変化を受け入れることと経緯を大切にすること。バランスとアンバランスの境界線。仕事と趣味と社会と個人。
あいつとおいらはジョージとレニー




新宿東口改札前。
クリスマスイブの午前11時、多くの待ち合わせ客と同様に、
彼は彼女の到着を待っていた。
彼女が現れると、彼はすぐにその手をとって歩き始めた。事前に計画した
この日の計画が走り出したのだ。

まず最初に、老舗洋食屋で軽めのランチだ。
それから、デパートに行って互いのプレゼントを買う。予め欲しいものは
聞いてあるし言ってある。一旦別れて、それぞれが相手に贈る品物を
買いに行く。持ち時間は3時間。
彼はアメリカブランドの指輪を買った。それだけではなく、イタリアブランド
のバックもあげよう。
ちょっと陽が陰りだした昼下がりに再び待ち合わせて、お茶を飲む。
ここではプレゼントの話は敢えてしないで、今夜にとっておこう。
それからは、今晩泊まるホテルに向かう。ゆっくり歩いて行くんだ。
老舗の高層ホテル、43階に部屋をとってある。

窓からは幸せ色に染まった街並みが見え、徐々に灯りがともされていく。
ロマンチックな風景に酔う彼女はあまりに魅力的で、彼は思わず後ろから
抱きついた。夕食までの短い時間の間に、夕日の中で愛を確かめ合った
二人は、火照った体をレストラン用の洋服に押し込め、部屋を出た。

最上階のレストランで席に着いた時には、既に夜景が美しく輝いていた。
他愛のはい話で盛り上がり、お決まりのワインを空け、専任のシェフが
目の前で調理していく料理を次々に咀嚼した。
彼女といれば、何もかもが旨かった。楽しかった。
ソファ席に移って、デザートとコーヒーを堪能した恋人達は、見る者までを
幸せにするかのような笑顔を振りまきながら、部屋へと引き上げていった。

部屋にはシャンペンが用意してある。改めて乾杯して、いよいよプレゼント
交換をはじめる。なぜこれを選んだのか、これに決めるまでにどんな迷いが
あったのか、これがどれだけ素晴らしいものなのか、互いに品物を餌にした
話を続けた。
そして、恋人達の為の長い夜、ぞんぶんに心身のふれあいを楽しんだ。

ありきたりだが、まぎれももなく、二人は恋人であった。

<続く>

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