マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

おお!銀座!

2015-11-20 11:00:00 | スペイン日記

「地中海の浜辺で」展

 東京での個展は大勢の方々に観て頂きました。2週間の企画展だったので、真ん中の日曜日も画廊をオープンしました。銀座の画廊では日曜日クローズが当たり前ですが、開けたおかげで地方に住んでいる友達が来てくれました。秋なので、庭先のもぎたてのリンゴや柿を貰いました。話が食べ物に走りそうですが、スペインにもリンゴも柿もあります。40年前のスペイン柿は渋柿で口が曲がりましたが、数年前から甘くなりました。スペインには近所の国に輸出するほどに果物の種類や量は豊富で太陽の恵か、美味しいです。違いは「みずみずしさ」です。そりゃ、もぎたてだから当たり前、の話ではありません。少々日がたっていても日本の果物はかじると口の両端から汁がこぼれ出るほどジューシーです。思わず、ずずず~とすすってしまいますね。そんな些細なところの日本の美味しさが外国人を惹きつけるのだと思います。

 おっと、食べ物はさておき、個展の話です。作品は小さいサイズなので、正直、壁に並べるのにえらい時間がかかりました。大人5人で一日かかりました。並び替えも一切せずにです。300点ほど制作しましたが、画廊の壁には260点ほどが並びました。一つの作品を二本のピンを刺して壁にかけるので、500本以上のピンが必要でした。丸いポッチ頭付きのピンなので、初めは指で刺していました。50本目当たりから親指が痛くなったので小ぶりのカナヅチで打ち始めました。ところがピンが短いのでおさえる親指と人差し指もたたきました。個展タイトル「地中海の浜辺で」をイメージして、作品は波打ち際のように~~に並べました。飾り付けが終わり用具などを片付けた画廊の壁をくるりと眺めました。白い壁の空間だったのが、ブルーの作品と色とりどりの「箱」のラインがうまく「波打ち」ました。



260点の作品を並べました

 マドリードのアトリエでプランニングした飾り付けの下描きが現実となりました。絵描きの多くは画廊で作品を並べて、初めて全作品が展望できるものです。満足をして、近くの居酒屋で手伝ってくれた友達とカンパイ!です。マドリードでも居酒屋がバルになり、カンパイがサルゥ(salud)になるだけで、個展のたびに同じことをやってます。居酒屋では刺し身やヤキトリやおでんですが、バルでは生ハム、イカリング、トルティージャ(tortilla /スペインオムレツ)となります。個展会期中は初めに書いたとおりですが、昼飯を食べ損なう日もありました。ここがマドリードと大きく違う点で、スペインでは2時に画廊は閉まり、午後4時か5時に再び開けるので、バッチリ食べます。と言っても、スペインの展覧会はひと月単位なので、画家が画廊に顔を出すのは午後だけか週末です。

 今回「いいなぁ」と思ったのは、「銀座の画廊ツアー」です。小学生から爺さんまでの50人ほどのグループが学芸員に引率をされての画廊巡りです。僕も彼らの前で「地中海の浜辺で」のイキサツを話しました。一般の人には画廊は敷居の高いところだと思います。ましてやビルの2階3階にある画廊は入りにくいです。奥ゆかしい日本人に画廊に入って展覧会を観てもらうにはとても良いアイデアだと思いました。マドリードのスペイン人は気軽にギャラリーのドアを開ますが、美術館のガイドがグループを引率するような学芸員のギャラリーツアーはいいと思います。画廊が集中する東京の銀座だから出来るツアーですが、マドリードのギャラリーはバラバラと散在してます。レイナ・ソフィア美術館の近くに現代美術だけを扱うギャラリーが並ぶ通りがあるので、やるとしたらそこですね。でも、ギャラリーとギャラリーの間にはバルがあり、それも圧倒的にバルの数が多いのがマドリードなので、そっちのツアーの方がオイシソウ。マドリードの美術館の中にも必ずバルがありワインを飲めるけど、日本の美術館はノン・アルコールでした?



波打ち際

 「日本の秋」も楽しんだ短い滞日でしたが、スペインへ戻る日は「パリ同時テロ」に出くわしました。東京-マドリードの直行便はないので、今回はフランクフルト空港での乗り継ぎでした。パリではなかったのは不幸中の幸いでしたが、ドイツなのに、空港内の旅行者は数少なく、小型機関銃を持った警官が警備をしていました。セキュリティは厳しくて、「裸の姿」が映るスキャンを通されました。陸続きで移民が当たり前のヨーロッパではテロは防げません。マドリードの生活では日常的にアラブ人、中南米人、中国人と接します。銀座の「爆買い」中国人には驚きませんし、家の近くには大理石をふんだんに使ったヨーロッパ最大のメスキータがあるので美味しいアラブ料理にありつけます。スペイン人にとっての痛手は、「パリ同時テロ」でサッカー試合が中止/延期になったことです。IS(イスラム国)は21世紀のペストです。ペストの流行った17世紀のスペインように、ネズミを見つけたら叩き殺すだけが庶民のできる防衛です。寝ている時に噛まれないように、怯えて暮らすしかありません。小心者の僕はワインを飲んで寝ます。


銀座の画廊ツアー
コメント
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