マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

夏のトマト

2014-08-18 12:12:12 | スペイン日記

ピスト。うっすらと光るのは食べる時にかけたエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルです。

 どこにいても夏は暑いのだ、とこんがりと焼けた人は言いますが、マドリードの暑さにはもううんざりだょ、と僕は毎年ぼやいています。東京は湿気のある暑さですが、マドリードはそれがないぶん日差しは刺すように痛いです。どちらを取るかは好き好きですが、僕は湿気が苦手なのでマドリードに居ます。それに8月はヴァカンスなので、初めの2週間くらいの市内は人も車も嘘のように減るので、日差しが弱まる夕方にブラブラと都心へ飲みに出かけます。

 困るのは、飲み屋が軒並みヴァカンス休みで閉まっていることですが、一昔に比べたら開けているバルが増えました。ツーリストが増えたお陰だと思いますが、どっこい、行きつけのバルにはいつものオヤジはおらず、親戚とかアルバイトとかがやっていて面白くないです。いつもの飲み友達も田舎へ帰っているので、まぁ、夏は庭で「一人ビアガーデン」が無難なようです。一人でブツブツ言っているうちに、うちのお隣さんもヴァカンスから帰ってきて、真っ赤なトマトやとりたての野菜をくれました。

 別にヴァカンス先から持ってきたのではありません。隣りの旦那は親の代からマドリードの近郊に家と畑を持っています(場所を何回聞いても忘れる)。今は空き家で彼らの畑は隣りの畑の農夫が使っているとかで、その畑の借り賃の代わりがとれた野菜のようです。なので、ヴァカンスから戻ると畑に行って、トマトやピーマンやナスやズッキーニの夏野菜はもちろんのこと、ニンニクまでもドサッと持ってきます。

 この隣り夫婦は息子二人、娘二人、奥さんのお母さんの家族構成ですが、子どもたちは独立したので今はおばあちゃんと夫婦だけです。僕がいつも困るのは双子の娘たちで、彼女らが中学生頃から知っているのに本当に瓜二つなので、バラバラに帰ってくるとどっちがどっちだか全くわかりません。兎も角スペインは双子が多いところで、隣りの旦那(と言ってももう70すぎ)は兄弟姉妹が多いのですが、二組は双子です(6人か8人兄弟だと思う。紹介されてもすぐ忘れてしまう)。

 そんな訳で、たくさんの野菜はたくさんの家族で分けるのですが、それでも捌き切れないので僕にもおこぼれが回ってきます。これにはわけがあって、僕の家には小学生二人くらいが入れる中型冷凍庫があるので、まだ隣りの子どもたちが居た頃から、まとめ買いしてきた時にはウチの冷凍庫に預かったのです。

 今も預かっていますが隣の夫婦も歳をとったので預けてあるのを忘れます。だから時たま、ほらウサギ(隣の夫婦はウサギ好きで家族が集まるとウサギ料理です)、あの羊、まだ子豚があるよ、と僕が冷凍庫に預かっているものを挨拶代わりに言います。

 まぁ、その冷凍庫保管代のお返しが野菜ですね。僕は日本食の保存に大きめ冷凍庫が必要です。昔は醤油、味噌、梅干し、だしの素、しいたけ、ノリなど持ってこられるものは日本から持ってきてましたが、最近はマドリードでも買えるので「密輸」は減りました。それはそれで有難いのですが、歳とともに銘柄にこだわるようになり、困ったものです。

 例えば、味噌にしても◯◯産の☓☓味噌、昆布も出し汁用とおでん用、ノリも磯のり(一昔の浅草海苔のほうでお好み焼きにかけるほうではありません)と寿司ノリの両方は欲しいし、ひじきも長ひじきと芽ひじきがありますが、浜によって味の違いがあるのが分かってからは大変です(僕のひじき煮にはひよこ豆が入ります)。

 もうきりがないので適当に妥協しないと外国では生きていけませんが、マドリードの食料品店では痒い所に手が届か無いのです。だから手に入ったら凍らせて保存します。マドリードの家庭は日本の家庭にある冷凍冷蔵庫とほぼ同サイズか、一回り大きいくらいで、アメリカの映画に出てくるような馬鹿デカイのは一般的ではありません。隣りはそれでも2台の冷凍冷蔵庫がありますが、夫婦揃って料理好きなので保存には足りません。

