空飛ぶ自由人・2

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映画『碁盤斬り』

2024年06月04日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

古典落語の人情噺「柳田格之進」を元にした時代劇。

浪人・柳田格之進は身に覚えのない罪をきせられて
故郷の彦根藩を追われ、娘のお絹とふたり、
江戸の貧乏長屋で暮らしていた。


印鑑彫などで糊口をしのいでいたが、
唯一の楽しみは囲碁
実直な格之進は、囲碁にもその人柄が表れ、
それに惚れ込んだ両替商・萬屋源兵衛とも深い親交をしていた。


しかし、月見の晩、源兵衛の家に招かれた格之進は、
五十両の金を盗んだ嫌疑をかけられてしまう。
身の潔白を証明するために切腹しようとするが、
娘のお絹にいさめられ、
お絹が吉原に身を沈める代わりに、
五十両金を用立て、姿をくらます。

この本来の落語「柳田格之進」の話に、
格之進が彦根藩を追われたいきさつ、
冤罪を作った人物への復讐の話がからむ。
旧知の藩士により、彦根藩での冤罪、
格之進の妻を凌辱し、入水自死する原因を作ったという真相を知った格之進は、
妻への仇討ちとして、その男を探す。
男の足取りを捕えた格之進は、
ついに、対決するが、
その方法は、囲碁での勝負というものだった・・・

実は、私は落語「柳田格之進」は、
「中村仲蔵」の次に好きな落語の演目。
へんな改変をしていないかと心配したが、
源兵衛との交流など、
大変ていねいに作られていて、安心した。
脚色は加藤正人で、
「碁盤斬り 柳田格之進異聞」という小説にもしている。


この本、図書館で探したが、蔵書になかった。

監督は白石和彌だから、人間描写も的確。
格之進を演ずるのは、草彅剛
娘お絹を清原果耶、源兵衛を國村隼、
身請けする女郎屋の女将に小泉今日子という顔ぶれ。


この女将の部分には、「文七元結」も顔を出す。
中でも出色なのは、草彅剛で、
穏やかで実直で善良なる部分と、
阿修羅のごとき怒りと復讐の炎がほとばしる部分の両方を
うまく演じた。
江戸時代のある武士の典型を演じており、
物語の骨幹をささえる。
いつの間にか、こういう役をやれる俳優に成長していたんだね。

私は将棋も囲碁もやらない。
囲碁のルールを知らなくても鑑賞のさまたげにはならないが、
源兵衛の下で働く弥吉が囲碁を教わるエピソードがあるのだから、
囲碁の基本ルールを触れておけば、
それ以降の碁盤上での勝負に対する興味が増したのではないか。

柳田のために追われた家臣たちに
探幽の絵を売ってできた金を配る、という話が最後に出て来るが、
少々不明瞭。

時代劇は、武士としての矜持を通じて、
人間の高潔な精神を描くことが出来るから、好きだ。
この一篇も、そのようなものを描いて、胸を撃つ。

5段階評価の「4. 5」

拡大上映中。