個人的にはいささか拍子抜けの感があったのだが、隣ではおいおい泣いている女性の姿が。あぁ、そうか、これは「ラブストーリー」なのだ。戦争や悪魔を巡る意味深なセリフがあったとはいえ、「ナウシカ」や「もののけ姫」のようなメッセージ性にとんだ物語ではなく、「プリティウーマン」をさらに一歩進めた、女性のための一級品のラブストーリーなのだ。
愛国主義全盛の時代。父が残した帽子屋を支えている18才のソフィー(倍 . . . 本文を読む
何ともいえぬ「不快感」が残る映画である。しかしこれはけなし言葉ではなく、賞賛の言葉である。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」では「楽しさ」「明るさ」とは正反対のミュージカル映画を作り、本作品では、演劇さながらの、床にチョークで描かれた境界線と最低限のセットだけを用いるという実験的な映像を生みつづけるラース・フォン・トリアー監督にとって、「あぁ素晴らしい作品でした」などという言葉は不要だろう。彼の描こう . . . 本文を読む
個人的には「紅ブー」のような個人的色彩の強い作品の方が好きなのだけど、とはいえ宮崎駿の1つの到達点として「風の谷のナウシカ」「もののけ姫」を認めないわけにはいかないだろう。「ナウシカ」が宮崎駿の1つの理想とした世界を描いたとしたら、この作品は理想ではありえない現実の中での1つの在り方を示した作品だ。「生きろ―」そのメッセージは、理想郷(ナウシカ)とその喪失(紅の豚)後に、それでもなお現実の中で生き . . . 本文を読む
想定される結論は2つしかない。しかしそれがどっちに転ぶのか――「CIA」という日本人なら映画か小説、中東での戦争報道くらいでしかなじみのない、しかし現実に存在する組織を舞台に、最初から最後まで徹底した「騙しあい」と「駆け引き」の中で、観ているこっちまでどんどん深読みし過ぎで疑心暗鬼に。アルパチーノと、コリンファレルの熱演がさえるサスペンスの秀作。
父親の死に疑問を感じていたMIT首席のジェイムズ . . . 本文を読む
エキソシストの第1作目を除けば所謂スプラッタ映画は所謂「怖い」というよりは「ジェットコースター」にのる時の感覚に近いし、Jホラーのもつ怖さともちょっと違う「渇いたホラー」。ヒリヒリした感覚、殺伐とした映像。役所広司はもちろん、萩原聖人の演技が雰囲気を盛り上げた黒沢清のサイコサスペンスの傑作「CURE/キュア」。
首もとを×字に切り刻むという猟奇的な殺人事件が連続して起こる。犯人はそれぞれ別人であ . . . 本文を読む
ショーン・ペンの熱演は言うに及ばず、抑えた演技のティム・ロビンスやケビン・ベーコンら名優が織り成す人間ドラマ。クリント・イーストウッドが監督をしていることもあって、映像的にはそんなにこった作りではないし、サスペンスといったも凝ったと仕掛けがあるわけではないが、とにかく「人間」というものを、その「愚かさ」と「悲しみ」をうまく引き出している作品。結局、人は過去に戻ることはできず、それが悪夢であったとし . . . 本文を読む
例えば去勢された「飼い猫」を生き物として見なさない人はいないと思うが、仮に人間と同等の知性や運動能力をもつ、あるいはそれ以上の能力を持った「レプリカント」を「生命」として見なせないのは、人間中心主義もしくは、「神」にさえなれるのではないかと勘違いしつつも自らを脅かす存在を許すことのできない人間の横暴さだからであろうか。未だにカルト的な人気をもち、「イノセンス」をはじめその後のSFに多大な影響を与え . . . 本文を読む
「CURE」「回路」など、今流行りのJホラーとは一味違うホラー作家「もう1人のクロサワ」こと黒沢清のブラックコメディ。どうしても黒沢清の作品となると「CURE」のヒリヒリした感覚を期待してしまうのだが、この作品はまったく別もの。まぁ、「アカルイミライ」にしろホラーというくくりでは収まりきらないし、「CURE」路線は忘れてしまった方がいいのかもしれない。
介護用の人工人体の開発に取り組む早崎(役所 . . . 本文を読む
う~ん何だろう、結構映像は迫力があったし内容も楽しめたんだけれど、結局、ハリウッドではやはりこれ以上の深みは期待してはいけないってことだろうか、それともSFもの、特に近未来ものについては既にジャパニメーションが先行しており、ハリウッドが模倣する側に回っているということか。
西暦2035年。「人間に危害を加えてはいけない」「人間の命令に従わねばならない」上述の2条にそむかない限り「自己の身を守らな . . . 本文を読む
この映画はもちろん「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」の続編であり、押井守からの新しい進化の可能性に対する問いかけでもある。実体としての身体からの解放は「退廃の美学か、現代を生き抜く新たな哲学の誕生か」と。
舞台は少佐こと草薙素子が失踪後の世界。本来安全なはずの少女型のアンドロイドが突如暴走、所有者を惨殺、最期には自身も"自殺"で果てるという怪事件が発生。しかし所有者の遺族からは . . . 本文を読む
全てを相手の身にゆだね、「生」と「死」のギリギリのところにある「危さ」と「快感」に溺れる2人――ヴァネッサ・パラディの恍惚とした表情を見ているだけでこの映画を見る価値はある。スピード感。エロティシズム。パトリス・ルコントらしくもあり、パトリス・ルコントらしくもない、しかしラブストーリーの傑作。
セーヌ川の名もない橋の上。1人の娘が飛び降りようとしている。名前はアデル(ヴァネッサ・パラディ)。彼女 . . . 本文を読む
どこまでも深く青い海、果てしなく続く空、キュートに踊るイルカたち…「サブウェイ」や「レノン」だと言う人もいるかもしれないが、個人的にはこの「グランブルー完全版」が文句なしにリュックベッソンの最高傑作だ。エリック・セラの音楽に、ジャン・レノとリュックベンソン映画の魅力満載の1本。ちなみにもともとは「グレート・ブルー」というタイトルで公開されたが、完全版に比べて40分ほど短いバージョンのため魅力は半減 . . . 本文を読む
「トレインスポッティング」のダニー・ボイル監督が描いたSFホラー。オープニングがちょっとチープだったのでどうなるかと思ったけれど、いやいやなかなか結構どうして見ごたえあり。ストーリーもしっかりしてるし、特に映画版とはエンディングの異なる「特別編」の方は見終わった後のカタルシスもあるのでお薦めの1本!
過激動物愛護団体が研究所内に隔離されていたウィルス感染中のサルを解放したことから、英国に死に至る . . . 本文を読む
女子高を舞台としたこの映画が劇場公開された時というのが、ちょうど大学受験直後というまさに同世代だったということもあって10日間で5~6回映画館に観に行ったと思う。それくらい当時は"はまりまくった"映画だった。原作は少女マンガ界の巨星 吉田秋生の同名タイトル。監督は「12人の優しい日本人」「Lie lie Lie」の中原俊。もちろん誰にも受け入れられるであろう名作だ。ただ30代になった今、あの頃と同 . . . 本文を読む
「女であるために女を演じるすべての女性たちへ――」という言葉を示すように、この映画を初めて見たとき、奥さんの感動ぶりに比べてもう1つはまりきれなかった。というわけで、もう一度、見直してみたわけですが、この映画、一言でいうと「女は強し」というところでしょうか。
臓器移植コーディネーターのマヌエラ(セシリア・ロス)は17年前に夫の下から逃げ出し、女手1つで息子を育ててきた。その息子がからお父さん . . . 本文を読む