マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

スペインの団塊世代 2

2023-02-28 17:30:00 | スペイン日記

咲き始めたアーモンド

 

 暖冬のマドリードは1月に近所の公園のアーモンドの木に蕾をつけました。2月に入り蕾に色が付き始めただけなのに先週の春陽気で開花してしまいました。でも今週になり本格的な冬になったので、アーモンドの花は開いたまま震えています。天気も不安定ならスペインの社会も不安定です。

 

 さて前回のブログに書いたように1957年から1977年の間に生まれたスペイン人を「スペインの団塊世代」と呼びます。その21年間の平均出産者数は665,854人/年でした。それは1400万人のベビーブーマーを生みました。昔は酪農と農業が主な産業でしたのでスペイン社会は大家族でした。しかし人口の大都市集中は始まっており、都会で生まれ育った若い夫婦のメンタリティーでは子供は一人か二人です。少子化が都会生活の条件になった結果が1977年のベビーブームの終焉でした。嘘のようにこの年を境にガクッと出産数が減り始めました。さらに女性の目覚ましい社会進出(大都市の家庭は共働きが普通です)は女性の出産年齢を遅らせたので新生児数は減少を続けました。

 

 スペイン女性一人の出産数は1,19人と45年前の半数で、今の出産数は34%減の437,173人/年です。その程度の減少ですんでいるのは同じスペイン語圏の中南米人の移民者のお陰もありますが、隣のモロッコ人移民者も多数です。外国移民者の赤ちゃんはスペインの新生児の32,4%です。言い換えれば三人に一人は外国人の子供です。このような現状では移民者の三世世代(国籍はスペイン人です)が次の時代の人口増加の担い手になると言う訳です(顕著なのはイスラム人の移民三世)。

 

 島国日本では考えられない人口構成と多様化文化の話になりそうなので、本題のスペイン団塊世代の人々が2023年から年金受給者(ペンシオニスタ/pensionista)になる話を始めます。今年65歳(毎年少しずつ上がり2027年は67歳です)になって379か月間社会保険料を払っていた人は満額の年金を受け取れます。66歳と4か月の人もその社会保険料支払い年月に満たなくても希望すれば受け取りを始められます。反対にまだ65歳になってないが379か月間の社会保険料支払い義務を済ませた人も受け取りを始められます。

 

 それでなくても労働は罪と思っている早期退職者が多いのもスペイン人です。つまり今年から年金者数がどんどん増え続けます。スペインの年金は日本で言う国民年金だけです。今年の年金支給額の上限は月3,058ユーロ(1ユーロ130円で換算すると約40万円)、下は732ユーロ(約9万5000円)です。平均は1,365ユーロ(ほぼ18万円)です。年間14回支給されます(夏ボーナスとクリスマスボーナスの2回がプラスされます)。最低賃金が1000ユーロ(13万円)なので、持ち家に住んでいる老夫婦ならその平均額で生活には困りません。

 

 多くの年金者が1000ユーロ以下です。反対に3000ユーロの裕福年金者は4546万人居ます。年金者は年に数回格安旅行がありますが、去年からエネルギー代(ガス代電気代)が2倍から3倍に値上がったのでそれどころではありません。最低必要食料品(ジャガイモ、卵、オイル、小麦粉など)が少なくとも50%、いや倍になったもの(パンのバゲット)もあります(ワインも、トホホ)。

 

 おっと話はこの先も大丈夫か?年金?でした。2011年から収入の社会保険料と支出の年金のバランスはマイナスです。でも政府補助金のお陰で社会保険準備預金庫には2021年までは僅かながらも貯蓄はありました。が今は完全にマイナスです。欧州中央銀行に借金をするしかありませんが借りるにはそれなりの年金システムの改善が要求されます。去年までは4人の勤労者が2人の年金者を支えていましたがこれからそれが3人になります。年金でも生活ができるように社会インフラを充実させ物価を安定させないと若い世代の労働者たちは外国へ出てしまいます。

 

 自分たちの親ほどの年金を望むのはスペインでは無理、と現実をクールに受け止めた彼ら/彼女らはすでに給料の良い外国に出てしまいました。欧州連合内の国なら支払った社会保険は定年退職してスペインへ戻った時点で年金として受け取れます。ノープロブレムです。益々スペイン人は減少して移民三世四世が増えていきます。グローバル化は良いと思いますがその国の歴史、文化は残ってほしいと思います。

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スペインの団塊世代

2023-02-09 12:00:00 | スペイン日記

スペインの老人たちと若者たち1

 新年を迎えてからのひと月は瞬く間に過ぎました。進まない制作に気が焦って一日が短く感じます。マドリードは暖冬ですが、この2週間の明け方はマイナス6度まで下がりました。寒がりの僕は起きるのが遅くなり、9時前後になってしまいました。日の出は8時過ぎです(1月の話です)。外がまだ暗いと起きる気になりません。通学通勤の子供たちや大人たちは暗いうちに起きていますが、僕のような絵描きは寝床からアトリエまで階段を下がるだけなので暖かい布団から抜け出るのが億劫になります。怠惰です。

