僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

雨の日の喫茶店

2020年02月17日 | ケータイ小説「パトスと…」



約束より15分ほど早い
昼食時間はとっくに過ぎているのでどの席も空いている
入り口から見やすい場所に座った

留美子はいつも時間に正確だ
今日もきっと時間丁度にやってくるだろう


すぐに店員がやってきた
いつものたっぷりブレンドコーヒーを注文する
「ミルクはお付けしますか?」と聞かれるが
いつも「要りません」と答える


テーブルの横に揃えておいてあるメニューの
シロノワールが目に入った

多分留美子は今日もこれを注文するだろう
「辰雄も食べなよ、美味しいから」
「うん、んじゃ」と言って一口食べる
それもいつものことだ



メニュー越しに若い女性客が目に入った
一人で本を読んでいる
テーブルに置かれたアイスコーヒーは手つかずのままだ



メールが入っていないか、テーブルに置いたスマホを手にした時
女性が天井を見上げて小さなため息をつくように見えた
バッグからハンカチを取りだして目頭を押さえ
読んでいた本を閉じると
カップのストローを口にした



スマホが震えた

留美子からのメールだった
「今到着したよ」

入り口を見ると
傘をたたみながら入ってくる留美子が見えた
立ち上がって手を振る
留美子が控えめに手を上げて応える


席に座ろうとした時
女性が読んでいた本の表紙が見えた

あっこれ知ってる
それ、俺も泣いた…



留美子が向かい側の席に座り
「あー、雨降っちゃったねーっ」
と言いながらメニューを取り上げた時
シロノワールが目に入った



「今日はミニじゃなくてレギュラーにしろよ」
「え、どうして?」

「べつに、ちょっとそんな気分して」
「へぇーめずらしいね、んじゃ大きいの半分ずつにしよっか」

水を運んできた店員に
「こっちの大きい方ね」

と指さしてから

いつものように思いっきり明るい笑顔で
「あと、ホットコーヒーミルクも付けて」

そう言って辰雄を見た。。








つづく






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