マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

二人の間は冷めたスペインオムレツ?

2012-05-14 08:30:00 | スペイン日記

冷めたふたり

 二人とはファン・カルロス・スペイン国王とソフィア王妃です。5月14日に金婚式を迎へますが、公の式典はありません。寝室を別々にしているほど冷めてしまった夫婦の冷め具合いを見る前に、スペイン王家の歴史を簡単に見てみましょう。

 イベリア半島からイスラム教徒を北アフリカへ追い払った15世紀の末(1492)に、統一国家・スペイン王国が出来ました。ハプスブルグ王家の神聖ローマ皇帝・カルロス一世がスペイン国王になると、ハプスブルク朝が200年近く続きます。ところが五代目となったカルロス二世には跡取りができなかったので、スペイン繼承戦争が始まります。その結果、スペイン王権はハプスブルグからフランスのブルボン王家へ移りました。

 ブルボン朝が100年位続いた頃、フランスにはナポレオンが出てきます。彼の兄がスペイン国王となりボナパルテ朝になったのが19世紀の初めです。この1808年から1975年の170年間はおびただしく政権が代わります。ボナパルテ朝→共和国(第一次)→ブルボン朝→共和国(第二次)→ブルボン朝→フランコ独裁(摂政君主)→ブルボン朝です。あ~あ、目が回る。

 1975年に即位した現在のファン・カルロス一世は復古第三回目のブルボン家・スペイン国王となる訳です。スペインが共和国になるたびにブルボン家の王は、亡命と言うかたちで体よく国外へ追い払われる訳ですが、亡命先のローマで生まれたのがファン・カルロス、愛称ファニート(Juanito)です。

 由緒正しき王家のファン・カルロスは1962年、ギリシャ王室のソフィア姫と結婚しました。それから半世紀ですが、74歳と73歳になった国王夫妻にも色々とあったのでしょう、銀婚式はしましたが金婚式はなくなりました。二人の間が冷めたのは、国王の女好きが原因です。1500人の恋人がいたとも言われるファン・カルロスは正真正銘のドン・ファンなのです。

 王と親しい男友だちは口を揃えて「良い王なのだが、女癖が悪い」と言い、ファン・カルロスのおばあさんも「ブルボン家の血は女たらし」と言っていました。スペイン語で女たらしをムヘリエゴ(mujeriego)と呼びますが、それはフランス人の血と生まれたイタリアの土地柄でしょうか?ヨーロッパではフランス人の恋愛好きとイタリア男の女好きの国民性は市民権を得ています。

 そんな夫に愛想を尽かしたソフィア王妃は寝室を別にするだけではなく、階も別々にしてしまいました。ここまで冷え切るといつ離婚しても不思議ではないのですが、宗教上のこともあるのか、王妃はちゃんと公儀を笑顔でこなしています。立派です。先のブログ「オッサン、そんなことをしている場合かぁぁぁぁ!」「やっぱりあった象狩りの裏、それはコネ」で書いたような国王なのですが、この7年間はドイツ妃・コリンナ(Corinna Zu Sayn-Wittegenstein)が恋人です。まだ47歳で国王とは27歳も違いますが、先の象狩りにも一緒でした。

 でも、最新のゴシップ記事では、二人の間は終わったようです。ソフィア王妃が愛想を尽かすのは当たり前で、スペイン庶民は王妃が可哀そうだと思っています。女性問題を除けば、一国の主としての勤めは全うしているファン・カルロス国王です。例の象狩りの前にはクェートへ行っていました。スペインとクェートの関係は90年代に起こった不動産問題で切れ目が入りました。

 4年前にファン・カルロス国王のクウェート訪問で傷口は治りましたが、今年はどうしてもクウェート国王に助けを求めなければならなくなりました。イラン問題です。ヨーロッパ連合(EU)が決めたイラン制裁で、スペインはイランから石油を止められました。昔から太いパイプで繋がれたスペイン国王とサウジアラビア王家なので石油が止まることはありません。しかし、政府としてはサウジアラビアからだけではなく、他の国からの入手ルートも確保しておきたいのです。

 それで、ファン・カルロス国王がクェートを訪れ石油の確保が出来ました。一仕事終えた王は、ヤレヤレと象狩りへ行ってしまった訳です。「王妃の孤独(La Soledad de la Reina)」が二人の間を書いた本です(Pilar Eyre著、出版la esfera de los libros)。

 冷めた夫婦の間は「食えたもの」ではありませんが、冷めても美味しいのがスペインオムレツ、トルティージャ・エスパニョーラ(Tortilla española)です。金婚式と黄金の太陽のカタチをしたトルティージャを金と金で引っ掛けてみましたが、クサイ駄洒落となりました。


黄金の太陽・トルティージャ

 トルティージャは簡単につくれます。かなりの量のオリーブオイルを使うので、日本では料理用のオリーブオイルが手に入った時に作るといいでしょう。さもなければ、サラダ油を使って、タマゴとジャガイモを混ぜる時にエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルを少し加えて香りを楽しみます。

 二人分なら、中サイズのジャガイモ2つと卵3つと玉ネギを半分です。ジャガイモを将棋の駒の厚さに切り、玉ネギは薄切りです。フライパンにたっぷりの油(ジャガイモが隠れる)でジャガイモをゆでます。温度は中です。茹で上がったジャガイモをスペイン人は鉄ザルにあけて油を切り、それを溶いた卵の中に入れます。僕は面倒なので、茹で上がったジャガイモを木ベラで抑えながら、ラーメンの丼に油を落としちゃいます。

 フライパンに残ったジャガイモに、溶いた卵を流し込みます。その時に木ベラでジャガイモも軽く砕き、玉ネギを入れます。スペインには裏返す専用の「トルティージャ皿」がありますが、普通の皿で十分です。片側が焼けたら皿に移し、その上に蓋をするようにフライパンを置いて、エィ、とひっくり返します。皿の中央は熱いのでフキンで持つといいでしょう。残り半分を焼いて出来上がりです。僕は中の半熟状態が好きです。塩は濃い目が好まれます。


トルティージャの専用皿です


裏には出っ張りがあります


油はたっぷり。春なのでツゥリゲロ(triguero)と呼ぶ細グリーンアスパラも入れました


油を切って、溶いた卵を流しこむ


片側が焼けたら皿へ移す


ひっくり返して焼きます


出来上がり
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