日本で日本車を買うのは、水道の蛇口をひねれば水が出るようにごく当たり前です。出た水もすぐに飲めます。これがスペインで日本車を買うとなると、どうでしょうか?まぁ外車を買うことですが・・・。
その前に、なぜ、車を買い替えることになったのか?の話しです。今年、2020年の1月1日から僕の車はマドリードの都心地区に進入禁止になりました。それだけではなくマドリードの市内での路上駐車も禁止になり、強制的に有料パーキングに駐車となりました。車の購入に車庫証明を必要としないマドリードでは路上駐車が当たり前です。違反すると90ユーロ(1万円)の罰金です。
あは~ん、マドリードも排ガス規制が厳しくなったんだねぇー、と日本の友達は思うでしょう。ところがそうではありません。もちろん排ガス規制もありますが、僕が今使っている車は1999年に買ったからです。同じ車を2000年に買ったら、まだ市内に路上駐車ができます。一年違いで20世紀のクラシックカーとなりそれは21世紀にはふさわしくない、となりました。それだけのことです。ヨーロッパはどの国でも都市でも地球温暖化問題で騒いでいて、ガソリン車やディーゼル車減らしに奔走しています。
マドリードもそれに便乗しています。確かにマドリード市内の空気汚染はひどい日もあります。それでもひと昔の石炭を焚いてのマンション暖房が当たり前だった頃のスモッグ量から比べたら、それが天然ガスに代わった今のマドリードの空気はクリーンです。それに日本の2倍の広大な土地にたった4千7百万人の人口のスペインです。郊外に出れば青空が地平線まで続きます。目くじらを立てるほどではありません。
でも、お上の言うことには逆らえないので、車を買い替える羽目になりました。スペインの友達に聞いても、電気自動車は高いし、郊外に出たら電気チャージが心配だ、と言います。スペイン人的感覚で言いますが、彼らの一日のドライブ距離はマドリードからならリスボン着またはバルセロナ着なので、700㎞前後です。ガソリン車やディーゼル車なら満タンでマドリードを出発すれば目的地までノンストップで着きます。頑張って“朝早出”すれば美味しい夕飯が食べられる、はスペイン人にはドライブの“ご褒美”です。電気自動車の安いクラスだと数回のチャージが必要で、時間も食います。それでは夕飯はドライブインの“パサパサピザ”になります。
車にまつわる規制がこの先どのように変わるのかは誰にもわからないので、まぁ今、一番無難な車はハイブリッド車だろう、となりました。そしてハイブリッド車なら日本のトヨタだろう、とスペイン人達は言います。で、さっそく、1月半ばに最寄りのトヨタのディ-ラーへ行きました。日本ではあっちこっちにあるのがトヨタのディーラーですが、マドリードでは両手の指の数もありません。が、家から歩いて行ける距離に一店ありました。定期整備で通うことを考えると歩いて行ける範囲がいいです。予約もせずに入った販売店ですが暇そうで、スペイン人セールスマンがすぐに応対してくれました。
そのアントニオさんと話していると、日本語で「ボクはセービ(整備)のサービスを担当しているグスタボです」とメカニックのグスタボさんが握手を求めてきました。「日本の埼玉に3年間居ました」と話すグスタボさんはそのトヨタのディーラーで働くヴェネズエラ人の主任メカニックです。
整備にも問題はなさそうなので、その場で小型車のカローラ(スペインではコローラと呼びます)を買いました。スペインで販売しているカローラはハイブリッド車のみです。現金払いで24.000ユーロ(3百万円)ですが、月賦払いにしたので29.000ユーロ(3百60万円)になりました。納車は3か月先の4月中旬です。さほど人気のある車ではないのに納期がずいぶん先なのは、トヨタはカローラをイギリスで造っているので、ブレグジットの影響かもしれません。
今使っている車をトヨタは下取りをしてくれないので、まぁ、新車が納車されるまで待ってね、と中古車屋に査定をしてもらいました。500ユーロ(6万円)で引き取ってくれます。今使っている車は三菱なので三菱車に買い替えるなら、もう少し高く引き取ってもらえるでしょう。でも、この20年間定期整備などで三菱の整備工場に通いましたが、遠すぎました。何しろマドリード市内には三軒しかありません。
ヨーロッパ車のルノーやプジョー、フォルクスワーゲンやセアットはスペインにも製造工場があるので、それらの納車だったら10日もかかりません。修理工場もあっちこっちにあるので安心ですが、ハイブリッド車は少ないです。納車までの間はマドリード市内へはメトロかバスで行き、酔ったらウーバー(Uber)を使います。郊外を走っている分には今の車でノープロブレムです。
心配なのはハイブリッド車にはオートマ車しかありません。運転免許を取ってからマニュアル車しか運転がしたことがない僕に、クリスマス宝くじを一緒に買ったホセ・マヌエルさんが「一日で慣れるよ」と言います。彼の車はレクサスのハイブリッド車です。カローラを僕に売ったセールスマンのアントニオさんも納車まで時間があるので、いつでも、何回でも試乗に来てください、と勧めてくれますが、面倒なのでまだ行っていません。納車されたらそれに慣れるしか選択の余地はありません。
若いころは車の買い替えにはわくわくしたものですが、歳になると使い慣れた古い車の安心感が勝り、新しい車に乗り換えるのが億劫になります。それに、魅力ある性能の車に乗り換えるのではなく規制に合った車選びとなってしまった21世紀に、ドライブの醍醐味は20世紀の昔話となりました。あの「ルート66の時代」が懐かしい。つまらない時代になりました。そうそう、ホセ・マヌエルと買った宝くじははずれました。がっかり。