マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

あおいグレロスです

2014-11-25 13:30:00 | スペイン日記

 

グレロス                                 一束のグレロスも茹でると下のタッパーに入ります

 元気なグレロス(Grelos)が八百屋に並び始めました。スペイン北西部のガリシア地方(ホトケさんの数よりも多い葬儀場(斎場)があるのがガリシアです)のカブの葉の一種ですが、カブを食べるために栽培をするのではなく葉を食べます。普通のカブの葉よりも味は濃いのですが繊維質は柔らかいです。生の茎を噛むと味や香りは大根に近いです。一昔のマドリードの八百屋では見かけませんでしたが、この10年くらいでしょうか、マドリードのスーパーでも買えるようになりました。

 夏に植え付けが始まり、冬に出ます。花開く前に収穫をしないと煮込んでも噛み切れないほどに筋っぽくなってしまうそうです。2月、3月が一番味が良いとガジェゴ(Gallego/ガリシア人)は言いますが、僕は出始めたら直ぐ買います。750g~1キロの一束が500円くらいで、日本の野沢菜のように塩漬けにも出来るので二束や三束も買ってしまいます。いつも手に入るわけではないのでひと束は湯がいて、その汁と一緒に冷凍します。もうひと束は塩漬けにして野沢菜漬けのように味わいます。残りの一束はガリシア地方の名物料理・ガリシア風ポトフのポテ・ガジェゴ(Pote Gallego)をつくります。それを薄めたのがカルド・ガジェゴ(Caldo Gallego)と呼ばれるスープです。

 マドリードのガリシア料理のレストランにも必ずカルド・ガジェゴがありますが、多くはグレロスの代わりにアセルガス(Acelgas/日本名は「不断草」だそうです)と呼ばれる一年中手に入る葉野菜を使います。僕のつくるポテ・ガジェゴは肉よりも葉っぱが主役なのでスペイン人の倍の量のグレロスを煮込むので、大根おろし煮(?)みたいになってしまいます。

 

 材料はグレロス、コディージョ(Codillo)と呼ばれる骨付き豚もも肉の塩漬け、牛のすね肉、白インゲン豆、ジャガイモで、写真の量は4人分です。骨付き塩漬け豚もも肉は日本では入手が難しいですが、この塩漬け肉を乾燥させれば生ハムになります。日本でつくるのが無理なら、冬のマドリードへ来た時にでも食べるといいです。

 

コディージョ/塩漬けの骨付き豚もも肉                    牛すね肉                                 

 

白インゲン豆                                 ジャガイモ                                

全ての材料を並べました

 作り方は簡単です。白インゲン豆は前の夜に水に漬けておきます。塩漬け豚肉はかなり塩っぱいので僕は水たっぷりの鍋で30分くらい茹でます。湯水を捨てて、新しく水を鍋に入れて、牛すね肉と白インゲン豆と一緒に1時間半から2時間くらい弱火でアクを取りながら煮込みます。豚もも肉から骨が外れたら、すね肉と一緒にまな板の上でぶつ切りにします。ぶつ切りを再び白インゲン豆の残っている鍋に戻し、ジャガイモのぶつ切りとグレロスのザク切りを入れて1時間煮込みます。もちろん、ジャガイモは皮をむき、グレロスは水洗いしておきます。スペイン人は500gぐらいのグレロスを使いますが、僕は倍の1キロ近くを入れます。だから、台所は大根の香りが溢れますが僕には日本の田舎へ戻ったみたいで、幸せになるのです。煮込み料理は一晩寝かすと更に美味しくなるし、鍋料理同様に人数も多いほうがもっと美味しいです。

 

グレロスが鍋からあふれそう                        グレロスがこの色になったら出来上がり                   

ポテ・ガジェゴです

 さて、出来上がった僕の「大根おろし煮香り」のポテ・ガジェゴですが、味も味噌汁(豚汁?)みたいになってしまいました。これでは、隣りのウサギ肉大好きスペイン人夫婦はダメなので、さて?誰を呼ぶか?と考えたら、居ました!マドリード生まれなのにヴァカンスはガリシアやその隣りのアストゥリアスで過ごす友達が!電話をしたら、二つ返事でOKです。そうと決まったら、ポテの他に数皿欲しいので、車エビの鉄板焼きとタコとジャガイモのマリネサラダもつくりました。サラダの上にはザクロを散らしました。僕も彼も好きな山羊のチーズも切り、ワインはガリシアの白、アルバリィニョです。味噌汁風ポテ・ガジェゴにはピッタリです。そうそう、スペイン人はラドーも加えますが、無くても美味しいです。

 

車エビの鉄板焼き                             ザクロを散らしたタコとジャガイモのマリネサラダ              

 

山羊のチーズ(ですが、食べないと分かりませんね)             さぁ、食べよう!

