ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

【演劇】柏で芝居をやるということ

2014年06月01日 | 演劇
かれこれ約20年ぶりに芝居の作・演出をした。30分弱のショートストーリー。

まぁ、何というか、この劇団で試してみたかったこともあったし、これまでとは違うアプローチでどこまでできるかという挑戦もあった。情宣なんかについていえば、とりたてて目新しいことをしたわけではないけれど、おざなりになっていたことを改めてしっかりとやったりもした。やろうとしていたこと全てができたわけではないし、計算通りに行ったこともあれば、よくも悪くも予想を外れることもあったりもした。

それでも当日は、当初予定を大きく上回り、立ち見でも入りきれないくらいのお客さんが駆けつけてくれ、物語が進むにしたがって、笑い声が絶えず、多くの人に楽しんでもらえたと思う。

何よりも役者陣が楽しめたことが一番よかったのだろう。

とはいえ、いろいろ感じることもあった。特にこの「柏」という町で芝居をすることの難しさは改めて考えさせられるものがある。

僕が学生時代、芝居やっていたのは京都だ。学生はもちろん、その街に新たに住み着いた人たちの中には、演劇はもちろん、音楽だったり映画だったり、学生時代そのままにまだ見ぬ新しい表現を求めて活動している人たちがいて、それを支持してくれる人たちがいた。

京都で芝居をするということは、メジャーになるにはまだまだ離れていたかもしれないけれと、芝居を観なれた人たちや同世代の学生たちがお客さんとして来てくれていた。

しかしここ柏で芝居をするというのはそうではない。

今回、柏市が主催する市民活動フェスタの一環として参加したわけだけれど、来てくれたお客さんの多くは観劇になれている人たちではない。出演者の知り合いや知り合いに誘われた人、あるいは市の広報やコミュニティ誌で取り上げられた記事を見て来た人たちだ。普段から芝居を観ているわけではなく、知り合いが出ているから、もしくは「近くで楽しめるイベント」だから来たというところだろう。

もちろんそこに住む普通の人たちが来てくれるということは、それだけで素晴らしいことだ。

その一方で、必ずしもこれからも演劇を支えてくれる人たちとは限らないということも事実なのだ。そういった「たまたま」のお客さんを演劇ファンにできるか、(有料公演でも)また見に来てもらえるかということが課題になる。

20代~30代なら、仮に今回、演劇に関心を持ったとしたら、下北や新宿、池袋、あるいは中野や駒場まで足を運ぶかもしれない。そうして演劇への関心をさらに高めてくれるかもしれない。しかし今回、見に来てくれた層は40代~50代の主婦が多い。そうそう都内へ出ることも多くないような人たちだ。

かといって、柏にそうした人たちの関心を満足させられそうな芝居がしょっちゅうあるわけでもない。

次回公演の際に、改めて興味を高めて、期待と思わせるための工夫をどのように仕込むのか。これが1つの課題だろう。

そしてもう一つは、芝居をするハコ(会場)がないということ。

柏は比較的に音楽には寛容なのだけど、こと、演劇というとそれに相応しい会場が皆無に近い。

今回、実施した会場ももともとはピアノ等の発表会を想定したホール。ステージ上にのったピアノを外に動かすのは一大事だし、照明も演劇用に一つ一つを操作できるわけではない。

それ以外のホールになると、小劇場には不釣り合いなバカでかいホールか、多目的ホールのようなところになる。バカでかいホールは問題外として、多目的ホールは予約がいっぱい、しかも天井は高くないから演劇用の照明としては使いにくい。それでも使い物になるだけましなのか…

できることなら、柏で芝居を観るのは「ここ」という場所があれば、それが1つの求心力になるのだろう。柏にも芝居をしたいと考えている人間は数多くいる。にもかかわらず、柏で演じる場所がない。それが一因となって柏で劇団が根付かず、観客が育たない。悪循環だ。

ハコについては簡単に解決できる問題ではない。

照明や舞台美術を犠牲にしてでもハコを定めるのか、その都度、その演目に相応しいハコを見つけるのか、そのあたりも今後、考えていかねばならないのだろう。

最後に、そうは言っても今回の公演で一つの手ごたえを感じたというのも事実。

初めてのお客さん、たまたま観に来ただけのお客さんたちが多かったにも関わらず、役者と観客が一体感を感じあった舞台。笑い声や「楽しかった」「次を楽しみにしています」の声。これを何とか次に繋げていきたいと思う。








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