 

 だから罰が下ったのかも知れません。家の工事で制作時間をさらに削られる事態になりました。去年のクリスマスから年末にかけての出来事です。バスタブが壊れ暖炉が壊れました。初めはバスタブで、漏れた水が玄関前を水浸しにしました。なぜか、スペインの住宅は2階に浴室があるので、玄関前の天井の上(二階からみたら床です)にバスタブがあります。とりあえず保険会社に連絡をして被害の査定を依頼しました。査定員曰く、バスタブの「自然の」老朽化なので保険の適用外でした。保険会社は自社に登録している作業員を派遣しますか(有料です)? と聞きますが、保険適用外だと頭に来ていた僕は断りました。

 

 バスタブ交換は度々来てもらっている水道工事(ホンタネロ/fontanero)の人に頼みました。が年末は無理と言うので1月となりました。その間風呂は使えませんが、幸い我が家はもう一つ浴室があるのでたすかりました。その後は師走の慌ただしさと何も良いことのなかった2022年が早く過ぎ去って欲しいのでクリスマスパーティーを友達と我が家で祝いました(スペインのクリスマスは12月24日から1月6日です)。恒例のパーティーなので暖炉を焚きました。家の暖房は天然ガスボイラーのセントラルヒーティングなので、冬でも暖炉はほとんど使いません。

 

 クリスマスなので焚きましたが薪を焚き過ぎたようです。暖炉の内壁に溜まっていた煤が燃えました。暖炉は屋根に抜けるレンガ造りの煙突がありますが、二階のそれにひびが入りました。そこから煙が出て、屋根の煙突からは火粉が吹き出ました。慌てて消防車を呼びました。クリスマスなのに仕事をしている彼らには申し訳ありませんが、来てくれました。幸い消防士が我が家に着いた頃には火は収まって火事にはなりませんでした。何事もなかったので、メリークリスマスと言いながら彼らは引き上げました。

 

 翌日保険会社に連絡しましたが、この暖炉のひび割れも保険の適応外でした。仕方がないのでバスタブ交換を頼んだ水道工事人に相談をしました。バスタブ交換はタイルやレンガも壊すので左官工事人(アルバニル/albanil)も必要です。大工事の時は彼と一緒に仕事をする左官屋が居ます。事情を話したら暖炉のひびも直せるので頼みました。全く最後の最後まで不運が続いた2022年でした。

 

 新年2023を迎えた1月中頃から工事が始まりました。レンガ造りの家なので、何の工事をするのもレンガ壊しから始まります。騒音と埃は凄いです。もちろん制作はストップでした。鉄でできた40年近くたったバスタブには錆で穴ができていました。水圧で一気に穴が広がったようです。同サイズのバスタブに取り換えるのは半日で済みますが、設置してレンガを積みその上にタイルを貼って乾かすので、丸二日かかりました。

 

 暖炉は煙突の中間部分にひびが入ったので古いレンガを壊して新しいレンガを積みました。ついでに部屋の天井も直してもらいました。レンガ造りの煙突を壊しましたが煤の塊はさほどなく、燃えたのは鳥の巣だったようです。くだらない話ですが、この煤をスペイン語で「オジン/hollin」と言います。隣人たちや友達と暖炉の工事に話になると、それは「オジンが溜まっていたのね」とか「数年に一回はオジンの掃除は必要だよ」とオジン、オジンの言葉が耳障りに残りました。年老いて煤みたいになった自分を呼ばれている気がしました。被害妄想ですね。ほぼ1週間の工事だったので、その間は早起きをしました。作業員が出入りしていたので、家のフローリングは白い足跡だらけでした。日本の家屋は木とモルタルなので工事は比較的速いと思いますが、レンガ造り、それも古い家は時間と費用がかかります。

 

 おっと、前置きが長くなってしまいました。タイトルは「スペインの団塊世代」の話でした。去年の12月から書き始めていたのですが、寒さと工事と体調不良で2月になってしまいました。スペインの団塊世代とは1957年から1977年の間に生まれたスペイン人で、そのベビーブーマーの数は1400万人です。スペインの人口が4700万人なのでいかに多いかが分かって頂けると思います。今年、2023年はそのスペインの団塊の世代が定年退職に入るので彼ら/彼女らの年金支払いは大丈夫なのか? の話なのです。息切れがしてきたのでその話は次回にまわさせて頂きます。今月中に再度ブログをアップします。よろしくお願いします。

スペインの老人たちと若者たち2

コメント (1)
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