マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

よみがえれ!海賊!夢よ、もう一度!(その2)

2012-05-05 15:30:00 | スペイン日記

大航海時代の帆船

 大航海時代にスペインを出港して中南米へ向かう帆船は、アフリカ沿岸をカナリア諸島に向いました(南下です)。北東の貿易風を待つのですが、島が最後の陸となります。貿易風に乗ったら、大西洋を一気に渡りカリブ海へ着くのです。これが行きで、南回りです。帰りは北回りで、キューバからフロリダ半島にそって上ります(北へ向います)。西風に乗って大西洋を渡り、スペインへ戻りました。

 大方がこの航路だったので、沈没船はそのどこかにあるはずです。大航海時代の一つの目安ですが、スペインを出た船が2ヶ月経っても中南米に着いていなかったら、難破したとみなされました。帰国航路も同様です。海洋ものにシロウトな僕は、次に出た船が目的港に着いて前の船が着いていなのが分かる訳ですが、次々に難破をしたり、隊を組んだとしても、船団全てが難破をしたらどうなるのでしょう?

 スペイン王国の時代はスペイン-中南米航路は定期航路で、日本の東海道線のように船の行き来が頻繁だったので把握できましたが、GPSの現代ではイライラさせられる時間感覚です。フンカル丸の沈没は他の船が港へ引き返し、乗組員も漂着できたので分かりました。「財宝450億円を奪われた海賊」で書いたメルセデス丸の沈没はポルトガル沖で、陸に近かったことと、暴風雨ではなく砲撃だったので記録は残りました。21世紀になって沈没記録が重要な役割を持つとは、当時は考えもしなかったでしょう。

 ちなみに大西洋の海底で一番沈没船が多いのはスペインとモロッコの間のジブラルタル海峡ですが、そこのカディス沖にはローマ時代からの船も含めて、ざっと、1500隻は沈んで居ます。13世紀から19世紀の間に大西洋で沈んだスペイン王国の船は、少なくても800隻はありそうです。その中で、どれくらいの船が金銀を積んでいたのか?

 それは、見方を変えれば、いかに中南米の金銀を奪ったかですが、ここでスペイン文部省は船積み書などの記録も引っ張りだしてきて沈没船の積み荷を調べ始めました。スペインが2005年に批准したユネスコの水中文化遺産保護条約は2009年に発効されました。100年以上海底に眠っている船に適用され、海賊から財宝を守ります。スペインはそれを使って財宝を保護するつもりですが、全ての記録書を床に並べると45キロメートルの長さになり、4年から5年の調査時間が必要です。

 それも財務危機に喘ぐスペイン政府が調査予算を認めたら、の話しです。沈没船が眠っている領海国に一番権限がありそうなので、オデュッセイアは急いでいるのです。しかし、歴史は怖いものです。スペイン王国が中南米の植民地財産を搾取した罰でしょうか、いや、滅亡したインカ帝国の呪いかも知れません。今世紀に入ってから、旧植民地の反乱ではないのか、と思える出来事があっちこっちの国でスペインに対して起きています。

 ベネズエラのチャベス大統領はキューバのカストロの信奉者なのですが、自国の石油会社など外貨を稼げる事業を次々と国有化しました。スペインの銀行も取り上げられました。関係ない話しですが、そんなチャベスのベネズエラですが、ミス・ワールドやミス・ユニバースを沢山産出する美女づくりが盛んな国です。土着のベネズエラ人とスペイン人の血が混ざったお陰でしょうか?

 話は戻って、それに習ったように、数年前にアルゼンチン政府はアルゼンチン航空を国有化しました。それを持っていたスペイン一の旅行会社は数年後に潰れました。先月はそのアルゼンチンのクリスティーナ大統領が石油会社イ・ペ・エフェ(YPF)を国有化しました。YPFはスペインの大石油会社・レプソル(Repsol)のアルゼンチン子会社です。レプソルは日本のホンダ・レーシングの大スポンサーでもあります。5月初めにはボリビア政府が自国の送電事業を請け負っているスペイン電力エレ・エ・エ(REE) を国有化しました。

 アルゼンチンもボリビアも、スペイン側による投資不足を、国有化の表向きの言い訳に使っています。国の基幹事業だから、もっと金を注ぎ込み近代化せよ、との言い分です。国有化した分の株はいつか払う、と言いますが、スペイン人は誰も信じません。中南米諸国への貸付は、ペセタ(Peseta)の時代もユーロになってからも、ほとんど返済されていません。歴史の金銀銅の代わりとばかり、借り逃げです。

 「それは独断と偏見だろう」と思っていたのですが、アルゼンチン人の詐欺上手をマドリード生活で納得しました。「宝くじが当たったけど換金へ行ってる時間がないので、あんたに賞金の半額で売る」と騙されるスペイン人の爺さん婆さんは度を越した世間知らずだが、この類の手口は良く聞きます。新聞やTVでも「ご注意」を促していました。

 昔から多かった外国人なので、マドリードには牛肉レストランからタンゴの劇場まであり、ブエノスアイレスを味わえます。もう全ての旧植民地国は独立していますが、サッカー、文化・教育など繋がりは強いです。スペインとそれらの国の間柄が親子、兄弟のようにみえるのは、僕がスペイン語圏外の外国人だからでしょうか。


レアルの旗を首に巻いた女神

 そうそう、レアル・マドリーがスペイン・リーグ・チャンピオンになりました。残り2試合の勝敗に関係なくチャンピオンです。その2試合にも勝てば、バルサァのひとリーグでの勝ち星数を打ち破る、おまけが付きます。昨日の午後はマドリードのシベレス広場(la Plaza de Cibeles)がレアルの白で埋まりました。女神の首にはレアルの旗が巻かれました。サッカーなど、全てのスポーツは不景気の憂さ晴らしなるのが素晴らしい。
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