マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

オッサン、そんなことをしている場合かぁぁぁぁ!

2012-04-17 11:00:00 | スペイン日記

王様の象狩り

 気軽に呼んでしまった「オッサン」とはファン・カルロス・スペイン国王です。「そんなこと」とはアフリカでの象狩りです。全て4月8日(日曜日)の復活祭の夜から昨日15日(日曜日)の一週間の出来事でした。このブログで僕がスペインの納税者の一人として度々愚痴っているように、スペインは経済破綻寸前です。おまけにイランからは石油を止められ、アルゼンチンに持っている油田会社はアルゼンチン政府に国有化されそうで、もう真っ青です。ふんだり蹴ったりですが、国の借金減らしと500万人の失業者減らしために、庶民は増税に応じます。国王も、仕事の無い大勢の若者の将来を思うと夜も眠れないので、「国民よ、余も我慢いたす」でした。

 その国王がアフリカで象狩りです。それも、政府のトップ、ラホイ首相に明かさずにこっそりと。悪いことをしていた訳ではないが、ひっそりと城に篭って猫の頭でも撫でて居るのがスペインの現状を憂える一国の主の姿です。それでなくても、このブログの「庶民の怒りを3つ」で怒ったように、国王の次女の夫・ウルダンガリン(娘婿です)の公金横領、脱税の問題を抱えているのが王室です。ファン・カルロス国王はスキーとヨット競技と狩猟が大好きです。スキーでの怪我で体は骨折だらけ、ヨット競技も大型ヨットクラスなのでさすが体がきつくなったのか、74歳の国王はその二つをやめました。残ったのは、他のスペイン人同様狩りです。

 ヨーロッパ人は-国王から庶民まで-狩りが好きです。スペインも少し前まで徴兵制があったので銃の扱いは慣れています。未だにスペインではゴルフよりも狩りです。その狩り好きにはアフリカはヨダレの出るところだそうです。王室のスポークスマンは「この象狩りには国費を使って居ない」と言うので、大方、スペイン経団連の連中と行ったのでしょう。

 復活祭の日曜日の夜にメンバーの自家用ジェット機でマドリードからアフリカのボツアナ(Botsuana)へ飛びました。象狩りを楽しんで次の日曜日までにマドリードへ戻っていれば、何もバレません。マドリードからはアフリカ大陸を縦断するのですが、ボツアナは南アの手前なので10時間もかかりません。でも、間を悪くするいじわる魔女はどこにでもいるのです。王が居ない間に、長女の長男が猟銃で自分の足を誤って撃ってしまいました。まだ、13歳の子供に銃を与える父親(離婚済み)もバカです。ちなみに、スペインで猟銃を持てるのは14歳からです。

 病院へ母親やおばあちゃん(王妃)、皇太子一家が見舞いに現れるのに国王の姿が見えません。王様はどうした?でした。何しろ、その子は国王の初孫で、おじいちゃんが知ったら、大目玉を食らうと泣いていたのです。皇太子には女の子とは言え跡継ぎ出来たので、直の繼承からは外れますが可愛い孫の事故です。そのうちに現れるだろうと思っていたら、王自身が怪我をして病院へ担ぎ込まれたのです。天罰でしょうか?アフリカでバンガローの階段を踏み外して転んで、腰の骨を折ってしまいました。金曜日の夜中に急遽マドリードへ戻って、そのまま病院へ直行、すぐ手術でした。これで、すっかりバレバレで、ラホイ首相も国王がアフリカへ象狩りに行っていたのを知ったのです。追い打ちをかけるようにまずかったのは、手術が済んだ土曜日は第二共和制の81周年記念日でした。

 早速、王政廃止、共和制復活を訴える左翼が噛み付きました。国民が家計のやりくりで苦しい時に、アフリカで象狩りとはなに事だ!と。泣きっ面に蜂はそれだけではありません。王が手術中の週末は王妃もスペイン不在でした。ギリシャ王室から嫁いだソフィア王妃はギリシャ正教会の復活祭のために里帰りしていたのです。もう、しょうがないわね、とばかり、今朝アテネから戻ったその足で病院へ行きました。体もガタガタなのだから、もう隠居して44歳の皇太子に任せちゃえばいいのですよ、お爺ちゃん。よりにもよってこんな時に、ですが運の悪いことは重なるのが古今東西の教えのようです。それにしても日本の皇室は大人しいです。まぁ、オッサンと呼べるスペインの王室も庶民的で悪くありません。これはお国柄の違いですね。
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