マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

年末のセビージャ

2025-01-24 10:00:00 | スペイン日記

スペイン広場

 セビージャ(Sevilla/ スペイン南部アンダルシア州都)へ行ってきました。久しぶりの「年末のセビージャ」でした。マドリードから車で行っていましたが、今回はアベ(AVE/スぺイン新幹線)で行きました。2時間半でした。車では6~7時間かかっていたと思います。車だと寄り道が自由なのであっちフラフラ(風車のラ・マンチャ/La Manchaで食事をしたり)こっちフラフラ(コルドバ/Cordobaでシェリー酒を一杯とか)を楽しみながらのドライブでしたが、歳なので一直線に新幹線で行きました。

大聖堂の中央礼拝堂

 楽は楽ですが、車窓は荒野と畑の繰り返しの退屈極まる風景でした。牛や羊の尻ばかりでした。これだったら飛行機で飛ぶべきでした。マドリードの家からはバラハス空港へ行く方が新幹線のアトーチャ駅よりも近いです。当たり前ですが久しぶりのセビージャは昔のままのセビージャでした。ともかく騒がしい。その騒がしさが大都会マドリードのそれと違うのは、話している言葉がアンダルシア語だからです。スペイン語の語尾をはしょり、早口なのでやかましい。慣れないと半分しか理解できません。

セビージャの街

 口はスピーディーですがやることは遅いです。バルでワインを注文しても持ってくるまではマドリードの倍の時間がかかります。早いのは勘定だけです。駅から宿までタクシーで行きましたが旧市街の道の狭いこと!通行人をかき分けるようにしてタクシーは進みます。こんな狭いところを車で入っていいの?とタクシーのおっさんに聞くとノープロブレム。車のドアと家の壁の間が一センチの路地をタクシー用大型版のプリウスで行きました。常識で考えたら車で侵入すべきではないところに、わざわざ侵入するのがセビージャのタクシー運転手の腕の見せ所のようでした(一般車は進入禁止でもタクシーは可)。

ヒラルダの塔

 今回の宿は大聖堂の隣なので中心街のど真ん中です。なので、運転手に宿の近くまでで良いよ、と言っても、乗った全てのタクシーが通行人を押しのけて宿の前まで行ってくれました(チップは弾みました)。セビージャ名物の馬車には入って来られない路地です。なので、馬糞臭くなかったのが幸いでした。自分の車で来ていた時は大通りの20世紀のホテルに泊まっていましたが、今回は100年前の建物と思われる宿でした(Airbnbで探しました)。素晴らしい改装で、建物の外装は昔のままですが中もよくぞここまで残したなぁ、でした。

マカレナの聖母

 木の支柱を鉄柱で囲って補強して、壁のタイルは昔のまま、中庭も残して、新しく設置したのはエレベーターでした。古い屋敷はトイレや風呂場などの水まわりに支障が多いのですが管を取り換えたのでしょうか、不便はありませんでした。屋上にはバスタブに毛が生えた程度のサイズとは言え、プールまでありました。冬でざんねんでした。目の前は大聖堂のヒラルダの塔です。夜景をシェリー酒片手に楽しみました。愚痴も並べましたが、セビージャは再び訪れたくなる人間臭い街なのです。

サンタ・クルス街の路地

 今回の宿はツーリストが溢れる街中だったので、レストランで苦労をしました。どこも満員でした。中心地を離れれば予約なしで座れるレストランが沢山ありますが、タクシーで戻るのが億劫です。セビージャ料理と言えばフリッターです。子魚やイカを揚げたペスカイート(pescaito)です。馬車の御者が教えてくれたレストランのペスカイートは新鮮なカタクチイワシを上質のオリーブオイルで揚げたのでしょうか、おいしかったです。

屋敷の見事な改装

 それにしても、溢れる数のツーリストでした。クリスマス休暇を暖かいセビージャで過ごす北欧人は薄着で「ビール片手」ですが、マドリードから来た僕には肌寒いので「赤ワイン片手」でした。夜はオーバーを羽織りました。セビージャは春と夏がグッドタイミングですが、真夏の日中の50度だけは勘弁です。老人はアジの開き干しになります。また近いうちに戻りたいセビージャですが、オーバーツーリズムはどうにかして欲しいです。

ペスカイート


FELIZ AÑO NUEVO

2025-01-06 10:00:00 | スペイン日記

FELIZ AÑO NUEVO

   2025

謹賀新年

 

ヤマダトミオ展

2025106日(月)~18日(土)

ギャラリーK

104-0031 東京都中央区京橋3-9-7 

京橋ポイントビル4F

03-3563-4578 www.galleryk.la.coocan.jp

 

ギャラリーKは前回のギャラリーQから徒歩5分です。再会を楽しみにしています。

ヤマダトミオ tomio522@gmail.com


バレンシアの大洪水

2024-11-13 11:30:00 | スペイン日記

流された車や家具で埋まった道路

 

 バレンシア(Valencia)はスペインの東部、地中海沿岸の都市です。ラス・ファジャス(Las Fallas)と呼ばれる“火祭り”で有名です。そこで起きた大洪水は日本でもニュースになりました。集中豪雨で川が氾濫して大洪水になりました。降ったのは一年間分の雨量だったので、人も車も歩道橋も道路も地中海へと流されました。

 