 そうそう、隣りの夫婦の名前は旦那がホセ・マヌエル(Jose Manuel)、奥さんはジェジェ(マリア・デ・ニエベの愛称/Maria de Nieve)です。ホセ・マヌエルの両親はバスク人(バスク州はスペイン北東部で隣りはフランスです)なので、その血をついでる彼も根っからの料理好きです。僕も野菜は大好きなので、いっぱい貰っても良いのですが、調理しないと保存出来ないのが野菜です。

 僕は八百屋に行くと、ついつい買ってしまうのがカボチャとナスです。何故かカボチャが大好きのいかついジジイになってしまい、いつもカボチャグラタンを作ってます。ナスは焼きナスが大好きなので、焼きナス専用のフライパンを持っています。ほら、焼きナスって、汁がこぼれ出ると(出ないように焼くのが一番ですが)フライパンにくっついて固まってしまいます。それを磨くのが面倒なので、フライパン一つをそれ専用にしました。

 この焼きナスにだしつゆをかけ、生姜を振りますが、スペイン人は(隣の夫婦ですが)食べません。スペイン人のナス料理は地中海風に羊肉と一緒にオーブン焼きです。あと、子どもの時にはそうでもなかったのにピーマンが好きになって、キュウリ同様に丸かじりしちゃいます。あの青臭さがたまらないのです。こんなに野菜好きになったのはスペインの野菜が元気だからです。

 さて、この山ほど貰ったトマトをどうするか?ですが、僕はガスパチョとピストをつくります。痛いほどの日差しを浴びたもぎたてのトマトなので、テラスの日向にちょっと置いておくだけで皮が破れます。湯通しせずに皮がむけます。ガスパチョ(gazpacho)の作り方は以前のブログにも書いたので(うっ!ふぅぅ~、のペナルティ・キックとサハラの熱さにはガスパチョ!)、今回はピスト(Pisto)の作り方です。


ピストの野菜たち:ズッキーニ、トマト、たまねぎ、ニンニク、ピーマン。ズッキーニをキュウリに取り替えたのがガスパチョの材料です。

 チョー簡単で、完熟トマト(大4個)、ズッキーニ(一本)、ピーマン(一個)、たまねぎ(一個)、ニンニク(一欠片)をブツ切りにしてたっぷりのオリーブオイル(大さじ5杯)で炒め、砂糖を小さじ一杯、塩少々を加えるだけです。ハーブは好みですが、僕はパプリカとタイムとオレガノ、そうそう、黒コショウもふります。


ちょっと日を浴びただけで皮が破れたもぎたてトマト。


ブツ切りはこんな感じです。右上の白ワインはピストには関係ありません。作りながら一杯やってるだけです。


炒めながら煮込んでいます。


ハーブです。時計回りにパプリカ→オレガノ→黒コショウ→タイム。


エキストラ・ヴァージン・オリーブオイルです。食べるときにかけるといい香りです。


僕はピストを目玉焼きと食べるのが好きです。

 これはスペインのラ・マンチャ地方の料理で、スペイン人はクタクタに炒めこんだのが好きですが、僕はトマトはクタクタで他の野菜は半生くらいが好きです。作った翌日に食べるほうがピストもガスパチョも美味しいです。冷蔵庫で1週間は保存できます。


これはガスパチョです。

 ピストを作った翌日は、明け方が涼しかったのでぐっすり寝込んでしまい、目が覚めたら10時だった。まぁ、10時45分には家の前の教会の鐘が鳴るので、11時前には起こされます。昼のミサを告げる鐘の音ですが、鐘が十数回も360度回る(つまり一回転)ので、凄くうるさいのです。ちょっと教会の鐘に詳しい人には(そんな人は居ないか)180度振れる鐘の音と360度回る鐘の音のキチガイ度の違いが分ってくれるはずです。ミサに来なさい!罰当たりども!ミサに来なさい!と喚いているみたいです。

 遠くの丘にへばりつくひなびた村をスケッチしている時に聞こえてくる教会の鐘の音はのどかですが、目と鼻の先にあるとクソ暑さが倍になります。おっと、教会の鐘にまでいちゃもんをつけるようになるともう老人性被害妄想症なので、気をつけなければ・・。昨日のピストは都合よくブランチになりました。
コメント (1)
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