マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

赤ワインの友

2017-02-20 17:00:00 | スペイン日記

 

 

イベリコ豚のチョリッソ

 

 

 冬は赤ワイン(vino tinto)で体を温めますが、あの、北ヨーロッパのホットワインには“ちょっとぉぉ”です。マイナス20度の北の街での飲み歩きにはぴったりのホットワインですがマドリードでは常温ワインです。でも、ドイツ人がホットワインのつまみに齧るフランクフルトソーセージは旨そうです。ホットワインは甘いのでフランクフルトソーセージの塩と塗った辛子が合うのでしょう。


 寒い、寒いと言っても、マドリードの冷え込みはマイナス5度くらいです。それも夜明け前なのでマドリっ子の多くは寝ています。僕なんて、布団に入る時間です。冬の深夜、マドリードのバルで飲んでいて、さぁ、帰るかぁ、まだ終電にも間に合うよなぁ、と飲み友達と外に出たときはプラス1度か2度です。顔はワインでポカポカ赤顔です。終電とはマドリードなのでメトロの終電ですが地下は暖かいので上着を脱いでしまいます。


 そのワインですが、白よりも赤を飲むと、なぜかツマミが欲しくなります。タパス(tapas)はバルのツマミの定番の言葉となりました。ツマミと言うよりも「当店自慢の突き出し」、居酒屋の一品料理に近いです。本来マドリードのバルではワインのツマミはタダですが、タパスは金をとられます。ツマミはワインの友で、それ込みがワイン一杯の値段でした。アセイツナ(aceituna/オリーブの実)が一般的なツマミでした。昔、まだスペイン通貨がペセタ(peseta)の時代だったのでもう20年以上も前の話です。


 マドリードのあるバルがパリジョ(parillo/ 楊枝)に刺した一口ツマミをカウンターに並べました。ピンチョ(pincho)と呼んでいたと思います。ワインを飲みながら勝手にピンチョをつまんで、パリィジョを自分の前に置かれたコップに入れました。日本の串焼き屋や焼き鳥屋で食べた後に串を壺に入れるようなものです。バルのツマミの勘定はコップの中のパリィジョの数から一本抜いた数でした。3人だったら3本抜きます。一本目はいつもの“ワインの友”なのでタダです。パリィジョは日本の楊枝のように丸くなくて平でした。


 それで、トルティージャ(tortilla/スペインオムレツ)やメヒィジョン(mejillon/ムール貝)やハモンセラーノ(jamon serrano/生ハム)などのツマミを刺してありました。当時のバルはえびの皮でも紙でもポイポイと床に捨てるのが当たり前だったので、うっかり床にパリィジョを捨ててしまいました。その時は正直に“自己申告”をしましたが、一、二本なら大目に見てくれました。


 バスク州(スペインの北東、隣はフランス)では昔からバルで出るのはタパスだったのでワインとは別代金でした。缶詰を開けたようなツマミではなくて、手料理の当店自慢のタパスでした。それがマドリードにも持ち込まれて全世界へ“スペインのタパス”と広まったのです。本家はバスクだと思います。


 10年前まではバルでワインを一本空けても運転をして家へ帰れました。夜、走っている車はみな同じように“ちょっと”フラついていました。前を走っている車がフラついたら、クラクションをブーブーと鳴らしてお互いに注意を促していれば事故もなかったです。でも、EU(ヨーロッパ連合)の行儀の良い国民から、それはないだろう、と笑われたのでスペインも飲酒運転の取り締まりが厳しくなりました。

 

 

一つのブタ皮で赤ワイン一杯の友

 仕方がないので僕もメトロかバスで飲みに行くようになりました。これが、億劫です。 だから家呑みが増えました。ツマミは封を切るだけの袋物とか缶を開けるだけの簡単なものです。赤ワインにはチョリッソ(chorizo/腸詰)ですが、アセイツナもいいです。冬は“ブタ皮(コルテッサ/corteza)”を齧りながらワインを飲みます。スーパーでポテトチップスの袋の横にいつも並んでるのが「ブタ皮チップス」です。ビールとも相性が良いのですが、ブタ皮チップスは口の中の水分を吸い取るのでビールの友だとついつい食べすぎます。赤ワインだと齧る程度で済みます。

ビール一杯分の友のブタ皮

 

 赤ワインを飲みながら、南欧と呼ばれる割には、ここは気候的にはきびしいところだなぁ、と思います。「9か月の冬と3か月の夏」がカスティージャ地方の気候です。カスティージャ(castilla)は「城の国」の意味で、地理上ではイベリア半島(スペイン+ポルトガル)の中央台地・メセータ(meseta)の部分です。そのど真ん中に一番大きい王宮(パラシオ・レアル/Palacio Real)を構えるのがマドリードです。


 冒頭の言葉はメセータの土地質と太陽の日照時間が作り出した独自の自然環境のたとえで、もちろん、数週間ですが春と秋もあります。今で言う体感気温のような“体感気候”です。日照時間が少ない冬の間ではメセータは海岸よりも早く温まります。でも日が暮れるとメセータの放熱は“速い”ので冷え込みます。夏の日中は“焦げ付くような熱さ”ですが日が落ちれば涼しい風が流れ込みます。海岸はだんだんと温まり、だんだんと冷めます。

カスティージャ地方・コカの城

 その“だんだん”が無いのがカスティージャです、メセータです。海岸の湿気を含まないカスティージャの空気の中では太陽がハッキリとした陰影を造り出します。この2月はその日照時間が長くなったのを肌で感じ始めます。今、マドリードは冬時間なので日の出は8時過ぎ、日没は7時ころです。そうそう、この月末はカーニバルです。スペインでカーニバルが盛り上がるのは本土ではなくて、アフリカ大陸の横のカナリヤ諸島です。暖かいので裸で踊り狂います。

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