マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

「スペインの年末年始はナビィダァ」と「ファン・カルロス一世家族の肖像画」

2014-12-26 11:00:00 | スペイン日記

クリスマス・イルミネーション

 毎年書いていますが、ナビィダァ(Navidad)とは1224日~16日のスペインのクリスマス週間のことです。つまり、年末年始はクリスマス週間です。その前に恒例のクリスマス宝くじが22日にありました。一等40万ユーロ(6千万円くらい)の当たり番号は13437で僕が買ったのは13597、ガッカリです。末尾が7だったので宝くじ代の20ユーロ(3000円)は戻って来ました。カタルーニャが多かったけど、スペインのあっちこっちでも当たりました。

 クリスマス宝くじに付きものの心暖まる話は3等(750万円)が当たった、あるオッサンの話です。オッサン(50歳すぎ)は長期失業中で3人の家庭持ちの子供達も皆失業中、失業手当てはとうに終わり救済手当てでかろうじて生活をしていたので、ホントに神からの贈り物でした。31日の大晦日は家族や友達とどんちゃん騒ぎをしながら、0時に12粒のブドウを食べます。マドリ-ドのソル広場の大時計の打つ12回の鐘に合わせて12粒飲み込めたら、それで良い一年を迎えられるという、非常に安直な(スペイン的な)言い伝えです。

 マドリード以外に住んでいるスペイン人はどうするの?ですが、そこはそこでTV局がソル広場の時計を全国放映します。ただ心配なのは31日の0時をもって各放送局の電波が新しい電波帯になるので、従来の受信番組は消えます。ほとんどのスペイン家庭のテレビは電波数を移動済みのようですが、それを知らない田舎のジジ・ババ夫婦はブドウを食べ損ねそうです。イエス誕生のクリスマス・イブ、その祝いにプレゼントを持って駆けつけた東方の三賢人の日が16日、その間がクリスマス週間なので、間に迎える新年の重みは薄いです。日本の元旦の神社仏閣への詣でや初日の出を拝む正月気分には程遠く、スペインの元旦は宿酔いと寝坊です。新年を迎えて新しい気持ちになることはなく12日から平日通りの仕事です。ちなみクリスマスプレゼントは24日の夜ではなくて15日の夜で、サンタクロースじゃなくて東方の三賢人が届けます。

グラン・ビア

 僕は45年間毎年スペインのナビィダァなので、たまには日本の正月が恋しくなります。ところで、話は変わりますが、アントニオ・ロペスが王家の肖像画を20年もかけて描いている、とこのブログでもちょっと書きました。その間にスペインは国王がファン・カルロス一世から息子のフェリペ六世になりましたが、その肖像画が「一応」出来上がりました。何故「一応」かは、おいおい説明しますが、アントニオ・ロペス(Antonio Lopez / 1936. Tomelloso.Ciudad Real)は見たままを描く写実画家です。油彩画の他にも素描画も彫刻も制作するが、どれも完璧なレアリズムです。

 ロペス絵画は風景画、肖像画、静物画と幅広いが、その中でも僕が風景画を好きなのは、彼の光の捉え方が好きだからです。街角の風景にしても屋上からの街の景観にしても、自分の視点で捉えた「いい光」の時間にしか描きません。毎日描きますが、造形が同じ光を浴びてる時にしか描かないので長い時間の制作となります。マドリードの銀座に当たる「グラン・ビア」を描いた風景画は毎日30分描いて7年間かかりました。「その一瞬」を待ってカメラを長い時間構える写真家と似ているかも知れませんが、日々の制作を継続する根気ある職人にも似た画家でもあります。

 ロペスのマドリードの都市風景画は油絵の具という素材の味もありますが、カチッとした硬さはありません。建物だけの無人風景なので、むしろ静物画の趣があります。ロペスは作品が他人の手に移っても、再び加筆を願い出ます。彼には完成は無いのです。でも「一応」描きあげます。さて「ファン・カルロス一世家族の肖像画」ですが、横3メートル、高さ3,39メートルの大作です。5人の人物は等身大です。まずは写真を撮り、等身大のカラーコピーを人物ごとにつくり、板に貼りました。それをモデルにしてキャンパスに描き始めましたが、制作はロペスのアトリエと王宮に造られたアトリエで行われました。

ファン・カルロス一世家族の肖像画

 20年前なので、左端のクリスティーナ王女は29歳、隣の姉・エレナ王女30歳、真ん中のファン・カルロス国王(当時)56歳、隣りのソフィア女王55歳、右端のフェリペ皇太子は26歳でした。20年間の間には色々な出来事があり、クリスティーナ王女は公金横領の罪で今は公判を待つ身、離婚をしたエレナ王女は歴代のスペイン王家では初めてのバツイチ。ファン・カルロス国王は退位したので、ソフィア女王も引退したが娘たちに訪れた不幸は母親の心を痛めました。新国王となったフェリペ六世だが、キャスターだったバツイチのレティシア(今はスペイン王女)と結婚をして二人の女の子の父親です。

 数々のスキャンダルが原因で王室は前国王夫妻と現国王家族のみとなりました。画料35万ユーロ(5千万円ほど)を前払いで貰っておきながら、画家自身もこんなに時間がかかるとは思いませんでしたが、それにしても色々なことがありました。ファン・カルロス国王が画家・ロペスにした注文は「普通のスペイン人家族像」でした。描き上がった肖像画に前国王は満足で「20年前の自分より今のほうが(退位したので)リラックスしている」と付け加えました。時代ごとにスペイン国王家族肖像画がありますが、ヴェラスケスは5年かかり、ロペスのは20年で「一応」仕上がりました。マドリードの王宮で開催中の「スペイン王家の肖像画展」でロペスの「ファン・カルロス一世家族の肖像画」を419日まで展示しています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする