タイトルに偽りあり、と言われる前に弁解をしておきます。闘牛の話ではありません。仔羊の丸焼き料理のヨダレの出る話でもありません。選挙の話です。スペイン全土の州長選(日本の県知事選にあたります)と市長選が前週末にありました。結果は地元ヤクザが新興ヤクザにボロボロに負けました。地元ヤクザとは国民党(PP/ペ-ペ-/保守派/党カラーは青)と社会労働者党(PSOE/ペ-セオ-エ/社会主義/党カラーは赤)のことで、新興ヤクザはポデモス党(PODEMOS/新興極左翼/党カラーは紫)とシウダダノス党(Ciudadanos/市民党/党カラーはオレンジ)です。
フランコ独裁政治も終わった1970年代後半にスペインは立憲君主制に戻り、1980年代初めには民主主義国家になりました。国政は2大政党(地元ヤクザの国民党と社会労働者党)が牛耳り、地方政治も似たようなものですが、それに州カラーの党(例えば、バスク州党やカタルーニャ州党)が加わりました。フランコ独裁政時代も体験した僕にもスペインの民主主義はちゃんと歩んできたように映ります。EU(欧州連合)にもユーロ(欧州統一通貨連盟)にも加入出来たのがその証です。そのスペイン民主主義が熟年期に入ってきたと思わせる結果の地方選でした、が政治評論家のコメントです。
熟年期に入り始めると、小さい不満を訴え始める民衆とそれをなだめる政府との間のケンカが頻発になります。その他愛も無いケンカも記事に取り上げるが“表現”の自由に守られたメディアです。ボヤを大火事にしても問われることも無く、それどころか夫婦ゲンカに油を注ぎ離婚へ持ち込ませます。ケンカの一つの決着をつけるのが、今年の末(11月末か12月)に予定されている総選挙です。このままでは今回の地方選の結果が年末の総選挙になりそうです。
政治献金や汚職で私腹を肥やすためになった政治屋の集団が地元ヤクザです。新興ヤクザも出元がはっきりしない政治資金を元手にバクチを打って儲けたような愚連隊(ポデモス党)や国策よりも与党をド突くのを目的とした脅し屋(シウダダノス党)などです。その中でも破竹の勢いだったのがポデモス党で、その極左翼勢力は極左翼本家・スペイン共産党(IU/左翼連合と呼ばれてますが母体は旧共産党です)を蹴散らしました。共産党は共食いされて、ほぼ消滅です。
中道派のピンク党(躍進民主党/UPyDのことですが党首の名前がロサ《ピンク》なので、党カラーがピンクです)もオレンジ党に(シウダダノス党のことですが、党カラーがオレンジ)に潰されて、次の総選挙には党首・ロサ・ディエス(Rosa Diez)は出馬しません。新興極左翼・ポデモス党の名が「社会民主主義より」を意味するスペイン語のポール・デモクラシア・ソシアル(PorDemocracia Social 最後のソシアルのSをスと発音します)から来ていることも知らなかった政治オンチの僕です。若いのがドヤドヤと出てきて、できるぜ、できるぜ、とわめくので、できる党=ポデモス党と思っていました。
バルのオヤジ達のサッカー・リーグ戦程度の政治知識と思って下さい。百頭の羊の群れに草を食べさせながら一頭も見失わずに小屋へ連れて帰る羊飼いの仕事もキツイですが、血を流しながら向かってくる一頭の闘牛を一枚のムレタ(muleta/赤い布)でかわす闘牛士の仕事は命がけです。スペイン現首相のラホイ(PP/国民党)は次の総選挙にも出馬するつもりだが、羊飼いになるのか、闘牛士になるのかがハッキリしない性格にはメディアもバルのオヤジ達もイライラします。
イギリス人は選挙でしくじったら辞めますが、スペイン政治家は公約を果たせなくても辞めません。 このラホイ首相は臨機応変に気の利いた対応をその場でするのが苦手のタイプなので、まどろっこしいのです。 バルのオヤジ達としては、ひと突きで闘牛(ポデモス党)を仕留めるのか、反対に(ポデモス党の)角に刺されるのかを賭けます。命をかけた闘牛士にはなれないラホイ首相には見切りをつけて、新しい首相候補を望んでいます。やはりラホイ首相は羊飼い程度でしょう。
ここで、ちょっと写真を見て下さい。全国紙・エル・ムンドの投票結果のスペイン地図です。州長選結果も市長選結果の写真も上部の大きいのが2015年ので下のは前回のです。両方とも票数(獲得議席数)第一の党カラーです。青色が国民党で赤色が社会労働者党です。青が圧倒的に多いので、国民党は一番票数が多かったのは分かりますが、問題は過半数の議席数を確保できなかったことです。250万票も失いました。
州首選結果(El Mundo)
市長選結果(El Mundo)
その結果、この2週間で国民党、社会労働者党、ポデモス党、シウダダノス党は各々の州、市で駆け引きをします。6月13日には州長や市長になった党が分かりますが、青と赤は減り、紫(ポデモス党)とオレンジ(シウダダノス党)で埋まってるでしょう。こうなったら国民党は首相も党員も若返りをして総選挙に臨まないと、社会労働者党とポデモス党の左派連合に押しつぶされるのは確実です。
大した資産も持っていない絵描きの僕としては、スペインがロシアやベネズエラのようになっても失うものはありません。ただ、働きもしない奴らの生活費を負担させられるのと、スーパーの棚がいつも空になるのだけはゴメンです。まぁ、極左翼政府はワイナリーを接収しないでしょうが、なったら、ドブロクを密造します。