マドリーの恋人

ヤマダトミオ。 画家。 在スペイン52年。

トレド

2024-02-13 21:00:00 | スペイン日記

いつもの街並みのトレド

 コロナ禍の前は年に数回は訪れていたのが古都トレドです。マドリードから近いので日本から遊びに来た友人たちを良く連れて行きました。コロナ禍以降は全く行かなかったので、今回は4年ぶりに訪れました。当たり前のことですが街並みはそのままなので路地もそのままでした。そこを歩いていたらいつものトレドを思い出しました。バルやお土産屋も以前からの姿をしていました。それがマドリードの中心地のバルとの違いです。マドリードの店は外観や名前は同じでも中に入るとすっかり改装され(トイレが清潔になったのには賛成です)、働いているウエイターやウエイトレスも東欧人やアフリカ黒人に変わっています。

 

 多分オーナーは同じでも営業は飲食業のチェーン店会社に譲ったのでしょう。値段はコロナ禍前と比べると2倍に上がりました。仕入れの値上がりよりも人件費の値上がりでしょう。ツーリスト相手の商売なら来る客も一度だけなので働くスタッフが変わってもノープロブレムです。赤ワインを片手にバルのおやじとの昔話が楽しみで行く年寄りにはマドリードの飲み屋街は寂しいものになってしまいました。マドリードから1時間とは言えトレドの昔からのバルに毎晩通うのは僕には敵いません。

一人が歩くのがやっとの路地

 でも毎晩通いたくなる居酒屋(Taberna/タベルナ)がありました。トレドに住む友人が教えてくれました。そこで食べた“豚の耳の鉄板焼き”は今まで自分が食べていたマドリードの“豚の耳”はいったい何だったのだ!と思い知らされました。香ばしく、柔らかく、ゼラチンは甘かったです。耳は細かく切り刻まれていました。マドリードで僕が贔屓にしていたバルの一つはこの豚の耳の専門店でした。おやじが変わってから足が遠のきましたが、そのおやじの数倍の旨さでした。

肩が触れ合うピソ

 こうなるとトレドに住むのが良いのですが、如何せん住居が古すぎます。住居をピソ(piso)と呼びますが、いつ崩れてもおかしくないようなピソが肩を触れ合うように建ち並びます。絵になる景色ですが水道管や下水管のことを考えると僕は毎晩眠れなくなりそうです。1500年前からスペイン中央部カスティージャ・ラマンチャの州都でキリスト教、イスラム教、ユダヤ教が共存共栄したまれなる都なのです。ピソは比較的新しくても100年前の建物です。

時が止まったようなバル

 敷地は中世のままなのか、道路は狭く迷路のようです。その迷路がトレドを救いました。城壁内に攻め込んだ敵兵たちは自分たちが何処に居るのかを見失いました。立ち往生しているところを上から弓矢で皆殺しにしました。とは言えそれは大昔の話で、タホ河に囲まれた丘の上を城壁で囲った都造りなので、如何せん坂が多い。その城壁の外には21世紀のピソが建ち並びますが、そこから旧市街の飲み屋へはその城壁をくぐって入らなければなりません。待っているのは坂で、それを毎晩上るのはきついです。酔っぱらった老人には帰りの坂は転げ落ちそうになりそうです。それでもいつまでも今のままで居て欲しいのがトレドの旧市街です。

最高に美味かった豚の耳の鉄板焼き

 さて、昨年日本へ帰る前に書いたブログから3か月も過ぎてしまいました。マドリードへ戻った12月は旅の片付けやクリスマス行事に追われて、あっという間に新年を迎えました。1月は疲れが出たのか風邪で寝込み、気温の異常な上下で血圧も上下してこれまた寝込みました。この2月も変な天気でカーニバルが始まる前にアーモンドは咲き始めました。スペインの政治も天候のように異常で、この先どのようになるのかが分かりません。民族党と手を組んで組閣をしたサンチェス内閣(与党・PSOE/スペイン社会主義労働者党)は不安定です。

中世の騎士が似合う街トレド

 ドイツから始まり全ヨーロッパに汚染中の農民の“トラクター抗議”はスペインでも始まりました。スペイン農民は農業の不満よりもスペイン国民の誰でもが持っている今の政治、生活への持って行き場のない不満が爆発した感じです。農作業はきついですが、考えてみれば農業は単純です。例えば麦は畑に種を蒔き雨で成長させトラクターで刈り取ります。ところがスペインは昨年から大干ばつです。お天気は政府のせいではないとしても河水の分割は政治です。おまけに肥料代からトラクターのディーゼル代も大幅に値上がりました。

この門をくぐって飲み屋へ

 物価の値上がりのスピードから取り残された野菜の値段に農民は何もできませんでした。買い手市場なのと物流の値上がりが原因です。そんな農民にはなんでもいいから捌け口が必要だったのです。これが農民だけの抗議で終わらず、全労働者に汚染してゼネストにつながらないことを祈るのみです。不安定な政治を続けるよりはさっさと内閣を解散して総選挙をすればよいのですが、首相の座にしがみつくのが命のサンチェス氏は居座るでしょう。2月18日のガリシア州議会選挙の結果が「引導を渡す」になって欲しいと誰もが願っています。予測では野党・国民党(PP)が圧勝です。

コメント (1)
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