マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

ボチョルノッソ

2016-10-11 17:30:00 | スペイン日記

マドリードの北、グランハ宮殿の秋の庭です

 残暑のきつかったのが9月の初旬でした。ところが急変してマドリードの山には初雪が降りました。オイオイ、冗談はよしてくれよ、と冬物を出したら再び夏に戻りました。コロコロとお天気が変わっても若い子はへそを出したままですが、年寄りは一枚羽織るかワインを一杯やって中から温めないとやっていけません。


 爺臭い話ですが、僕なんかには血圧の上下が心配になるのが季節の変わり目です。春と秋は早目に安定して欲しいので、やっと“日中シャツ一枚/朝晩セーター”のマドリードの秋に落ち着いたので一安心です。暖炉を焚くどころか暖房も要らない程度の朝晩の心地よい冷え込みを味わえるのがマドリードの10月です。ほんの一週間程度の秋で、月末には冬時間になります。今のサマータイムが1時間遅くなります。


 街のギャラリーも2016-2017の展覧会が始まり、届くメール案内が増えました。学校も新学期が始まったので、車が異常に混みます。家の周りには学校が多いだけではなく保育園や幼稚園も多いので(ざっと数えても散歩する範囲には10校はくだらない。ちなみにうちの隣家には保育園になっている家もあります)、朝の9時前後は車の渋滞で身動きがとれません。


 日本は小学生でも定期券をぶら下げて一人で“電車通学”しますが、マドリードでは保護者(家族かお手伝いさん)の送り迎えが義務です。車で来るのが多く、なかには一人の親が自分の子の同級生も乗せて来ています。交代で送り迎えをしているのでしょう。こうなると車道だけではなく歩道も車に占拠されるので歩けません。この“登校渋滞”は朝の一時だけで下校時は部活もあるのか緩いです。近所の住民は迷惑ですが、自分たちの子供もその恩恵に授かっていた時もあったので警察に届けたりはしません。仕方ないので車で出かける時は10時過ぎにします。幸い、画材屋や絵描き関係のものは10時オープンです。日本での“新しいスタート・春”がヨーロッパでは“新秋”なのです。

引きずり降ろされたサンチェス前書記長

 一向に新学期にならないのがスペインの政府です。いまだに前政党・国民党が政権を引き継いでいます。2回も総選挙をやったのに組閣できない話はすでに書きましたが、ここにきて進展がありました。国民党(ペーペー/PP)の再組閣を阻んでいたスペイン社会労働者党(ペーセーオーエ/PSOE)のトップ、サンチェス書記長が引きずり降ろされました。党内の反サンチェス派のクーデターです。直ちに緊急委員会がもたれ、マドリード市内にある党本部に集まった200人程度の委員たちの反対派と賛成派(政敵・国民党のラホイ内閣設立にイエスかノーか)に分かれた罵倒の投げ合い会議は(半)生中継でメディア(TV、ラジオだけではなくネットも)が“料理”しました(いい加減な火加減、適当なスパイスでした)。


 面白そうだったので僕もテレビの前に座ってサッカー試合を観るように観ていました。ワイン片手で。もちろんメディアはシャットアウトの委員会でしたがスマホで“ライヴ”を流した委員も居たので、次期書記長候補のアンダルシア自治州の首長・ディアス女子が混乱ぶりに泣き出したのもメディアに漏れました。党内部がそうなら、党本部前では党員同志の路上バトルとなりました。137年もの歴史をもつスペイン最古の政党はみっともない内ゲバ劇を披露してしまいました。

路上バトル

 党の歴史に泥を塗った顛末にはボチョルノッソ(Bochornoso/恥ずべき)のスペイン語がメディアの与えた“輝くタイトル”でした。常識で考えても、党をまとめられないサンチェスには一国の首相になる資格はないでしょう。書記長なしの社会労働者党は次回の党総会までは暫定委員会が運営をします。その委員長が、取り敢えず政治を続けているラホイ首相(国民党)と話し合いを始めたので再び首相任命選が国会で行われそうです。1031日までに新内閣が誕生しないと、クリスマス前に3回目の総選挙です。有権者は冗談じゃない、と言ってるし、そうなったら社会労働者党は潰れるかも知れません。


 前サンチェス書記長は選挙のたびに議席数を減らしたのに自己反省“全くなし”でした。責任を取っての辞任の「じ」の字も出ないので、いつかは強硬手段を使われるのでは? と誰でも思っていた矢先の“引きずり降ろし”でした。二回目の総選挙で、とうとう史上最悪の84議席数まで減らしただけではなく、ついこの間のバスク州、ガリシア州の地方選でも“ぼろ負け”をしました。責任を取らないサンチェスに政治的危機を感じただけではなく経済的にも党の維持の危機感を、多くの州の首長たちや中央委員たちは感じたようです。

社会労働者党の歴代書記長。今でもドンのゴンサレス(中央)、スペインの財政破綻危機をつくったサパテロ(右)、首相になりそこなったサンチェス(左)

 国から貰う党資金は獲得議席数に比例します。今までの110120議席でもやり繰りがきつかったのに84では首を絞めかねないのは誰でも分かります。党の銀行借金は7500万ユーロ(ほぼ90億円)ですが、利子を6%から3%まで下げて貰ったので党本部の不動産売却を免れているようです。クーデターのほとぼりが冷めたら、サンチェス前書記長がカタルーニャ社会党(ペーセーセ/PSC)を使ってカタルーニャ独立派の政党群と組んで首相の座を手に入れようと目論んだ疑惑が出てきました。


 スペイン社会労働者党は「一つのスペイン」がマニフェストで、カタルーニャ州独立/分離には反対です。10月末の冬時間に変更までは“叩けばホコリ”の「サンチェス・ニュース」の毎日になりそうです。スペイン社会労働者党は真二つに割れただけではなく、割れたそれぞれも“党のマニフェストをズタズタにして忠誠心はバラバラ”の内部状態だそうです。

コメント
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