ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

【演劇】マームとジプシー「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと----------」

2014年06月21日 | 演劇
一言でいうなら、素敵な芝居だったな、と。うん、見てよかった。



初めてのマームとジプシー、初めての藤田貴大。岸田戯曲賞受賞作ということで、池袋まで。

開演前、せり出した舞台も、シンプルなオブジェも、白い衣装で体を伸ばす役者陣もいい雰囲気。正面には街の様子をかたどった箱庭のような世界が映し出されている。これだけでいい雰囲気。開演が待ち遠しくなる。

役者で魅せるというよりは、演出で魅せるタイプかな、等と勝手に妄想。
結果、それは外れではないものの、簡単にそうとは言い切れない。

物語は至ってシンプル。やがて取り壊されることになる一軒の家。そこで幼い頃に過ごした姉・長男・妹が、それぞれの子供たちを連れて集まることになる。回想と現在の「家」「食卓」に対する想いが重なりながら、もう戻ることのできない「家」への想いと、前へと歩いて行くことしかできない僕らの生き方が描き出されていく。

特徴的なのは、何度も何度もリフレインのように同じシーンが繰り返されること。

それは単に時間の巻き戻しという場合もあるが、それ以上に反復されることに意味があったと思う。

反復されること。

同じシーンを繰り返し繰り返し演じることで、同じシーンのはずなのに、その都度、見ている僕らの心の奥にしみこんでくる。突き刺さってくる。

それが演出による指示なのか、反復されることで役者の感情がより高まっていくのか、あるいはその都度、観客そのものがそのシーンとシンクロしていったからなのか、繰り返されるたびに、観客の心の奥に何とも言えぬ切なさが広がっていくのだ。

こういった切なさは、タイプが違うけれど「南河内万歳一座」の初期の作品依頼かな。

舞台、衣装、オブジェの使い方、音、照明ともにいい雰囲気を作り出していたし、役者陣、とくにりり役の成田亜佑美はいい味を出していたと思う。

うん、素晴らしい舞台だった。

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マームとジプシー「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと----------」

日程:2014年06月08日 (日) ~ 2014年06月22日 (日)

会場:シアターイースト

作・演出:藤田貴大

出演:
 石井亮介 伊東茄那 荻原綾 尾野島慎太朗 川崎ゆり子 斎藤章子
 中島広隆 成田亜佑美 波佐谷聡 召田実子 吉田聡子

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