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北風が吹いてきました

2014-11-07 10:00:00 | スペイン日記

ブニュエロ

 ヨーロッパの他の国と同じようにスペインも10月末より冬時間に変わりました。ここはサマータイムのままでもいいような太陽に恵まれた国ですが、起きるのが1時間遅くなりました。その分、夕暮れが1時間早くなったので赤提灯好きの飲兵衛(東京・新橋のサラリーマンの皆さん)には嬉しいでしょうが、昼メシでもワインを飲むスペインでは関係ないです。そんな一日25時間の週末(一時間遅くなったので日曜日は25時間でした)を過ごして、陽気もいいので夏のようにテラスでビールを飲んでいたら11月1日になりました。

 トドス・ロス・サントス(Todos los Santos)の日で、日本のお盆のようにスペインでは墓参りをします。異邦人の僕には先祖の墓はないので、昔は友達の墓参りに付き合ったりもしていましたが(墓参り後に友達が皆をバルやレストランで御馳走しますが、何故か毎回、山盛りのエビやカニの海産物料理だった)、近頃はお互いに年寄りになったので近所の教会のミサでお茶を濁しています。この頃に食べるのがブニュエロ(buñuelo)と呼ばれるクリームの入った揚げお菓子です。ドーナツと言うよりも、揚げた小さいシュークリームです。

 日本でも季節の和菓子-桜餅やかしわ餅-がありますがそれに近い感覚で、これがお菓子屋に並び始めたら、墓参りです。ブニュエロを食べていたら、マドリードは急に寒くなりました。テラスでビールの時は30度近かったのが10度まで下がりました。これが内陸型気候のマドリードの四季なので、慌てて暖炉を焚き、ボイラーを焚きました。ワインも冷やした白から常温の赤になり、野菜も冷蔵庫から取り出して台所の野菜ラックへ移しました。やっと肌寒い秋になりました。以前は日本より持ってきた独身者用の電気コタツを出していましたが、怠け者になるので物置に封印しました。これに七輪(これも日本から持ってきた)を横に置いたらトイレに立つ以外は動きません。リクライニング式の座椅子(これも日本から)もあるので夜もコタツで寝てしまいます。

 これでは日本の四畳半生活の老人になってしまうので、やせ我慢をして暖炉の前で椅子に座りワインです。ホンネは火鉢で熱燗なので、暖炉の火を見ながら「今年仕入れた薪はまだ完全に乾いてないのか燃え具合が悪い」と言い訳じみた文句とは裏腹に頭のなかでは暖炉を使って日本酒のお燗は?と考えてしまう自分が情けない。スペイン人の友達は暖炉にアルミホイルで包んだジャガイモを置いて、ワインのツマミにしていた。僕もそれを見習って、焼き芋を試したが失敗だった。


暖炉用の薪。エンシナと呼ばれる樫の種類。これでふた冬分の1トンで約2万5千円です。

 スペインにはサツマイモは無くて、それに似たのがバタタ(batata)と呼ばれる中南米産の中がオレンジ色の芋です。焼いても蒸してもサツマイモの甘みには程遠く、あくまでもジャガイモです。ただ天ぷらで食べると美味しいので油との相性はいいようです。他の友だちは田舎の家の台所に大きめ暖炉があったので、その上にオーブンを取り付けて仔羊を丸焼きにしてしまった。僕もご相伴に預かったけど旨かった!

 日本人には北風が吹き始めたら、やっぱりお鍋!ですがスペイン人にはいまひとつ人気がありません。カツオの匂いや昆布の味が好きではないのと水っぽさすぎるのでしょうか? 「おすまし」も好きな日本人とスープは濃くて生ぬるいのが好きなスペイン人の舌の感覚のちがいでしょうか。僕は水炊きの感覚でイベリコ豚の鍋をつくり、大根おろしとつゆの素で食べますが、スペイン人には受けません。あんこう鍋もおでん鍋も不人気でした。ここでは冬の寒さには豆の煮込み料理のしつこさと「ど~ん」と胃に響く重さです。

 日本のコタツの話をしましたが、スペインにも似たものがあります。ブラセロ(brasero)で丸いテーブルの下に火鉢を置いて、それを床に届く長さの厚いテーブルクロスで覆います。テーブルの脚の足首当たりに丸く穴を抜いた板が付いていて、そこに炭火鉢(パエジャ鍋をご想像あれ)や電気ヒーターを置きます。ブラセロの中に腰から下を入れて座って豆の煮込みを食べていれば否応なしに汗が出てきます。それを赤ワインで食べ、皿に残った豆スープをパンに浸して綺麗に平らげれば満腹で眠くなります。友達のスペイン人夫婦はマドリードでセントラルヒーティングのマンション暮らしなのに、田舎の冬の味が忘れられずにブラセロも使って居ました。その心地良さにうたた寝をしてしまった僕(ワインのせいでもあり)はコタツを日本から持ってきてしまったのです。

 この週末は前のブログにも書いた「独立を問うカタルーニャ州民投票」が予定されていますが、違法なので取りやめになりそうです。しかし、しつこいマス・カタルーニャ首相は世論調査のかたちにしてでも実行するつもりです。ヤレヤレです(実行せよの意味のヤレではなく、うんざりのヤレです)。
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