マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

戻ったマドリードで老後を悩む

2013-11-26 10:34:50 | スペイン日記

道路にできたゴミの山

 マドリードへ戻った僕を迎えてくれたのはゴミの山だった。清掃員のスト11日目とかで街角はゴミの山。空港から街中へ入ったらビニール袋の散乱、と言う光景を前にも見たけど、あれはローマだったか?はてはアテネだったか?パリだったかも知れない。旅の疲れが倍になるし、新婚旅行だったら可哀そう。我が家に着いた翌日にはストが終わって道路は綺麗になったけれど、焼かれたゴミ箱の残骸は放置されていた。あんなものに火を点けて、何の意味があるのだ!

 日本には2週間足らずしか居なかったが、マドリードへ戻ってからの時差ボケが消えないので困った。若い頃は1日で消えた時差ボケが歳とともに消えにくくなった。当たり前だが日本時間の寝る時間と起きる時間に眠くなる。それらの時間に当たるがスペインの昼の食事と夕食の時間です。昼メシは2時から3時ころだけど、丁度日本では布団に入る夜の11時頃に当たります。

昼からワインを飲むので食後は眠くなるのでシエスタ(午睡)をしますから、30分か1時間くらいで目が覚めるなら問題はありません。ところが時差ボケで日没まで本格的に寝入ってしまう。スペインの夕食は9時から10時ころだけど、これもワインを飲むとは言え、食べたあとの睡魔は尋常ではない。日本では起きる前の心地よい眠りにおちいっている時間です。そのまま寝ると明け方の5時に目が覚めて、生活パターンが老人化してしまいます。

 マドリードから東京へ戻った時は個展と言う仕事のせいかそれなりに緊張があったので、あまり時差ボケを感じなかった。それに電車の中で適当に「こっくり」が出来た。居眠りをしてもドロボーされないので、日本は安心だった。スペインなら何かを盗まれる。もっともメトロの中では物貰いやギター弾きがうるさいので寝てはいられない。車内でケータイはご法度の日本とは違い、スペイン人(女性は年齢に関係なく)は大声で長々としゃべり、やかましい。降りても歩きながらしゃべり続けています(ホント、口から生まれたと思う)。

 僕の時差ボケ対策は「日を浴びる」だけど、生憎毎日雨だった。やっと時差ボケから開放されたのがマドリードへ戻って10日目でした。夏の太陽がガンガンの季節では感じない時差ボケは冬では長引きます(風邪みたいですが)。


スト解除が夜中になったので掃除を始めたおっさん清掃員。市から請け負った民間会社が清掃するので、ストの原因は会社と清掃員の対立だが、市民の意見では市長が悪い。

 日本では個展の他にクラス会もあったけど、みな同じようにジジイになったのが嬉しかった。これが、自分一人が浦島太郎のようになっていたらショックだが、皆一緒に白髪頭で薄くなっているのが同級生でいいですね。そのクラス会でも聞かれたが、マドリードでもスペイン人からも聞かれるのが、ヤマダ、マドリードで死ぬの? だ。それなりの歳だし、「明日ポックリ」なんてもありえるので、当たり前の話題です。

 大雑把に言えば、僕は日本20年間、スペイン40年間なのでマドリードの生活が日本の倍になります。今回も両親の墓参りをしたけど、スペインの墓地よりも日本の墓地の方が僕は好きです。土葬のスペインは一つの墓に家族が積み重なって永眠するが、火葬の日本は壺が並ぶのが気にいっている。でも死んだらどっちでも同じなので、その質問には「その時にならないと分かんないよ」と答えています。

 時差ボケの合間に読んだ新聞ではスペイン経済は暗澹たる状態が続き、失業者も相変わらず多い。外国投資家がスペイン企業に再び投資するようになった、と言っていたがそれが庶民のフトコロに届くのはまだまだ先の話です。それどころか、スペイン人口の減少が始まった、と暗いニュースは尽きない。10年後の2023年は死亡者数が生まれる人数を超えるだけではなく、スペイン人の国外への移民は国内へ入ってくる移民者数を超える予想です。


2013年のソル広場だけど、2023年は老人が溢れる。

 人口はこの10年の間に2百60万人減少するが、それは今の人口の5,4%が減ることです。今年だけでも4,680万人から4,670万人と10万人、0,5%減ったそうです。その結果、2023年はスペイン人口のほぼ四分の一は65歳以上の老人となり、その頃の寿命は男81,8歳、女87歳でスペインも「超」高齢化社会になる。問題なのは全人口が減ることよりも、20歳~49歳の働き盛りの4百70万人が消える可能性があることだ。移民者が一人増えてもスペイン人の労働者二人が国外へ出てしまうからで、つまり年金者を支える層が減ってしまうのです。

 スペインで教育されて一人前なった技術者はドイツへ移民するのが多いので、結局ドイツ年金者のために働くことになってしまう。最近スペインへ流れ込んでくる移民者はルーマニア人ジプシ-が多いが、彼らが全うな仕事に就いて納税することはない。大半がドロボーを生業(!)としているので、納税どころか国民年金保険料も払わない。

 う~ん、こうなってくると自分の老後をスペインで過ごすか日本で過ごすかを考えてしまう。決して日本の老後もバラ色とは言えないが温泉やスーパー銭湯には惹かれる。人ごとではないが日本では深刻になってしまう自分の老後とそれに続く死も、マドリードへ戻るとケセラセラとなる。オレは二重人格者じゃないのか?と疑ってしまう。経済的生活苦はスペインの方がひどいが、スペイン人のどうにかなるさ加減は日本人より遥かにおおらかだ。実際、僕もこの2年間はどうにか重税を払い、ワインも飲めた。老後の酒をワインにするのか?日本酒にするのか? 悩みます。
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