橋方先頭車の前面展望に配慮した座席など、かなり創意工夫したものとなっており、外観の派手さに劣らないものとなっています。

しかしながら拡大された窓に面する座席が、改造車の制約故に足元が狭くなっている辺りは、近年廃車となったJR東日本の201系電車を改造した展望電車「四季彩」に通ずるものがあり、ドア付近の座席配列なども如何にも改造車である事を感じてしまい、苦心の痕跡が感じられます。

それでも普通列車扱いとして走るのであれば、全く問題なしと言えるのですが、高野線山岳区間は特殊な山岳線区で、輸送人員も限られる実情を踏まえると普通運賃は比較的安価とはいえ、同区間には2300系という比較的ハイレベルな設備を誇る車両が普通列車として運行している事や、比較的至近を走る「たま電車」などの和歌山電鐵における各種改造車が普通運賃のみで乗車可能な事などを考えると、「天空」乗車には橋本~極楽橋間で500円もの特別料金を要するには、グレード的にはやや不充分なのでは…と感じたものでした。

またMAKIKYUが乗車した際は敢えて閑散期の乗車率が悪そうな列車を選んだ事もあって、ガラガラで空席へ移る事も出来たのですが、予約方法も事前に電話で予約し、グループ客に配慮してか当日にならないと座席が確定せず、希望を出す事も出来ないシステムも考え物(空席がある場合は橋本駅などで、当日乗車前に直接購入も可能ですが、極楽橋駅での購入が出来ない点は要注意です)で、車両自体はなかなか独創的でユニークな存在ながらも、運用面の工夫がもう少し欲しいと感じたものです。

高野山観光客向けに確実に座席を確保する事も、「天空」運転目的の一つと言う事を踏まえると、さすがに「天空」を繁忙期に一般の普通列車扱いで運転するのは難しいと思いますが、閑散期のみ普通運賃で乗車可能な扱いにするか、なんば~極楽橋間を「天空」と特急「りんかん」号を乗り継いだ場合に、特急「こうや」号乗り通しと同額程度になる様な料金設定(「天空」の特別料金を値下げするか、「りんかん」との乗継割引を設定)程度はあっても良いのでは…と感じたものでした。