コロナウイルス禍で9か月間も閉まったままだったマドリードの蚤の市・ラストロが再開をしました。
前回のブログに書きました。9月は家の下水管工事に振り回され、10月は雨漏れでした。その10月末のことでした。家の前の歩道工事を始めます、と“市のお触れ”が門に貼られていました(全く!何で今?でした)。2週間で終わります、と言う工事現場監督はいつもの“スペイン人ジョーク”でした。ひと月たっても終わっていません。いつものことなので笑い流せます。
でも歩道をまたいで車道に出るマイカーは全く使えません。今回は歩道を石畳のようにするので門の下をギリギリまで掘り起こしました。門の鉄柱が倒れないかが心配でした。ローマ時代のように石のブロックを一つ一つ人間の手で土に埋め込むので2週間で終わるはずがありません。この21世紀にそんな為になぜ労力の無駄遣いするのでしょうか?たかが歩道です、それも銀座通りではありません。他に簡易なやり方があるはずです。僕にはわかりませんが見た目を気にするスペインの国民性としか思えません。
それでなくても心配性の僕には今年2020年はコロナウイルス禍でした。「不安、混乱、規制、ロックダウン、マスク、消毒」の毎日はマドリードの老いた日本人には心臓発作手前でした。思えば、歯車の咬み合わせが狂い始めたのを以前から感じていました。去年2019年の秋は東京のギャラリーQでの個展で帰国をしていました。10月11月の日本は台風が来ますので慣れない東京生活にはいつも小さいハプニングは起きていました。電車が止まるとか、画廊を早めに閉めるとか、その程度のことでした。
去年は天皇陛下のお披露目(?)が加わりいつもよりはハプニングが多かった東京でした。幸か不幸か滞在したマンションは皇居のそばでした。幸はその周辺を毎日ジョギングができたことで、不幸は当日前からマンションの周りは警察官だらけでした。それでなくても東京の生活リズムに戸惑っていたマドリードの田舎者の僕にはいささかうんざりする数の警官でした。皇居ジョギングを終えてからマンションまでは歩いて帰っていましたが、その間の各交差点には警官が立っていました。ゴミを出しに行っても巡回中の警官とすれ違いました。
日本のおまわりさんは市民を守ってくれる警官だと思いますが、フランコ独裁時代の警官がトラウマの僕はいまだに制服で“ビビり”ます。そんな神保町をマドリードのアトリエで着ている作業服でフラフラ歩いていると“胡散臭い人をみる視線”を感じていました。マンションから画材屋や文具店のある「すずらん通り」までは歩いて3分なので外出着に着替えるのが面倒でした。ところが出版社が多いからでしょうか、その辺を歩く日本人はきちんとした格好でした。誰がギョーザを食べに行くのにスーツを着てくか!でした。
マドリードだと少々くたびれた服でもバルでワインを飲めます。そりゃ、僕もギャラリーQのある銀座を歩く時はもう少しまともな格好でした。基本的に絵描きには晴れ着は無縁です。東京の個展を終えてマドリードへ戻りひと月休んで、今年2020年の1月末からマドリードの個展制作を始めました。今思うと2月に画材屋へ行っておけば良かったのですが、寒いのでバルでワインを飲んでいました。3月に入りスペインもコロナウイルスでパニックになり、ロックダウンが始まりました。画材屋は閉まり、紙もキャンパスも絵の具も手に入らなくなりました。
マドリードの個展は12月でした。地元での個展なのでオープニングの前日に作品が仕上がっても搬入できます。そのせいか2月はまだ気の緩みもありました。が4月は正直焦りました。そのうち、ギャラリーのオーナーから個展開催は秋まで中止、と連絡がありました。クリスマスのヤマダトミオ展は延期です。再開したらとりあえずは延期になったアーチストの個展が優先です。夏休みの間はロックダウンが解除されていたのと9月の新学期が重なって、秋から感染者数が増え始めました。
仕方ないので再開したギャラリーは個展を一つ開催しただけで再び閉店となりました。オーナーはそれでもめげずに常設展をネット公開と地方自治体の美術館やカルチャーセンターでも始めました。でも僕の個展は2021年のコロナの状況をみて開催月を決めることになりました。マドリードのギャラリーでの個展はひと月単位です。画廊休暇もあるので年間10人のアーチストの個展しか開催しません。
11月になってもスペインの感染者数は増え続けるばかりでした。ところがマドリード州は減り始めました。マドリード市内の区ロックダウンが功を奏したようです。区ロックダウンは、例えば東京都の千代田区だけを封鎖します。千代田区の会社で働いているけど千葉在住のサラリーマンA君は会社から通行証を出してもらい検問をパスする羽目となります。大戦中のベルリンにあったユダヤ人地区の検問ほど厳しくはありませんが、それを毎日繰り返す訳です。国民の移動自由を法的に“禁足”にできない日本ではあまり効果を期待できません。でもヨーロッパ各国では破ると罰則になります(罰金は7万円から40万円、反抗して“あばれる”と刑務所です)。
渋々ながらも自分の地区に“引きこもり”ました。そこまでやってもスペイン各地の今の状況では来年もロックダウンは頻繁になりそうです。マドリードはまだ夜間外出禁止が続いて、週末は州のロックダウンです。クリスマス、正月はスペイン中がロックダウンになります。ロックダウンになると空港は閉鎖されるので海外へのフライトはできません。
イベリア航空の東京直行便はストップしたままなので、事前に運よく脱出できても乗り継ぎです。乗り継ぎのたびにコロナ検査かコロナ検査済の証明書が要ります。その目をくぐり抜けて日本に着いても2週間は監禁です。ワクチンもできたのでスペインも1月から投与が始まりますが、その接種は様子を見てからと国民の半分が尻込みをしています。日本は東京オリンピックがあるのでワクチン確保は素早いと思いますが、国民が接種を嫌がったら元も子もありません。こればかりは“正しい民主主義国家”では法的にも強制はできません。
このような状況なので、2021年秋の東京の個展は2022年に延期となりました。とうとう僕の個展はマドリードも東京も一年延期となってしまいました。結局、この一年間は何だったのでしょうか?やけ酒とコロナ禍で終わりました。まだ自分が感染しなかっただけでも幸い、とします。2021年がよい年になりますように切に願います。早いですが、年賀状を載せました。良いお年をお迎えください。