 バレンシア市内は洪水からは免れましたが、市外のベッドタウンが甚大な被害に遭いました。アルブフェラ(Albufera)と呼ばれるバレンシアの米どころと面する地区は全て流されました。死者は220人以上、いまだに行方不明者は30人近くです。被害に遭った住民は避難勧告が遅かった、と州知事や政府を非難しました。今回の規模の大洪水は1957年以来です。

洪水で崩れた家

 

 当時はバレンシア市内が被害に遭いました。それを教訓に市内を流れていた川を市外へ移動させました。川幅200mの新しい川を造りました。今回氾濫した川はその移動された川より南にある細い川(川幅25m)でした。道路も鉄道も不通になったので初期援助活動が遅れました。今は軍隊がインフラの復旧や援助活動をしています。全国から集まったボランティアは洪水に遭った家の掃除の手伝いや食料品や日用品の配給をします。

道路は歩く場所もない

 

 国王夫妻は首相や州知事を同伴して被災地の慰問に訪れましたが住民からは泥玉を投げつけられました。首相は真っ先に逃げましたが国王は一人で残り、住民の怒りを聞き、宥めました。住民の怒りの矛先は首相や州知事であって、彼らを同伴してしまったのが過ちでした。国王はとばっちりを受けたのです。その後、州知事や首相の辞任を叫ぶデモがありました。州知事は今回の不手際を詫び、今は復旧が先決であり辞任をする時ではない、と声明を出しました。

 

線路は壊れ、流された車やゴミに覆われた

大洪水のあと

 

怒る住民から泥玉をなげつけられる国王と州知事

 

全国から駆け付けたボランティアたち

怒りのデモ

 

 


チンチョン

2024-09-30 10:00:00 | スペイン日記

チンチョン村

 チンチョン(Chinchón)へお昼を食べに行ってきました。地獄の暑さだった夏が過ぎさりマドリードにも秋が訪れました。朝晩は肌寒い10度ですが日中は25度を超えるので汗をかきます。郊外の気持ち良い秋に包まれて食事がしたくなったのでチンチョンへ行きました。家から車で40分くらいのマドリードの南東にある村です。

マヨール広場:闘牛場が造られています

 観光保護に指定された村並み(街並み?)は昔のままです。ニンニクとアニス酒の名産地です。本当に小さい村なので村に入ったらその辺に車を置いて歩いたほうが早いです。中心のマヨール広場(大広場)はいつもなら駐車場ですが、闘牛場が造られていました。

マヨール広場

 10月は闘牛が催されます。その広場を木造の三階建ての建物が囲み、一階は柱廊、二階三階はバルコニーになっています。そのバルコニーから闘牛も観戦できます。闘牛シーズンが済んだらそのバルコニーは舞台になります。その時は広場に椅子が並び観劇を楽しみます。

広場を囲む柱廊

 そのバルコニーの一つで食事をしました。レストランは部屋にも中庭にもテーブルが並び、バルもありますが、広場を見渡すバルコニーにしました。日よけに遮られた秋の陽は柔らかく気持ちよい席でした。目の前に広がる大広場と抜けるように青い秋空に目を楽しませながら食べたラムの丸焼きは柔らかく絶品でした。

 バルコニーから見た広場

 ウナギではありませんが、骨付きラムの丸焼きを食べると力がつきます。絵の制作に馬力がでます。近所のスーパーに買い物に行くような感じで行ける“美味しい村”があるのは幸せです。ついでにニンニクやパンやアニス酒入りお菓子も買ってきました。隣村の名産地メロンも売っていましたが、食べきれない数の箱売りだったので諦めました。食欲の秋です。

仮設ですがガッチリ組まれた闘牛場

中庭

村の通り

ラムの丸焼き

 

 

 


夏の終わりの金箔展

2024-09-02 10:00:00 | スペイン日記

金箔展

 マドリードの午後は40度を超える日がひと月続き、30度を下らない夜もしばらく続きました。体に触れる空気が一日中熱く乾燥していました。人込みの飲み屋街へ出かける気にならず家でビールを飲んでいました。それが、あと3日で8月は終わる日に雷雨になりました。

 

 僕の住んでいる地区は大した量の雨ではありませんでしたが、気温が下がりました。都心へ出かける気になったので「金箔展」を観に行きました。日本の金箔の屛風絵、襖絵、扇子が展示されていました。カイシャ・フォルム(Caixa Forum)美術館の近くのマドリード市立セレリア・ベルガ文化センター(Serreria Belga )で開催中でした。

入り口

 フラッシュ禁止なので上手く撮れなかった写真ですが、見ての通り平日の午前中にしてはかなりの入場者でした。着物展も一緒に開催中で“ミニ日本文化展”でした。

会場内

 話は変わりますが、今年の夏ほどサッカー、サッカーで盛り上がったスペインは初めてで、ヨーロッパカップの優勝だけではなくオリンピックでも優勝しました。スペイン人の応援は熱がこもりすぎて酷暑がもっと暑くなりました。

会場内

 そんな夏は終わり9月からはマドリードはいつもの通勤ラッシュに戻り、新学期の始まりです。アトリエも暑かったので怠けましたが、僕もヴァカンス気分は捨てて制作を再開します。不思議なことに涼しくなると体が動き始めます。夏は太陽が肌を射るように熱く、冬は石畳が凍るのがマドリードです。その間の秋は毎日が貴重です。

 

会場内

着物展